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5月~6月にかけて注意したい病害虫 (農業)(トマト)

こんにちは。農業経営サポーターの小川隆宏です。
今日は5月~6月にかけてトマト栽培で注意したい病害虫について書いていきます。農業はハウス栽培でも露地栽培でも病害虫との闘いということができます。基本は「予防」。しかし発生してしまったら「対処」していかなければなりません。そのために病害虫の性質を理解して、先回り先回りの対策を立っていく必要があります。ハウス栽培では防虫ネットなどで外から虫が入ってこないようにしていたり、ハウスの出入り口では靴を履き替えたり、靴を消毒して入ったりとできるだけハウス内に持ち込まないようにされているところも多いですが、それでも病害虫は入ってきます。

ハウス内に害虫が入り込み、ハウス内環境が害虫に適していればどんどん増えます。外敵もいない状況で、同じ種類の作物が密植状態にあるので増殖するのは適した環境なんです。害虫の侵入に気づくのが遅いとハウス内が「虫かご」のようになってしまうケースもたまに見ます。

では5月~6月に発生しやすい病害虫とその特徴を述べていきます。

<葉カビ病>
(症状)

主に葉に発生。葉の表面に輪郭不鮮明な淡黄色小斑点を生じ、その裏面には灰黄色ないし緑褐色のかびを密生する。病斑は拡大して、かびの色は灰褐色ないし灰紫色に変化し、葉の表面にもかびを生じる。下位葉から発生し、次第に上位葉に蔓延し、病斑が葉の大半を占めるようになると落葉する。

(発生の仕組み)
施設栽培では周年的に多発する。葉かび病は,施設栽培の重要な病害であるが,トンネル栽培や露地栽培でも発生する。
・多湿
葉かび病菌は,95%以上の多湿と20~25℃の温度を好むので,外気が低温で,換気を十分に行なうことのできない晩秋~早春の栽培で発生しやすい。
・密植
密植しすぎると,茎葉が繁茂し,多湿となるので発生しやすくなる。
・過度な潅水
過度の灌水を行なうと多発する。過度の灌水を行なうと多湿となり,苗も軟弱に育つので,発生しやすくなる。
・草勢のおとろえ
草勢がおとろえると多発する。肥料切れしたり,干害をうけたり,日焼けをおこしたりして,生育がおとろえると多発しやすい。とくに収穫期に入ると,肥料切れしやすいので多発する。
病原菌前作の被害作物残さで生存し、その上に形成される胞子が飛散して第一次伝染源となる。

(対策)
・耐病性品種の採用

耐病性品種(CF桃太郎シリーズなど)を利用することで被害を軽減できる。
・散布薬剤
散布薬剤としては、トマト・ミニトマトでは、ケンジャフロアブル、ネクスターフロアブル、アフェットフロアブル、ベジセイバー、トリフミン水和剤、パレード20フロアブル、アミスターオプティフロアブル、カンタスドライフロアブル、ファンタジスタ顆粒水和剤、ベンレート水和剤、トップジンM水和剤、ベルクート水和剤が利用できる。
生物薬剤として、バチスター水和剤、インプレッション水和剤、バイオワーク水和剤、エコショット、セレナーデ水和剤がトマト・ミニトマトに利用できる。

<灰色カビ病>
(症状)
地上部のあらゆる部位に発生する。特に果実の被害が最も大きい。育苗期や定植後の幼植物では、葉・茎・葉柄に発生する。葉には褐色の大型円形病斑を生じ、茎や葉柄には暗褐色水浸状の円形病斑を生じる。病勢の激しい時には、被害部より上の茎葉が枯死する。生育後期には、これら組織のほか、花弁・果梗・果実に発生する。古い花弁やがく片などが褐変し、その後、果頂部やへたの付近から果実へ病原菌が侵入し、開花前後のものでは褐変枯死して落果する。親指大以上の果実では、水浸状暗褐色の小型円形病斑を形成し、次第に拡大して果実を軟化腐敗させる。葉や茎には被害花弁や果梗が落下し、葉上や枝の分岐部などに付着すると、その部分から発病する。これら病斑上には、灰褐色のかびを密生し、たたくとほこりのように胞子が飛散する。
ある程度生長した果実には、径1~2mmの黄白色円形の中心のある小斑点(ゴーストスポットと呼ばれる)を多数生じることがある。

(発生の仕組み)
・ハウス栽培で11~5月にかけて発生しやすい。この時期には外気温が低いため,とくに夜間の冷え込みをおそれてハウスを密閉しがちである。20℃くらいで室温も低く多湿になりがちで,葉先に水滴が滞留する環境になると発病しやすい。
・密植しすぎたり,軟弱な生育となったり,繁茂しすぎたりすると発生しやすい。
・ハウス促成栽培や暖地のハウス抑制栽培では密植栽培になりやすく,多湿になり多発しやすい。とくに,朝夕の急激な冷え込みは,灰色かび病の発生を著しく助長する。
・着果後の花落ちの不良な品種にも発生しやすい。

(防ぎ方)
・低温にならないように,保温に努める。
・多湿にならないように,日中高温のときは積極的に換気を行ないハウス内の水分除去に努める。
・発病前から薬剤による予防散布を行なう。
・ビニールなどによるうね面や通路のマルチを行ない,施設内の湿度の低下と土壌中の罹病残渣からの伝染を防ぐ。
・果実に付着した花は早期にとり除く。ブロアーやコンプレッサーによる花殻の吹き飛ばしも省力的である。
・発病した果実や茎葉は分生胞子形成前に見つけ次第,摘除し,施設外へ搬出して土中深く埋める。被害部位に分生胞子形成が認められたら胞子が飛散しないようにていねいにビニール袋などに密封して処分する。
・ポリビニルアルコールフィルムは吸放湿性や透湿性があるので,これを内張りに用いると夜間や早朝の多湿環境が改善され発病は抑制される。
・散布薬剤
ボトキラー水和剤、ベンレート水和剤、ロブラール水和剤、ゲッター水和剤、ジャストミート顆粒水和剤,フルピカフルロアブルなど.


<コナジラミ>

セミやウンカの仲間。成虫・幼虫が食害。
オンシツコナジラミの成虫は白色で翅をもち、体長2ミリ、幼虫は緑色半透明の小判形で体長1~2ミリ。タバココナジラミの成虫は白色で翅をもち、体長2ミリ、幼虫は黄色半透明の小判形で体長1~2ミリ。

(被害)
成虫・幼虫が葉の汁を吸うので株が弱る。
ウイルス病を媒介する。特にタバココナジラミによるトマト黄化葉巻病(TYLCV)の被害が大きい。汁を吸って糖分を含む液体を排泄するため、多発すると排泄物の上に黒いかび(すす病)が発生する。

(生態)
・加温施設内では年中生息し,冬季も発育と増殖をつづける。野外では,雑草上で休眠せずに越冬する。越冬寄主として,オオアレチノギクやノゲシのキク科ロゼット葉などが好まれる。卵から成虫まで全ステージが越冬可能であるが,おもな越冬態は卵と老熟幼虫,蛹などである。
・露地における発生は,6~7月と9~10月に多い傾向で,夏場には少ないがアサガオやヒマワリなどの広葉の植物には生息している場合がある。
・成虫は若い葉の裏に群がり,吸汁,産卵する。雌雄は交尾するが,交尾しなくても増殖可能である。雌の成虫寿命は3~5週間。1雌当たり産卵数は30~500粒。
・孵化幼虫はしばらく徘徊し,吸汁に最適な場所を探す。2齢,3齢幼虫と蛹は固着的な生活をして移動することはない。幼虫,蛹,成虫は口吻を植物組織に刺して維管束から吸汁し,必要なアミノ酸を吸収したあと,不要な甘露を尾端から大量に排泄する。
・卵が産下されてから成虫になるまでの期間は,24℃恒温条件下で約3週間である。春から秋の間,温室内では約1か月で世代が入れ替わるとみておけばよい。
・成虫寿命は約1か月で長期間産卵するので,多発するとつねに卵,幼虫,蛹,成虫が混在している状態になる。

(防除)
グレーシア乳剤、ベネビアOD、モベントフロアブル、コルト顆粒水和剤などを散布する。播種時~生育期にスタークル粒剤、ベストガード粒剤などを処理する。育苗期後半~定植時にベリマークSCを潅注処理する。天敵(オンシツツヤコバチなど)が発売されている。オンシツツヤコバチに寄生された幼虫はオンシツコナジラミでは黒色、タバココナジラミでは褐色になる。

【問い合わせ】
TEL 080-3396-5399
MAIL t.ogawa19720117@gmail.com

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