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G7各国の支持率を出せるようにしました

 世論の動向などに掲載している支持率の平均のグラフを、アメリカ、イギリス、カナダ、イタリア、ドイツ、フランスについても出せるようにしました。今回はそれを簡単にレポートします。

 外国の世論調査では次の選挙における投票先を聞くのが一般的で、日本で言われる政党支持率とは少し意味合いが異なります。しかしロイターやブルームバーグなどをはじめ、NHKなど日本のマスコミもそれを単に支持率と呼ぶことが多いため、ここでもあえて区別をせずに支持率と書きました。本当は投票意向とでもいうのが正確です。


アメリカ

 アメリカ大統領選の全米における2候補の支持率です。もっとも大統領選は州ごとの結果をうけて決まるため、これがそのまま選挙の優劣に対応するわけではありません。一つ一つの州でぎりぎり勝利した方が当選への効率は良くなりますが、最大の人口を抱えるカリフォルニア州にバイデン氏の支持者が多い事情などにより、全米での支持率が拮抗する場合でも、選挙情勢ではわずかにトランプ氏がリードします。現時点の勝率はトランプ氏が55~60%、バイデン氏が40~45%程度と考えられますが、11月5日の投票はまだ先なので、今後6月27日に行われる最初のテレビ討論会、7月15~18日の共和党大会、8月19~22日の民主党大会などを経て、情勢には変化する余地がありそうです。


イギリス

 イギリスは右派の保守党(Con)と中道左派の労働党(Lab)が長きにわたって二大政党を構成してきました。しかし近年はイギリス独立党にルーツを持つ右派のリフォームUK(Reform)に保守層の流出がおきています。ここでイギリスは完全小選挙区制のため、地域的な基盤を持たないリフォームUKは議席の獲得が困難です。このことは労働党に対して有利に働くため、来月4日の総選挙では、労働党が過半数を得て政権交代となることが有力です。


カナダ

 カナダは、中道左派のカナダ自由党(LPC)と、中道右派のカナダ保守党(CPC)が二大政党をなしています。カナダ自由党は現在のトルドー首相が代表を務める与党ですが、2023年の半ばから保守党にリードを許す状況となっています。3番手につけている新民主党(NDP)は、自由党よりも相対的に左派寄りの政党です。ケベック連合(BQ)はカナダ全体での支持率は低いものの、支持が局在化しているため、小選挙区制の総選挙ではそれなりに当選者を出しています。


イタリア

 イタリアでは、2022年の総選挙で躍進した極右のイタリアの同胞(FdI)が、極右~右派の同盟(Lega)、中道右派のフォルツァ・イタリア(FI)などと政権を担当しています。今年になってイタリアの同胞は支持率を落とし、中道左派の民主党(PD)が伸びているものの、両党にはいまだ差があります。左派の五つ星運動(M5S)が3番手で続く状況です。


ドイツ

 ドイツでは、中道左派の社会民主党(SPD)と緑の党(Grüne)、中道右派の自由民主党(FDP)が与党となっていますが、支持率は総じて前回の総選挙より後退しています。中道右派のキリスト教民主・社会同盟(Union)が安定して1位につけているほか、2023年には極右のドイツのための選択肢(AfD)が伸びました。ただし今年1月からは極右に対するカウンターがあり、ドイツのための選択肢はやや支持率を下げています。また今年1月には左翼党(Linke)から、左派のザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)の分裂が起きています。


フランス

 フランスでは6月17日に国民議会選挙の選挙戦が始まりました。これは小選挙区二回投票制で、まず6月30日の第一回投票で過半数を得た者が当選となり、過半数を得た者がいない場合は7月7日に上位2候補の決選投票が行われます。この選挙制度では、第一回投票で候補者が乱立した場合でも決選投票で一騎打ちの構図が作られるため、各党の支持者が協力することで極右の進出を抑制してきました。しかしながら現在の極右の国民連合(RN)の勢いは強く、歴史的にはじめてこの抑制が破れる可能性が高くなっています。支持率で続くのは、50以上の政党からなる左派の新人民戦線(NFP)です。マクロン氏らの与党連合(ENS)は三番手に沈んでいます。


日本

 日本では右派~極右からなる自由民主党(LDP)が長く与党の座にあります。しかし2023年の半ばから支持率の低下が顕著となっており、両院で野党第一党を占める中道~中道左派の立憲民主党(CDP)が伸びています。自民党と立憲民主党の支持率にはいまだ差があるため、支持政党を持たない無党派層(Independent)の動向が次期衆院選の鍵となっています。


 各社の世論調査の偏りを補正したり平均をとることは、もともと外国の選挙で通用することを日本でも通用する根拠としているので、裏ではこうした各国の計算も行って妥当性を確認しています。今回はそれをきちんとグラフで書き出せるようにしました。こうしてみると、ドイツやイタリアの調査の密度が高いことに改めて驚きます。対してフランスはほとんど選挙の時にしか実施していません。日本の密度は高いとはいえませんが、政党支持率と比例投票先の質問が別々に行われているので、やり方を工夫すればより良いトレンドを知ることができるように思います。

2024.06.20 三春充希