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今回の感染症への政府対応について②
⭐合理的に利用してこその税金
4月7日、感染症の拡大に伴う緊急事態宣言が出されました。しかしながら、宣言の対象となった地域にむけて、西村経済再生担当相が「休業要請2週間程度の見送りを打診」(4月8日共同)しており、政府の対応は非常に曖昧なものとなっています。
アメリカもヨーロッパ各国も、公のイベントの禁止から自主隔離、社会距離戦略、学校閉鎖、完全なロックダウンという強硬な措置をいくつも講じたうえで、なおピークアウトが見えてこないという国がほとんどです。2週間後にピークアウトさせられるというのは、直面する脅威をあまりに過小評価した願望のように思えてなりません。状況は深刻です。
報道で日々刻々と増えていく感染者数は、「検査して陽性だとわかった」数なので「陽性者数」というのが正確です。実際は感染しても長い潜伏期間があり、発症してから検査が実施されるまでの時間があり、結果が統計に反映されるまでの時間がまたあります。このため、感染の状況がデータにあらわれてくるまでには2週間ほどかかるとみられています。緊急事態宣言の効果がデータにあらわれるのにもそれくらいかかるわけで、そのあいだ、状況は悪化の一途をたどってしまうでしょう。
ですから、対応をとるのに様子見をしている猶予はないはずです。自粛と言い続けて何とかなる状況でもありません。人の流れを止め、人と人の距離を保ち、感染拡大を阻止するためにこそ、休業要請を行い、それにともなう補償をするべきではないでしょうか。
そういった措置をしなければ、感染は拡大し、経済は長期にわたって打撃を受けるでしょう。このような時に、合理的に利用してこその税金だし、それができてこその政治ではないでしょうか。
⭐指数関数的な感染の拡大
今、日本では指数関数的な感染の拡大が起きています。
専門家会議の押谷氏が4月4日に発信したメッセージの中に「感染者の急増が一定の段階を超えると、感染者が指数関数的に増えていくというのがこのウイルスの特徴です。そうなると都市封鎖をして自宅待機を徹底するしか感染拡大を止めるすべはなくなります。しかし、日本の状況はそのような状況ではありません」(出典下記)という文がありますが、現在の日本は、少なくとも厚労省が発表したデータにもとづいて議論するならば、指数関数的な感染拡大の中にあるというほかにありません。
押谷による『皆様に伝えたいメッセージ』です。
— 新型コロナクラスター対策専門家 (@ClusterJapan) April 4, 2020
長文ですが、たくさんの方々に読んでいただけたらと思います。 pic.twitter.com/s0jASV6Jrb
下のグラフはミュンヘン大学のAndreas Burkert教授が作成したダブリングタイムの推移です。ダブリングタイムは感染者が2倍になるのに要する時間(日数)で、少ないほど感染の拡大が急速であることを意味します。欧米各国でダブリングタイムが伸びている(グラフが右上がり)のは良い傾向です。しかし日本では4月1日以降、ダブリングタイムが8日から7日へと緩やかに降下しており、指数関数的な感染拡大が維持ないし悪化していることが読み取れます。
#COVID19 doubling times with Brazil+India. Very promising for many countries. Congrats to ITA, AU, ES, NL! Israel crosses World line into better than average regime. Japan crosses World line into low DT regime (worse than av.). India/Russia low DTs. US/Canada equal and rising. pic.twitter.com/sy2heMgNeD
— Andreas Burkert (@burkert_andreas) April 8, 2020
日本の場合、アメリカやイタリア、スペインなどに比べれば、確かにまだ確定した患者の数は少ないかもしれません。しかし指数関数の特徴はその変化が劇的であることです。
指数関数は、学校の教科書などに左のようなグラフとして掲載されているので誤解されがちなのですが、より長い範囲で見ると右の図のようになっています(左右は同一の関数y=2^xです)。科学で「指数関数的」と言う時のイメージは右の図の方なのです。
感染拡大が指数関数的に起こっている現状では、わずかな遅れが取り返しのつかないことを結果します。ですから政府は一刻も早く休業要請などの対応をとり、それに伴う補償を行う必要があるはずです。
⭐検査能力の増強が急務
厚労省のデータは今なお不備がある状況です。感染の拡大状況、重症者数の推移、それに対するベッドの数、人工呼吸器や人工心肺の数などを、地域的(どこにどれだけあるのか)かつ時間的(どのように増やすか)な面でとらえることが今後不可欠になるでしょうから、厚労省の対応能力の増強が必要です。
PCR検査については、拡大の方針がとられつつあります。データで見ても、検査数は増加の傾向です。現在、陽性者が急増し、4月9日時点では累計5000人を越えましたが、これは検査が拡大された結果でもあります(言うまでもないことですが、検査の実施の有無にかかわらず、感染者はいて、感染は拡大しています。検査によってデータにあらわれるということです)。
しかし検査が拡大されつつあるといっても、なお必要とされる数に追いついているとは言いがたい状況です。
上の図は、 新型コロナ 県別・時系列グラフから東京都を引用したものですが、週間陽性率(実線)の上昇が読み取れます。
陽性率、つまり検査して陽性となった割合が大きく上昇しているということからは、検査のキャパシティの拡大よりも患者の増加が急速で、感染が疑わしい者をより厳しく選別しなければならなくなっていることが示唆されます。これは非常に重要な指標です。
検査の拡大が患者の増加に追いついていないということは問題で、安倍首相も「PCR検査の1日の実施数を現在の倍の2万件に増やす」(4月7日日経)、「ドライブスルーも含めて検討していきたい」(4月7日時事)と、積極的な検査に言及するようになっています。
これは当然行うべきことです。しかしあまりに遅れすぎていると言わざるを得ません。今から検査を拡大するといっても、一か月前に拡大するのと比べて困難ははるかに大きくなっているからです。まず検査すべき人の数が何倍にも何十倍にも増えています。それに対応すべく、検査キットも担い手も何倍、何十倍と増やさなければいけません。それだけでなく、今は世界の感染者が150万人を超え(4月9日)、世界中が検査キットを求めている中で、果たして日本が手に入れられるのか、手に入らなかったら国内でまかなうのかという問題もおこるでしょう。
⭐産業のバランスを
今回の感染症は社会に対するインパクトが大きく、早期の収束も見込めない状況です。長期化する場合は、それに応じて産業の構造やバランスを変えるということが必要になるでしょう。
感染症の被害は世界各国に及ぶものなので、長期化すれば食料の供給が危うくなる心配もあります。農業など一次産業の再建を念頭に置く必要があるかもしれません。また、二次産業も医療や必需品に重点を置くようにシフトしていく必要があります。
三次産業も市民の生活に必要不可欠なものを残し、そうでないものを感染が止まる水準になるまで一つ一つ畳んでいく。畳んだものを補償する。そして感染症が収まった後に、再開する。再開するためにこそきちんと補償して支えていく。そういった対応が求められるのではないでしょうか。
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🔹 今回の感染症への政府対応について①
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