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ネットで食えるコピーライティング教室


売れるコピーはインサイトが8割 レトリックが2割

いきなりぶっそうな話で恐縮ですが、コピーをミサイル攻撃にたとえてみます。空高くバーンと打ち上げて一気に敵陣を破壊するあのミサイルです。このミサイル攻撃で重要なことといえばなんでしょうか?

ミサイル自体の破壊力?

もちろんです! 破壊力がなければそもそも敵陣を殲滅することなどできませんからね。けれどそれと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なことが、もうひとつあります。

それは、照準を定めることです。

当然ですよね。いくら破壊力のあるミサイルでもあさっての方向に飛んで行ってしまったら敵陣を破壊するという当初の目的が達成できないわけですから‥。

コピーも同じです。いくら練りに練った素晴らしいコピーであっても、的を外したコピーでは読み手の心に刺さることはありません。当然ながら心を動かすこともできません。逆に的さえしっかり押さえていれば、特別巧妙なレトリックに頼らなくても読み手の心を動かすことは十分可能になります。

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一般にコピーライティングというのは言葉の表現技術、すなわちレトリックがその本質だと考えられています。間違いではないのですが、コピーライティングにおいてレトリックが果たす役割はじつはそれほど大きくありません。

きちんとしたデータがないので正確な数字はわかりませんが、コピーライターとして長年、仕事をしてきた私の感覚からするとそれは2割前後ではないかと思われます。

では残りの8割を占めるのはいったい何でしょうか?

ーーインサイトです。

インサイトというのは、購入を動機づける心理的な働きです。たとえていうなら「買う気を刺激するツボ」のようなものです。東洋医学でいうあの「ツボ(経絡)」です。そして、このインサイトというツボさえ押さえれば極端な話、レトリックなどなくても売れるのです。

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この本は、インサイトという概念をキーワードに見込み客の心を射抜くためのコピーーーここでは「インサイトコピー」と呼んでいますーーの作り方をセミナー形式で解説したものです。

以前開催し、好評をいただいたセミナーで使用したスライド資料をもとに、本としても読みやすいよう新たに加筆修正したものですが、内容的にはほとんど別物といってよいほどパワーアップされています。

小手先のレトリックに頼らない、より骨太のコピーを書けるコピーライターが増えてくれることを頭の中で思い描きながら一気に、そしていそいそと書き上げました。たまたまこの本を手にとってくださったあなたがコピーライティングにおけるインサイトの重要性を認識していただき、またそれによってその技術に一層の磨きをかけていたただけたなら、これほど嬉しいことはありません。


この本が対象とする人

●コピーライティングの基本原理を学びたい人

●「煽り系コピーライティング」に限界を感じている人

●より効果的なコピーライティングノウハウを知りたい人


売れるキャッチコピーを作る上でのポイント


キャッチコピーを作る上でのポイントはふたつあります。

ひとつはインサイトの発見です。

もうひとつはAIDMAの理解です。


インサイトとは? 

まずはインサイトから見ていきましょう。

インサイトというのは直訳すると「洞察」を「意味する英語ですが、マーケティングの世界では、一般に「人を動かす隠れた心理」といった意味で使われます。消費者自身も気づいていない無意識の欲求といった意味です。

といってもこれでは雲をつかむような話ですので、ここではもう少しわかりやすく「買う気を刺激するツボ」といっておきましょう。指圧や鍼灸でいうあのツボです。そこを刺激されると思わず買いたくなってしまうーーそんなイメージです。

とはいえそれでもまだ抽象的ですよね。

じつはこのインサイト、実際、やたらと抽象的な概念である上、様々な人が様々な定義をしているので、われわれ現場の人間には何がなんだかわからないのが現実です。

そこでここでは独断と偏見を恐れず実用本位でざっくりといってみましょう。

ということでもう少し判りやすい「たとえ」はないものかと探して見たら‥ありました!

言葉です。

何気なく本を読んでいたり、また街を歩いていたりしているとき、特定の言葉だけがやたら目に入ってきた経験はないでしょうか?

たとえば「痩せる」「儲かる」「腰痛」などの言葉です。

なぜやたら目に入るのでしょうか?

それはそれらの言葉が「気になる言葉」だからです。あなた自身がそれにまつわる悩みを抱えているからです。その悩みを解消したいという欲望が心の中にあり、その欲望がそうした言葉に注目するよう無意識の中で働きかけているのです。

同じように「成功」「億万長者」「美人」といった言葉がやたら目に入る人も多いのではないでしょうか。それはそれらの言葉がもつ世界観が自分もそうなりたいという欲望と共鳴するからです。その世界観に自分を「はめる」ことで心の中のインサイトが刺激されるのです。

このように「気になる言葉」「はまる言葉」には、心のツボを刺激する特別な力があります。

ここではその力に注目して、それらをほぼイコール、インサイトと定義したいと思います。

学問的な正確さという観点からみれば、少々ずれた部分もあるかもしれません。しかしこれはあくまでもコピーライティングという特殊な視点からみた、それもざっくりした定義ですので、少々の逸脱はご容赦いただければと思います。

なお人の心をゆさぶる力を持つという点で、これらの言葉はある種のパワーワードということもできます。そこでここではそれらをパワーワードという名称でも呼ぶことにします。

すなわち、「気になる言葉」「はまる言葉」≒「インサイト」≒「パワーワード」という図式です。

<閑話休題>

ユング心理学では、人の無意識の中には元型と呼ばれる一種の情動エネルギーがあるといわれています。それがなんらかの形で刺激されるとその情動が一気に噴出し、その人の行動を支配するといわれています。そして元型はすべての人間が共通して持っているものとされています。

たとえば、そのひとつに「英雄」という元型があります。英雄というのは、困難を乗り越えて勝利する人を象徴するイメージです。苦難に打ち勝ち、最終的に夢を実現する物語に誰もが惹かれるのは誰の心の中にもこの「英雄」の元型があるからだとされています。

その点、インサイトはどこか元型と似ているところがあるようですね。というより、もしかしたらもっとも強力なインサイトは元型なのかもしれません‥。

 

AIDMAとは? 

AIDMAは、戦前アメリカのコピーライターが広告制作のためのヒントとして開発したもので、生活者が商品情報に接してから購買にいたるまでの心理的プロセスを示したものです。マーケティングの世界では購買行動モデルという名称でも知られています。

AIDMA 理論によれば、消費者はまず広告情報や店頭陳列などによって商品を認知し (Attension)、興味を抱き (Interest)、ついで欲しいという欲求が喚起され (Desire)、さらにそれを記憶し (Memory)、最終的に購入に踏み切る(Action)とされています。

なおMemoryの代わりにConviction(確信)がくることもあります。

もともと広告制作用に開発されたことからも判るように、これはコピーライティングのために作られたモデルです。そんなわけで、このAIDMAはいまではプロのコピーライターなら当然知っておくべき常識のひとつとされています。 

AIDMAで分析するコピーの役割分担

一口にコピーライティングと言ってもいろいろな種類があるのはみなさんもご存知かと思います。

そこにはキャッチコピー、ヘッドライン、タイトル、リードコピー、ボディコピーといった似たような言葉がいくつかあります。

でも、これはそう気にしなくて大丈夫です。じつのところそこには多くの重複があるからです。つまり実際には同じものをたんに別の言葉で呼びならわしているだけなのです。

ここではとりあえずキャッチコピーとボディコピーのふたつだけ覚えておいてください。

キャッチコピーというのは、一般に商品名と同じかそれ以上に目立つように配置されている比較的短めのフレーズです。

ボディコピーというのは、一般に商品の詳細を説明した比較的長い文章です。

通常、コピーといった場合、両者を合わせたものを指します。

そして両者にはそれぞれの役割があります。両者が組み合わさり、それぞれの役割を果たすことで「商品を売る」という最終的な目的が達成できるように設計されているのです。

では、それぞれの役割とはいったいなんでしょうか?

次のような役割です。

キャッチコピー=読者の注意を引き、ボディコピーに誘導する

ボディコピー=商品の魅力を伝え、商品を買わせるよう説得する

これはAIDMAに当てはめてみるとより判りやすいでしょう。

 ご覧のようにキャッチコピーは「A」「I」に、ボデイコピーは「D」から「A」までに対応することが判ります。

一般にキャッチコピーというと多くのひとはモノを売るための言葉という意味で捉えていますが、正確にいえば間違いです。

キャッチコピーはモノを売るための言葉ではありません。その名の通り、読者の注意を引く(キャッチする)のが本来の役割です。

モノを売る役割を担うのはボディコピーの方です。

ただし、最近はキャッチコピー単体で、売る役割までカバーしたものも増えています。情報の洪水のなかにいる現代人にボディコピーまで読んでもらうのがますます難しくなっていることが背景にあるのかもしれません。

次のコピーなどはそのひとつの良い例です。

とはいえこうしたキャッチコピーを作るのは容易ではありません。注意を引くことと商品の魅力を伝えるというふたつの役割を短い文の中で同時にカバーしなければならないからです。

しかしこのAIDMAを理解すればそれも不可能ではありません。というより逆にこれを理解しないでそのような一人二役のキャッチコピーを作ることこそ難しいといえるでしょう。

ともあれ、ここではキャッチコピーとボディコピーが本来別々の役割を持っているということだけ押さえておいてください。

キャッチコピーに必要な要素

 前段では、キャッチコピーが読者の「注目を集め、ボディコピーへ誘導する」のがその役目であると述べました。

ではそのために必要なものはなんでしょうか? 

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