政府対応の評価が急落、臨時国会「早期に開くべき」8割 最新世論調査
政府対応の評価
8月1~2日に実施されたJNNの世論調査が発表されました。新型コロナウイルスへの政府対応の評価に大きな動きが見られます。
新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大しています。あなたは、感染防止に向けた政府のこれまでの対応を評価しますか? 評価しませんか?(JNN 8月1~2日)
評価する 26%(20ポイント減)
評価しない 61%(17ポイント増)
JNNの世論調査でこれほど「評価する」が低くなったのは初めてです。また「評価しない」もこれまでで最高となりました。
これは各社の世論調査を平均した結果でも同様です。つまり今、新型コロナへの政府対応は、これまでで最も酷いものとみなされつつあります。
感染が拡大するなかでGo To トラベルの前倒しを強行したことも、いまだにPCR検査をすみやかに受けられない人が続出していることも、自治体が独自の緊急事態宣言を出すような状況で首相が定例会見を行っていないことも、他の先進国では考えられないような対応です。
7月30日には、東京都医師会の会長が「今すぐに国会を召集し、法改正をお願いしたい。いまが感染拡大を抑える最後のチャンスだ」と会見で訴えかけました。それにもかかわらず与党側は「いますぐ審議する法案がない」として応じない構えを見せています。
憲法53条には「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と書かれており、2020年6月10日の判決でも、召集は「単なる政治的義務にとどまるものではなく、法的義務である」との判断が示されています。
また、今回のJNN世論調査でも、80%が臨時国会の早期召集を求めていることが明らかになっています。
あなたは、新型コロナウイルスの感染拡大への対応などを話し合うために臨時国会を早期に開くべきだと思いますか? その必要はないと思いますか?
早期に開くべき 80%
早期に開く必要はない 14%
新型コロナの感染拡大を前にして、するべき対応をほとんど何もしない、求められることを行わない、審議すらしないという姿勢を続けるのであれば、政府対応の評価は厳しいものとなっていくでしょう。
⭐内閣支持率
こうした状況下にあって、内閣支持率も低迷が続いています。目下、最大の争点である新型コロナ対応が評価されていない以上、これは頷けます。
これまで見られなかったような推移になりつつあるので、一度、第二次安倍内閣が発足してからの推移を見てみましょう。
また、下の「青木率」も参考になります。青木率は内閣支持率と与党第一党の支持率の合計で、政権の安定度の指標とされています。(なぜ合計するのか不思議に思われる方もいるかもしれませんが、これは半分にしてみれば、内閣支持率と内閣の中心を担う与党第一党の支持率の平均にあたります)
これまで内閣支持率や青木率が特に低くなったのは、世論の反対が強い法案を採決した時と、大きなスキャンダルが発覚した時でした。しかし法案の採決やスキャンダルで高まった批判は長続きせず、安倍内閣はどの時も一か月程度で支持率を回復へ反転させています。
例えば2015年に安保法で支持率が落ちた際、安倍首相は内閣改造を行い、GDP600兆円をかかげて経済政策を前面に押し出していきました。2017年に森友・加計で落ちた後も、外交に焦点を移したり北朝鮮のミサイルの脅威を問題としました。
安倍内閣はこのように、支持率を低下させた原因から関心をずらすことに一応の成功をしてきました。しかし現在は新型コロナの感染拡大が立ちはだかっている状況で、諸外国に出向いて外交に関心を向けるということも困難になっています。
また、今回の支持率の低下は、法案やスキャンダルなどの一点で批判が高まって起きた急落ではなく、時間をかけて上下を繰り返しながら次第に下げてきた結果でもあります。なので、これまで自民党の政治家が言っていたように「法案が成立すれば国民は忘れる」というようなことは通用せず、いわば現在の水準が総合評価として定着しつつあるのかもしれません。
⭐政党支持率
しかし政権に批判的な人たちには、内閣支持率と同時に野党の支持率や無党派層の多さについても考えてほしいと思います。
内閣支持率は2017年の夏にも、今と同じ程度の水準まで低下していました。しかしその3か月後、与党は衆院選で圧勝し3分の2の議席をとっています。秋には解散総選挙も考えられる情勢ですが、内閣支持率が低いからと言って、野党が優位に選挙を進められるとは限りません。
政党支持率を見てみましょう。全政党を表示した図(上)と、10%未満を拡大した図(下)です。
支持政党を持たない無党派層が増加し、前回衆院選以降で最も多くなっています。立憲民主党の支持率は、実は、今は結党以来最低の水準にあります。今年4月から大阪を中心に支持が伸びていた日本維新の会は、6月末をピークとして下落が続いています。
政党支持率を与野党についてそれぞれ合計すると次のようになります。
長期的な推移が下の図です。
このグラフからは、野党全体の支持率にたびたび上向きのスパイクがあることが読み取れます。これは衆院選や参院選のときにおこる支持率の「選挙ブースト」です。
この選挙ブーストは、無党派層の人たちが国政選挙の際に政党を支持するようになる結果としてあらわれます。政党にとっては国政選挙こそ支持拡大の絶好の機会であり、無党派層が増加している時ほど大きなブーストが起こる余地があるわけです。
選挙ブーストは与党よりも野党側に働きがちなため、これは政党を支持しない政権批判層が、政治を変えなければいけないと考えて野党側に動く結果でもあるとも言えるかもしれません。
「無党派層」というふうに言うとある特定の「層」がいるように錯覚しがちですが、それは漠然としたものではなく、生活を営む一人一人の具体的な人たちです。今だってそれぞれの街のそれぞれの人が、新型コロナの危機に際して思い悩んでいるでしょう。
このままでは、5年たち、10年たって振り返ったときに、あの時代に何をしていたのかということを必ず言われます。それは与党だけでなく、私たち主権者の誰もが言われることになるはずです。
ここで見てきたように、新型コロナへの今の政権の対応は評価されていません。多くの国民が不安を抱え、「それとは違う何か」を期待しています。そうした中で、野党は新型コロナに立ち向かう社会の姿を示すことができるでしょうか。政権の対応を批判するだけでなく、「我々ならこのようにするんだ」「このような社会を築くんだ」という合理的なビジョンを打ち出して、そうした不安と期待を持つ人たちの心をゆさぶれるでしょうか。
そういったことが今後の鍵になってくるのではないかと思います。
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note: みらい選挙プロジェクト情勢分析ノート