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第三回 未来をつくるケアマネcafe

令和6年2月21日 第3回未来をつくるケアマネcafe(通常のkaigoカフェと同時開催)
 
 
ゲストスピーカーは医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳先生。

テーマは「医療と介護の連携について」だったが先生は、「変な話します。」と突然切り出され、参加者をドキドキワクワクさせて始まった今回のカフェ。スライドテーマには「在宅医療からその先の「地域」へ」とある。
「僕は18年関わっていますが、在宅医療に未来はないと思っています。」
さらにドキドキした。
 
まず、現在の悠翔会になるまでの歩みを紹介された後、後半にかけては「医師に求められるものとは何か」を中心に、今後のプロジェクトについてのお話が展開された。


 

2016年が転機だったと話される。シンガポールに世界中の医療関係者等が集まって開催されたAgeing Asia Innovation Forumで自分たちの取り組みをプレゼンし、受賞。喜びと同時に、世界の多くは在宅医療を保険でカバーされていない現実を知り、自らが井の中の蛙だったとショックを受けたという。危機感を持ち、2018年インドで高齢者ケアの提供を開始する。医療ニーズが高い患者が多いのに在宅診療の利用者は少ない。なぜなら治療費が自己負担だから。訪問看護と訪問介護が活躍し、医師の指示による看護師のケアと処方薬で患者は在宅生活を継続できている。入院が必要になると、医師が訪問する。高額な治療費がかかる病院より、在宅治療の方が経済的負担が軽いからである。

2024年今年のチャレンジは訪問看護・看護小規模多機能。在宅医単体での限界を感じた今、これからは訪問看護に軸足を移していく予定とのこと。

 今後のプロジェクトとして、「総合診療人材の育成」「急性期へのシフトとしての在宅入院」「退院(後)調整として訪問看護との連携」「海外事業の拡大」「リモートヘルスケア/AI・ICTへの投資」があげられた。

電子カルテ等テクノロジーの活用により、導入前と比較し診療時間を増やすことができるようになった。蓄積されたデータを可視化することで急変・憎悪の早期発見早期治療が可能になっている。

「質問への回答の質」と「共感力」において、医師とChatGPTのどちらが良かったかというテスト結果、どちらも医師は負けていた。もはや医師はAIに勝てないと、先生は昨年イギリスのNHS総裁、デビッド・プライヤー氏の講演を聴きに行かれた。イギリスは過去10年間の取り組みは病院中心の診療だったとし、これからは顧客中心の予測と予防に方向性を変えていくという。「ゲノム医療」「健康診断」「早期発見・早期治療」「生活指導」「行動経済学」。日本の医療は行動経済学はやっていない。どうやったら人の行動を変えられるか。内発的な動機づけ。インフラや社会格差も視野に入れなくてならない。医療も介護も、顧客の課題解決のために、病気だけを見るのではなくカバー拡大して環境や生活、その人と暮らす人や国を見る必要がある。
 


先生のお話が終わった後の質問で、「ケアマネジャーに求められるものは?」に対し、「今こそ、縦割りの職種を横に繋ぐ力を求められている。」と答えられた。急性期医療と在宅医療の移行期において、ここをきちんと言語化できることが必要であると。「それまでのACPを入院先に引き継ぐ」「退院直後は訪問看護や訪問リハビリ、歯科や栄養の専門職を入れ元の生活に戻す」。どうか、病院におまかせにはしてほしくないという言葉に力がこもった。
 
ラスト20分間ほど、リアル会場・オンライン(合わせて110名ほどの参加者数)ともに4、5人のグループに分かれて対話の時間が設けられた。集まった職種も様々で、久しぶりに再会した人、初めて参加した人がいたがリラックスした雰囲気で、話を聴いての感想や、参加者それぞれが抱えている課題や今後について活発な意見交換が行われた。入院時のケアマネジャーの情報提供や、地域のケアマネ不足の現状、入院関連機能障害などなど・・・看護や介護の役割は今後ますます重要であるという先生の話に勇気づけられたという方も多かった。
 
冒頭で先生の口からこぼれた「変な話します。」という言葉の意味は、「次々と移り変わっていく時代」にどう対応していくかというメッセージにも受け取れたのだった。

graphic recording  by  Hideyuki Okada


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記事執筆 下猶 好恵
特養やデイサービスで介護職員を経て、施設ケアマネを4年間経験。在宅支援をやりたくて小規模多機能型居宅介護に移り、10年。絵を描くこと、本を読むこと、お茶の時間が大好きな管理者兼ケアマネジャー。

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