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排液を調べればいろいろわかる! 植物の健康診断(農業)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。人間は健康診断などで尿検査や便検査などを定期的に行います。尿や便を検査することで、様々な病気やその兆候を知ることができます。植物も同じく排液を見ることで植物の水や養分の吸収状況や根の健全具合を見ることができますので、排液管理は非常に重要です。

<排液管理をしましょう>
特に地下部の環境要因を可視化しやすい養液栽培では、養水分の過不足を容易に判断できます。「排液率の測定」と「ECとpHの測定」です。これらを与えた養液と排液を比べることで植物の地下部の環境状況を確認することができます。
最低週1回、理想は毎日実施します。

① pHを確認する
pHとは水素イオン濃度のことです。養液の酸性度、アルカリ度を示し、7が中性で1に近づくと酸性、14に近づくとアルカリ性を意味します。pHが下がると、1ℓ当たりの水素が増えることを示します。pHが1下がると水素が10倍増え、逆も同じくpHが上がると水素が減ります。pHの調整が必要なのは養液栽培だけでなく土耕栽培でも必要で酸性に傾きやすい日本の土壌では石灰(カルシウム)を撒いたりします。

・潅水(養液)pHの調整
 多くの場合、潅水する養液はpH6以上のため、硝酸やリン酸などの酸を加えることで重炭酸を中和してpHを下げます。目的は肥料の沈殿防止と養分吸収の最適化です。原水に含まれる重炭酸が多いほど多くの酸を必要とします。潅水する養液のpHの目標は5・5です。pHが高いと、肥料が沈殿しやすく、リン酸や鉄、マンガンなどの吸収にも問題が発生します。しかしpHが低すぎると、作物の根が焼けたりカリウムやカルシウム、モリブデンの吸収に問題が発生したりします。

・排液pHで生育診断
通常、排液のpHは潅水よりも高くなります。pH5.5の潅水を与えた場合、排液は6.5とか7とかになります。これは作物が栄養生長の状態で、硝酸態チッソをよく吸収していることを意味します。
まれに、排液のpHが潅水よりも少々高い程度か低くなることもあります。6とか5、3とかです。作物に着果負担がかかっていたり、生長点が弱かったりするときです。培地が過湿で根が傷んでいる可能性もあります。潅水にアンモニア態チッソが多く含まれていたり、ヤシガラなどの有機培地が腐敗したりしているときにも起こります。

②  ECの測定
ECとは電気伝導度のことで、養液中に溶けている肥料塩もしくはイオンの総量を示します。日常の肥培管理では欠かせない単位です。

・ECで生育制御
ECは施肥量と考えるとわかりやすくなります。施肥量が多いと、ECが高くなります。ECが高すぎると、浸透圧の関係で養水分の吸収が抑制されます。低すぎると、その逆になります。この作用を活かすことで生育制御が可能になります。高糖度トマトの養液栽培で非常に高いECにするのがわかりやすい事例です。
多収を狙った栽培でもEC値により生育制御ができます。排液のECが高くなるようにすると、吸水が抑制され、葉は小さくなります。生殖生長です。排液のECが低くなるようにすると、吸水が促進され、葉が大きくなります。栄養生長です。

排液のECは潅水EC、潅水量、潅水間隔、潅水の開始と終了の時間、排液率により調整できます。

・潅水ECと排液ECの関係
収穫期の作物では、潅水ECに対して排液ECが0.8~1程度高くなるのが目標値です。作物が水と肥料をよく吸収し、吸い残した肥料が濃縮されている状態です。
 ただし、排液ECが高くなりすぎることが多くあります。理由は潅水不足です。特に晴天日の蒸散量が多くなる正午前後の潅水が足りず、排液がほとんど出ていないことが予想されます。その場合、潅水頻度を多くします。排液ECが高くなりすぎるもう一つの理由は、潅水ECが高すぎるためです。

 また、潅水ECに対して排液ECが低くなることがまれにあります。これは肥料が足りない状態です。潅水量が足りないか、潅水ECが低すぎることが原因です。培地が乾いていないか確認してみてください。

③排液排液排液管理の順序
排液管理での順序は、まず1.排液pHを確認して2.ECを確認して作物の生育状況を評価することです。

排液のpHが下がる傾向のときは培地の過湿により根が傷んでいる可能性があります。夕方遅くまで潅水していないか、夜間の培地が過湿ではないか、朝の潅水後に早い時間から排液が出ていないかを確認して、潅水終了時間を調整してください。
  pH → 根が傷んでいないか → 潅水量、潅水タイミングチェック

次に排液率と排液ECを確認して、潅水の過不足を評価します。潅水管理により作物が十分に吸水できているかの指標としては、目標とする排液率を維持するよりも、排液ECを維持するほうが適しています。もし目標よりも排液ECが高くなったら、目標の排液率を高くして、潅水の量もしくは頻度を増やします。
  EC→ 潅水量は適切か → 排液ECを維持する形でコントロール

年間を通して潅水ECは固定して、排液率と排液ECを確認しながら潅水量を増減させるほうが合理的かつ容易な管理方法です。

【問い合わせ】
TEL 080-3396-5399
MAIL t.ogawa19720117@gmail.com

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