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医療費控除・セルフメディケーション税制は確定申告をしないと受けられません

医療費控除について名前はご存じの方も多いと思いますが、セルフメディケーション税制はどうでしょうか?と、言うことでこの記事では確定申告シーズンに入るとご質問の多い医療費控除とセルフメディケーション税制について解説いたします。(令和5年1月31日時点の情報を元にしております)

医療費控除・セルフメディケーション税制の仕組み

医療費控除・セルフメディケーション税制は所得控除に加えることが「できます」 加えることができるというのは、特に義務ではなく控除の対象になる方が自分の意志で手間を掛けて確定申告をすれば納税する金額を抑えることができるという制度だからです。また、医療費控除・セルフメディケーション税制どちらも年末調整の対象にはなっていないので、給料をもらっている方であっても確定申告をしないとこの制度を受けることはできません。

また、この控除額の計算に入れられるのは確定申告をする方ご自身に掛かった出費はもちろん、自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費でも計算に入れることができます。つまり、一緒に住んでいるご家族はもちろん進学などで親元を離れていて仕送りしているお子さんなど生活の面倒を見ている方に掛かった費用も入れることができます。

会社員や法人の役員、年金収入の有る方の場合は既に給与・報酬・年金から税金を差し引かれていているので、申告をすることで計算の結果次第ですが税金の還付になるかもしれません。個人事業の方であれば納めるべき税金を低く抑えられる可能性が有ります。そして、確定申告の結果は住民税の計算にも反映されますので住民税の節税にも繋がります。

収入と所得の関係については過去の記事で繰り返し解説しておりますので、給料や個人事業の方、年金で収入を得ている方はこちらの記事をご確認ください

医療費控除は医療費10万円を超えていなくても対象になる?

次に医療費控除について解説します。医療費控除は病気や怪我の治療、不妊治療のために大きな出費が有った方を対象にした制度です。予防接種や美容のための出費は対象になりません。例えばインフルエンザの予防接種、歯のホワイトニングの費用、二重や顔のシミを取る美容医療の費用は医療費控除の対象にできません。予防ではなく治療のためかどうかが判断の目安となります。

下記は国税庁のホームページに記載されている控除の対象になるかをしめした基準です。


国税庁のホームページでも示している通り自由診療や病院以外の出費は全部医療費控除の対象にならないかと言えばそうではありません。例えば出産に掛かった費用、視力回復のためのレーシック手術、歯のインプラント治療、お子さんの歯の矯正で歯科医師が子供の成長を阻害しないようにするためと判断したもの、通院するために使った公共交通機関の費用も医療費控除に入れることができます。

タクシー代は原則入れることができませんが、夜間に陣痛が来て急いで産婦人科に行かなければならない場合など症状や必要性から判断されます。

介護にかかる費用はどうでしょうか?全部では有りませんが医療費控除の対象になります。基本的には施設が発行する領収証に対象となる金額が記載されることになっています。施設内で行っている散髪や日常生活に使用する用品代は除かれます。
介護老人保健施設や介護と医療両方を受ける方が入る指定介護療養型医療施設、介護医療院の場合は介護費、食費および居住費に係る自己負担額が控除の対象になります。

特養老人ホームやその小規模版である地域密着型介護老人福祉施設は先程の自己負担分の2分の1が控除の対象になります。
ただし、俗に言うサ高住や介護付き有料老人ホームの利用料は控除されません。おむつ使用証明書が出ているおむつ代は控除できます。

市販医薬品も対象になる?

処方されたお薬以外の市販医薬品も医療費控除の対象になります。全てを入れられるわけでは無く、風邪をひいた場合の風邪薬などが対象になります。医薬品と書かれていても予防や健康増進のため、美容のためのものは対象外です。

医療費控除の基本的な計算方法

先ずは基本の計算過程を解説します。その後に所得が200万円以下の方の計算方法についてお話します。

医療費控除の集計は確定申告書に添付する医療費控除の明細書に記入することから始めます。明細には費用毎に記入するのではなくの集計が必要です。病院や施設など支払先ごとの合計を記入して下さい。
*医療費控除明細書のリンク
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/ref1.pdf

領収証の集計に変えて、病院や薬局・施設の領収証や健康保険協会から発行された「医療費のお知らせ」を利用することができます。お知らせを利用する場合は書類右下に1~9月の集計がでます。10~12月は自分で領収証などを用いて集計してください。

医療費控除の計算の注意点

医療費控除に入れられるのは1月1日から12月31日までに実際に支払った費用です。例えば12月に入院して、1月に費用を払った場合は次の年の医療費控除の対象になります。
領収証が出ない公共交通機関の費用の場合は自宅と病院までの通院回数で計算して下さい。

保険金・高額療養費の払い戻し・出産育児一時金の取り扱い

生命保険会社から受け取った入院給付金や高額療養費の払い戻し・出産育児一時金など治療や入院に際し補填をされたを場合は、支払った医療費から差し引きます。更にそこから10万円を引いて残った分が医療費控除の金額になります。つまり、この計算でマイナスになった方は医療費控除はできません。後半にお話するセルフメディケーション税制の対象になるか計算してみて下さい。

医療費控除の計算式

1年間の医療費合計 ー 治療や入院に際し補填をされたもの ー 10万円 

10万円を超えなくても控除できる?

支払った医療費が10万円以下でも医療費控除ができる方について解説します。1年間の総所得金額等が200万円未満の人は、先程の計算式で【10万円】の部分が、総所得金額等の5パーセントの金額に変わります。

総所得とは何でしょうか?総合の総の字が入っている通り、1年間のあらゆる種類の所得を合計して、繰越控除や損益通算が有る方はその分は差し引いて分を指します。あまりたくさんの所得が有る方、例えば、事業所得が有って、年金も受給されていて、不動産収入が有ってという方は計算に注意が必要です。

しかし、多くの方は給与だけ、年金だけという方が多いと思います。給与所得の有る方は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の部分

年金の受給をしている方は源泉徴収票の「支払い金額」をこちらの速算表に当てはめて計算してみて下さい。

事業所得の方は青色申告決算書や収支内訳書の所得金額の部分になります。

総所得金額等が200万円未満の人の医療費控除計算例

所得が年金のみの方の計算を例にして説明します。下記リンクの方の1年間の所得(雑所得)は1,560,100円、医療費が12万5千円、特に生命保険などで補填が無かった場合の計算式はこの様になります。
医療費125,000円 ー (総所得1,560,100✕5%) = 医療費控除額46,995円 

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/pdf/06.pdf

セルフメディケーション税制の概要と計算方法

セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例で…
「健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行っている方」が、ご自身や生計を一にする配偶者その他の親族のために【特定一般用医薬品等購入費】を支払った場合に受けることができる制度で、令和8年分の確定申告まで利用できます。

健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組を行っている方・特定一般用医薬品等購入費

「健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組」とは、会社の健康診断を受けていた、市町村で行っている健康診査やがん検診、インフルエンザなどの予防接種を受けていることを「取り組み」としています。

【特定一般用医薬品等購入費】とは病院で処方される薬や、薬局で売られているスイッチOTC医薬品と呼ばれるマーク付きの商品の購入代金のことを指します。薬局で売っている医薬品の対象商品は厚生労働省のホームページでも確認ができます。また、購入時に受け取るレシートには対象商品に星印のマークが付きます。 星印や米印などのマークが付きます。マークの種類について薬局により異なりますが、セルフメディケーション税制対象である旨が記載されます(2023年2月3日修正)

セルフメディケーション税制の計算方法

セルフメディケーション税制の計算方法について解説します。
医療費控除同様に1月1日から12月31日までに実際に支払った費用が対象となります。

  1. セルフメディケーション税制用の明細書に薬局毎、支払先ごとの合計を記入して下さい。

  2. 支払額の合計から、保険会社から受け取った給付金などが有ればその分を引いて下さい。更に12,000円を引いて残った分が控除の対象になります。

  3. 控除できる上限は88,000円までです。

  4. 確定申告書の記入場所は医療費控除と同じです。

セルフメディケーション税制の計算式

1年間処方薬・スイッチOTC医薬品の合計 ー 保険金など補填をされたもの ー 12,000円 

医療費控除・セルフメディケーション税制共通!書類の保存期間は5年

ここからは医療費控除とセルフメディケーション税制共通のお話になります。現在の確定申告制度では医療費控除・セルフメディケーション税制共に領収証の添付は必要ありません。しかし、領収証は保管が必要です。

添付をするのはそれぞれの明細書、医療費控除を受ける場合は健康保険協会から発行された「医療費のお知らせ」の添付が必要になります。ただし、Etaxで電子申請をする場合は医療費のお知らせも添付の必要はありません。保管はしてください。

セルフメディケーション税制を受ける際の条件となっている健康診断結果など取り組みを証明する書類も保管義務があります。

それぞれ各書類は5年間の保存義務が有ります。税務署から内容の照会を受ける可能性が有りますので失くさないようにしてください。証明できる書類がない場合は控除の対象になりません。

動画でも詳しく解説しております


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