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破壊的イノベーション①

大手通信会社の教育系ソリューションの開発が大きく動き出した。アイデア出しの段階から、具体的な「要件定義※」の段階へと差し掛かり、次のミーティングでは「必要最低限の機能」「予想価格帯」「獲得シェアの予想」などが話し合われる。

つまり「売れるかどうか?」「採算が見込めるか?」というのがポイントで、このミーティングの如何(私の発言?)によっては、次のステップに進むか、計画自体がお蔵入りになるか決まる可能性がある。

新規事業の経営戦略としては、まず肝となる機能のみのプロトタイプを作り、試験運用を開始。メイン機能の有効性をテストしながら、その機能を最大限生かすUI、そして付加機能を加えながらテストを繰り返す。

教育系ソリューションはデザインも重要。キャラクターの可愛さや(音声がある場合)声優の質等にも売り上げは大きく左右される。もちろんそれも学習効果があってのこと。”AI読み上げ”は便利な反面、面白さにも欠ける。両使いで”機能”と”楽しさ”のバランスを取るのが正解か。

ベンチャーであれば、意思決定プロセスがシンプルなので、アジャイル開発、大幅なピボットも可能。もし教育系で結果が出なくても、実証データを蓄積して、他領域で大きな収益を上げることも出来る。「Amazon=本のネット販売」という認識はもはや当てはまらないのと同じ。

ただ、大企業の新規事業は意思決定プロセスが複雑で硬直的。正確な収支予測が必要だし、プロダクトの仕様や販売方法、開発期間、予算等は一旦決まるとおいそれと変更は出来ない。よって「とりあえずやってみますか..」というスタートアップはあり得ない。

新規事業なんて50%の確率もないのが当たり前。正確な収支予測などもやるだけ無駄。適当に「こんなものかな..」と数字を当て込むしかない。15年前にFacebook(メタ)の今の時価総額を正確に予想できた人が一人もいなかったのと同じこと。始めたら、とにかく数字(売上)を作るために頑張るしかない。

最近の真剣さ(私の印象でしかないが)は、会社が「社員の半数を新規事業に振り向ける」という方針を打ち出したことによるのかもしれない。しかし、数億円のプロジェクトで失敗してしまったら彼らの待遇が保証されるのか、コンサルとしてはそこまで気を遣いながら戦略を考える。

大きな投資で一気に市場を創りに行くか、小規模投資でまあまあ使えるプロダクトを作って販売ラインに乗せ、細く長く売るか..。前者の方が大規模な売上が見込めるし確率も高い。しかし、万が一失敗したときは多数の人柱が必要になるだろう。大企業のエリート社員たちにその度胸があるかどうか。

メッセージの結びには「残った時間は雑談ベースで忌憚のないご意見をお聞かせ下さい」とあった。こちらはあくまで「大会社の一部門の一チームの一プロダクトのコンサルタント」でしかない。向こうの様子もわからないことが多いので色々と聞く必要がある。

先方の状況によってこちらのアドバイスも変わると思うが、先方は大切なお客様だ。彼らにもプライドがあるので言い方に気をつけながら、何をどこまでアドバイスするか。社内報告書には記載されないシビアなやり取りがあるのかないのか。


※要件定義…設計、実装作業の前工程として行われ、ユーザーがそのシステムで何をしたいのか、なぜそのシステムが必要なのか、システムの目的(要求定義)に基づき分析、検討を行い、その実現のために実装しなければならない機能や性能などを明確にすること。

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