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竜王戦第3局・富士宮対局大盤解説会

聖地巡礼の続きです。

大盤解説会は10時半開場・11時開始で、タクシーなら10分あれば会場まで着くとのことだったので、10時半にタクシーを予約していました。25分くらいにフロントに降りるとすでにそのタクシーが来てくれていたため、やや早めに出発しました。運転手さんがものすごくいい方で、朝から心が暖かくなりました。お名前も聞かなかったけれど、ありがとうございました。ふりかえれば、今回の旅で刹那的に触れ合った人たち例外なく優しかった気がします。

無事に到着
こちらのフォトスポット、大人気でした

当日受付もありましたが、今回の大盤解説会は基本的に事前申し込み制で、席も自分で選ぶのではなく抽選で自動的に決まる方式でした。私は申し込みが遅かったので期待していなかったのですが、前から9列目というなかなかいい席でした。しかも、解説と聞き手のおふたりが操作する大盤の前方でした。これはめずらしく運がよかったですね。

当日の自分の席から撮りました。中央部分に見えるアルファベット付きの紙袋は次の一手問題のための投票箱です。

解説会の開始に先立ち、富士宮市の市長さんからの挨拶がありました。富士宮市で将棋のタイトル戦を開催するのは初めてだったそうです。盛り上げるために「おやつコンテスト」の企画を実施するなど、当日に向けて関係者のみなさんが尽力されてきた様子が伝わってきました。また、今回は立会人(青野照市九段)副立会人(八代弥七段)解説(青嶋未来六段)聞き手(加藤桃子女流三段)の全員が静岡出身の棋士だったのですが、その人選からも静岡でタイトル戦をすることに対する熱い気持ちを感じ取りました。また来年も富士宮で竜王戦が開催されるといいなあと思いました。

そして大盤解説会が始まりました。

スクリーンに、対局場の様子と解説者・聞き手が映し出されていて、後方の席でも快適に観戦できるようになっていました。

前述の通り解説は青嶋先生、聞き手は加藤桃子先生でした。ふたりとも静岡出身かつ安恵門下という共通点があります。加藤先生は現在リコー杯女流王座戦の真っ最中なので、その合間を縫って地方で大盤解説会の仕事をするのは大変だったのではないでしょうか。この方は本当にえらいな……と考えながら見ていました。
出てきた瞬間の青嶋先生が、オタクが見れば分かる程度には緊張していて、オタクはやや心配になりましたが、すぐに平常運転に戻っていたのできっと大丈夫だったのでしょう。
ちなみに今回の竜王戦ですが、私は広瀬先生を応援しています。広瀬先生のおかげでアベトナに出場する青嶋先生を見られたので、広瀬先生は私にとっての神です。

対局中は指し手がなかなか進まない時間帯もあるので、そういう場合は将棋の解説からいったん離れて、将棋にまつわる雑談を聞くことができました。そこでのお話がいろいろとおもしろかったので、覚えている範囲で箇条書きにしてみます。

加藤先生「(封じ手予想を▲4七玉としたことについて)昨日指導対局をやっていたので、上手の感覚のまま予想してしまった」

青嶋先生「自分が静岡に帰省するタイミングで八代さんと将棋を指す約束をして、新年早々将棋を指したことがある」

研究に使うパソコンのスペックや価格などについての話をしたあとの加藤先生「お金を持ってる人が強いということになるのでは」
青嶋先生「そんなことはない、研究だけでそこまでうまくいくわけではない」
加藤先生「それは自分も先日の女流王座戦第1局で痛感したばかり。途中までは研究範囲だったけれど、ある局面で研究とは違う手を指された。自分はそこで正解を指せずに負けてしまった。決して事前研究がすべてではない。」

加藤先生「青嶋の結論は本当にいい本、かなり勉強になったし、ふせんをたくさん貼った」「青嶋六段は他にも右玉や四間飛車穴熊の本も出している。右玉と穴熊という、まるで正反対のような戦型について本を書けるのはすごい」
青嶋先生「それはよく言われることだけど、そうなのだろうか。どちらも金銀を使う将棋だと思う。右玉は金銀でおさえこんで、穴熊は金銀でかためる。だから自分の中ではそのふたつはそこまでかけ離れてはいない。」

加藤先生「一度だけ藤井竜王とお話しできる機会を作ってもらったことがあるけれど、いざ話せるとなると何を話していいのかまったく思いつかず、テンパった挙句に「中飛車対策って何が有効ですか?」と聞いてしまった」「二枚銀がいいらしい」「せっかくアドバイスをもらったのに二枚銀はほとんど指していない」

八代先生「三島の高校に通っていたので、三島は俺の庭」「富士宮やきそばをひとりでふたつ食べた」

大盤の局面をかなり前まで戻そうとしたときの加藤先生「戻しましょう、安恵門下の力で」

副立会人の八代先生が大盤解説会に来てくれました。
写真を撮り忘れてしまいましたが、立会人の青野先生も来てくれました。

次の一手問題は2回出題されました。
解説・聞き手のおふたりが選択肢を作り、参加者はそこから指し手を予想して投票するという方式でした。
1回目の出題は84手目の局面。
選択肢は A:▲7五同歩 B:▲1三歩成 C:その他でした。
まず考えられるのはぶつかった歩を取る自然な▲7五同歩で、これを選択肢のひとつにしましょう、ということになりました。さらにもうひとつ候補手を出すことになり、青嶋先生は▲1三歩成、加藤先生は▲6五歩を挙げていました。意見が割れたので青嶋先生の候補手をふたつめの選択肢にして、加藤先生と同じく▲6五歩だと思う人はその他に入れてください、ということになりました。
私は▲1三歩成を選びました。▲1三歩成には△7六歩の取り込みがめちゃくちゃ怖そうに見えたのですが「▲2三とに△7七歩成だと▲3二とや▲3三とで駒を取られるので、さすがに▲2三とには△同金と手を戻すはず、だからいけるんじゃないか」という解説でした(正確にメモを取ったりしていたわけではなく記憶のみのため、間違えていたらすみません。)先手は香車を取りながら歩を1四まで伸ばしているので、それを活かした▲1三歩成でうまくいくなら自分は指してみたいなと思い、Bに投票しました。
2回目の出題は102手目の局面。
選択肢はA:▲6五歩 B:▲5七銀 C:その他 でした。
ここでは青嶋先生と八代先生が解説されていて、先手が次の△4六角成を受けるのがかなり難しい局面ということでした。▲5七銀(後手の桂が利いているところにあえて銀を動かす手)もかなり意表の手といった感じでしたが、それ以上に何か捻りださなくてはいけない局面に思えたので、私はC:その他に投票しました。
次の一手問題に答える機会はこれまでに何度かありましたが、正直に書くと参加したことがなかったんです。どうせ当たらないしいいかな……って。
今回、初めて自分でしっかり手を考えて投票することができたので、自分なりのやり方で少しずつ将棋をやっていてよかったなあと思いました。
1問目は外れで、2問目は正解でした。景品の抽選には当たりませんでしたがすごく楽しかったです。

終局後、なんと両対局者が大盤解説会の会場に駆けつけてくれました。

これは本当に嬉しかったし、感動しました! 藤井聡太竜王をこの目で見られるとは。確実に寿命がのびたと思います。
また、この第3局は広瀬先生にとってはつらい負けだったはずなのに、終局直後にも関わらず壇上でファンのことを楽しませてくれるような受け答えをされていて、本当に感動しました。プロってこういう人のことを指すんですね。第4局以降も広瀬先生を応援します!

大盤解説会の情報でお名前が出ていたのは青嶋先生と加藤先生だけでしたが、長時間のイベントだしきっと他の先生たちも出てきて順番に解説するのかな? と思っていたところ、途中で青野先生と八代先生が1回ずつ登場した以外はずっと青嶋先生と加藤先生でした。ほぼずっと推しといっしょにいられてオタクがものすごく喜んでいました。青嶋先生の元気そうな姿が見られて本当によかったです。
2日間かけて指される最先端の将棋を、1日かけてプロの解説付きで観戦できるというのは本当に贅沢なことだと思います。大満足で宿に戻りました。帰りはグーグルマップを見ながら徒歩で余裕でした。

大盤解説会の会場近くに飲食店が見当たらず、さらに会場併設のレストランは満員で、実はお昼ごはんを食べそこねていました。近くのコンビニで栄養補助食品を買って、定期的に挟まれる10分程度の休憩時間にそれをつまんでしのいでいましたが、大盤解説会が終わるころにはさすがにお腹がぺこぺこぺこぺこになっていました。
帰り道にイオンモールがあったので、ここで何か食べていこうと決めて店内マップを見ていたところスガキヤを見つけました。確かこのあたりにしかないチェーン店だったはずなので、夕飯はスガキヤにしました。

「濃い味スガキヤラーメン」です。その名前からかなりのこってりを予想していたのですがあっさりさっぱりで、とてもおいしかったです。空腹だったこともあり5秒で完食しました。
コンビニで見つけたビール

この日はこんな感じで終わりました。

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