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所得拡大促進税制・賃上げ促進税制・人材確保等促進税制の違いを解説

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今回のテーマは税金に関するものです。主に法人や個人事業者を対象にしております。所得拡大促進税制・賃上げ促進税制・人材確保等促進税制と色々似たような制度が有りますが、いずれも法人又は個人事業者に雇用される社員の所得に焦点を当て、一定要件を満たすと節税ができるというものです。これら3つに共通するのは、以下の3点です。

  1. どの制度も給与や賞与等の増額を促すための制度

  2. 税控除であり節税効果が高い

  3. 給与や賞与等「増額分」に控除割合を掛けて税額控除される


所得拡大促進税制と賃上げ税制は基本的な適用要件は同じ制度です。

  • 雇用者全体の給与が前年度と比べて1.5%以上増加していれば、増加分に15%を掛けた分を税額から控除できる。

  • 上乗せ要件と言われる税控除率の上乗せが、賃上げ税制の方が手厚くなっており、所得拡大促進税制が最大で25%に対し賃上げ税制は最大で40%になる。

上記2つの税制は現在雇用中の社員を対象としているのに対し、人材確保等促進税制は新規雇用者に焦点を当てた制度で、税控除も新規雇用者の給与増加分に対して行われます。

所得拡大促進税制と賃上げ税制は適用期間と上乗せ要件の違いに注意!

所得拡大促進税制の適用は、令和3年.4.1~令和4年.3.31までの期間内に開始する事業年度が対象になります。

  • 雇用者全体の給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加していること

  • 雇用者の中には正社員・アルバイトなど区別なし *役員や親族除く

  • 前年度からの増加分15%を税額控除

つまり、3月決算の会社は令和4年5月31日期限の法人税申告に所得拡大促進税制の適用が有るどうかの確認が必要になります。個人事業者の方は令和5年3月15日までに申告しなければならない所得税の確定申告時に適用の確認となります。
更に、この制度には上乗せ要件が有り、要件に当てはまると、先程の15%の控除率が25%まで増えます。要件は以下のようになります。

  • 雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加していることに加えて…

  • 教育訓練費が前年度より10%以上増加している 又は 中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受け、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされている

経営力向上計画とは、経済産業省が進めている施策で、企業が経営に関する各指標を高めるという計画書を提出して認定を受ける制度のことです。認定を受けると税金や融資の際に優遇を受けられる特典が有ります。
この制度に興味の有る方は概要欄にリンクを貼っておきますのでご利用ください。

参考:経済産業省ホームページhttps://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/pdf/tebiki_keieiryoku.pdf

上乗せ要件に当てはめるためには上記を全て満たす必要があり、中小・零細企業では申請の労力に比べると余りメリットのない要件でした。
適用期間は異なりますが、賃上げ税制では上乗せ要件が使いやすくなりました。

賃上げ促進税制の適用期間は令和.4.1~令和6.3.31までの期間内に開始する事業年度が対象になります。個人事業主については、令和5年度・令和6年度の各年です。適用期間以外の15%の税控除を受けるための要件は同じです。この他、上乗せ要件は以下の通りです。

  • 雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加していることで税控除率は15%から30%に増加

  • 教育訓練費が前年度より10%以上増加すれば税控除率は25%に増加

  • 給与額が前年度と比べて2.5%以上増加の要件と、教育訓練費が前年度より10%以上増加の要件両方をすれば税控除率は40%に増加します

雇用拡大促進税制では全てを要件を満たさないと控除率の上乗せがされなかったのに対し、賃上げ促進税制で要件毎に控除率が設定され、事務負担の緩和が図られています。

人材確保等促進税制は新入社員の採用に焦点を当てたもの

人材確保等促進税制の適用期間は令和3年4月1日~令和4年.3月.31日までの期間内に開始する事業年度となっており、所得拡大促進税制の期間と重なっています。注意点として所得拡大促進税制又は賃上げ税制と合わせて受けることはできません。適用期間中に入社した社員の給与増額分に15%を掛けて税額控除されます。

所得拡大促進税制は会社全体の給与の増加に対して控除率が掛かるのに対して、人材確保等促進税制は新しく採用した社員の給与増加分に対して行われるので、節税の旨味は所得拡大促進税制の方が大きいです。

よって、実務上は先ず会社が所得拡大促進税制の対象になるかどうかを検証して、摘要しないのであれば、次に人材確保等促進税制の摘要の確認となります。

税控除にならないパターンに注意

  1. 前年度の対比ができない設立・開業1期目の会社は対象外です

  2. 役員・親族の給与は対象外計算の対象外となります

  3. 法人税額・所得税額0の場合は、控除する税額が無いので摘要は有りません

雇用調整助成金など受給時の注意点

雇用調整助成金などを受給した場合は税控除の計算に注意してください

  1. 前年度と比べて給与額が1.5%以上増加しているかの否かの検証時には助成金額を含めて計算する

  2. 税控除額を計算する時は全体の増加した給与額から、助成金の額を引いて計算する

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