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手書きで家計簿を書いてみる - 発達障害と身体 (5)

ミライジンラボのプロジェクトに参加しているフジワラさんの連載ブログ。発達障害とともに生きる中で、日々の気づきをつづります。

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あえて、手書きの家計簿をつけてみようと思いたちました。
そしてクレジットカードの利用を縮小し、現金中心で生活していこうと思いました。

このご時世、クラウド家計簿がクレジットカードや電子マネー等を自動的に集計してくれます。
キャッシュレス生活なら「家計簿をつける」という行為自体が不要になります。

それなのになぜ、手書き&現金なのでしょうか。

今回はお金と身体、そして家計から見える思想について話してみたいと思います。

今回選んだ家計簿は『羽仁もと子案家計簿』というものです。
(実際にはその3か月版『かぞくのかけいぼ』をお試しで使っています)

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図:羽仁もと子案家計簿(かぞくのかけいぼ)と家計当座帳

1年版の「羽仁もと子案」では、次のような手順で家計簿をつけていきます

1. 1年間の予算を立て、それを12等分して月ごとの予算とする
2. 毎日のおわりに、家計簿をつける(基本は手書きだが、クラウド版もある)
・財布を取り出し、残高を確認する
・「家計当座帳」に日ごとの出入金を記録する
・「家計簿」に予算項目別の出入金を記録する
3. 毎月の終わりに、支払合計やクレジット・電子マネー等を記録する
4. 1年間が終わったら、実績をまとめて次の年の予算を立てる

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図:家計当座帳(練習のために10/19から付け始めた。いきなり850円のラーメンを食べる……)

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図:予算表(光熱費、住居・家具費)


……正直、めちゃくちゃ面倒!


正直、あまり強くはオススメしません(※注)。

それでもこの「羽仁もと子案」をつけてみようと思い立ったのは、次の理由からです。

・現金管理&手書きにより、金銭感覚を身体へ刻み込みたいから
・「予算を立てる」という習慣を身につけたいから

そもそも「なんで今どき現金&手書き?」という話です。

私もクラウド家計簿(マネーフォワード ME)を長年使い、クレジットカードや電子マネー等の支払いを自動的に記録させています。

……しかし自動で家計簿をつけたところで、見返さないんです。 ただひたすら毎月のクレジット引き落とし額に怯え、引き落とし額が足りなかったりして親に迷惑をかけたりしました。

つまりお金が消える原因のその1が「お金を使った感覚がない」ことでした。

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次に、クラウド家計簿には予算機能があるのですが、それをまともに使えていませんでした。 予算項目にしっくりこないし、いつも赤字の家計簿を前に「予算を立てよう」なんてポジティブな気持ちはひとつも起きませんでした。

別に贅沢をしているわけではないけど、漠然とお金を使ってしまい、何にいくら使ったのか結局あいまいなまま毎月の引き落とし日を迎えていました。

お金が消える原因のその2は「予算を立てない、立てても見返さない」ことです。

(※注)同じ発達障害でも、ADHDとASDのどちらの傾向が強いかによって、金銭管理の方針が変わります。

どちらかといえば「羽仁もと子案家計簿」はASDの方向けかもしれません。一方で現金のみ生活すること自体はどちらの特性にも有効でしょう。

ADHDの人は現金生活を心がけましょう。 衝動的に買い物をしたくなっても、お金がなければ買うことはできません。しかし、クレジットカードがあるとつい買ってしまいます。 また、カードの限度額を把握するのが苦手な人は、特に破産しやすいので、カードは持たずに現金だけで過ごしましょう。 (中略)
ASDの人はルーティンにこだわりがあるので、その特性を金銭管理に生かしましょう。 予め計画をたて、その通りにお金を使い、よほどのことがなければ、それ以外のことはしないと決めるのは効果的です。 (ADHD、ASD、LDなど、「大人の発達障害」と借金の関係 | 弁護士法人泉総合法律事務所

そんな中で、ある日「羽仁もと子案家家計簿がいいよ」という話を小耳に挟みました。

この家計簿の帯には「発刊117年」とあり、羽仁もと子という方が明治36年に考案されたもののようでした。

羽仁もと子は日本における女性初のジャーナリストであり、婦人之友社や自由学園などの創設者でもあります。 そして『羽仁もと子案家計簿』が実は日本初の家計簿とのことです。

明治・大正・昭和という激動の時代の中を生きてきた中で、 羽仁には「一人一人の小さな家」から「ゆきとどいた豊富な社会」を生み出していくという思想があったようです。

家計簿の特徴としても、次のフレーズが個人的に気に入りました。

収支が赤字のときにも対策が見えて、漠然とした不安が解消されます。
必要なこと、買いたいものにお金が使えるようになり、夢が実現します。貯金もできるようになります。 (中略)

この家計簿には、「生活」を問いなおす力があります。
(『羽仁もと子案家計簿』婦人之友社)

費目も独特です。

食費は「副食物費(おかず)」「主食費(ごはん等、外食含む)」「調味料費(飲料も含む)」に分けます。

つまり野菜やお肉・お魚といった栄養ある食品に予算を割り振るのです。これにより貧しくても栄養失調にならない生活を目指せます。

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図:予算(食費。3つに費目を分ける。日本初の家計簿にしてクセが強いっ!)

また「公共費」という費目があります。これは「収入の1%を募金や寄付など社会に役立てましょう」という、羽仁もと子の思想を表すような費目です。月10万円の収入でも1000円なら寄付できる……そういう導きがある家計簿です。

このように思想がしっかりしている家計簿だからこそ、身体を使い頭に汗をかいてでも「付け通してみよう」と思ったのです。

実際のところ始めてまだ1か月も経っていませんが、かなりしんどいです……(苦笑) 同じ「羽仁もと子案」の仕組みにもとづくクラウド家計簿もあるそうなので、もう少し続けて無理そうならクラウドに移行したいと考えています。

実は「家計簿をきちんとつけたい」と思ったモチベーションは次から来ています。

・親から仕送りをしてもらっているが、これ以上親に金銭的な迷惑をかけたくない
・将来のために、貯金を少しずつしたくなった

ミライジンラボとの関わりのおかげで、収入の見通しがささやかながら立つようになりました。

私の人生において学び残したことが、仕事とお金に関することです。 仕事のペースが少し掴めてきたので、次のステップへ行ってみたいと考えています。


これまで「発達障害と身体」という連載内シリーズをお届けしました。 紹介が遅れましたが、このシリーズでは「発達障害のある人が生きやすくなる指針を、身体という観点から見いだす」というテーマを試みました。

次回からは「仕事する身体」という新しいシリーズで書いていく予定です。 これからもよろしくお願いします。

フジワラユキ

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