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【連載】なぜ僕らは働くのか#1

何をやってもうまくできなかった

おそらく、僕はどちらかというと人よりも仕事ができないほうだと思う。

大学生のころ、どのアルバイトをやってもうまくいかなかった。飲食店で働いていたときは、出勤するたびにレジ打ちを間違え、皿を割り、お店のオーナーからは怒られ、同僚からは笑われていた。

次は失敗するまいと出勤前には、前回怒られたことをノートに書き留め、イメージトレーニングをしてから臨ようにした。それでも失敗は続き、怒られない日がくることはなかった。

思えば飲食店のアルバイトだけではない。高校の部活やホテルのアルバイト、ベンチャー企業でのインターンのどこに行っても致命的なミスをしては上司からひどく怒られ、裏で陰口を叩かれるということを繰り返してきた。

きっと同じような経験をしてきたのは僕だけじゃないはずだ。何をやってもうまくいかない、失敗しては怒られて辛くなってやめて…という話を同年代の友達からもたくさん聞くようになった。

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「仕事」にハマる瞬間が訪れた

そんなことを考え、大学4年生を休学していた春のこと。とある起業家育成プログラムというものに参加した。当時は起業家というものに憧れこそあったものの、まったくといって実感はなく、他にこれと言ってやることもなかったので純粋に興味本位で参加してみることにした。

もともと自身のバックグラウンドから、セクシュアリティ(性的指向)の問題に関心があり、大学3年生の頃から少しずつ活動を続けてきたこともあってか、そこで得られた知見や問題意識がいわゆる「サービス」として成立した。それがセクシュアリティ分析「anone,」だ。詳細はここから見てほしいが、今年の1月に正式にリリースしてから半年も立たないうちにユーザー数は10万人近くになり、セクシュアリティに元から関心があったかどうかに限らず多くの人に使ってもらえるようになった。

何より、これをやっている時間は最高に楽しい。確かに苦しいことも難しいこともあったが、そんなときでも「あの楽しい瞬間」が忘れられなくていつでもここに戻ってきてしまう。そして今、anone, はミライジンラボの「一事業」となり、自分の「仕事」になった。

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働くとは何か?

そうした経験から「働くことの意味」について考えるようになった。

僕は偶然にも自分が楽しいと思えること、得意なことを仕事にすることができて、趣味の延長線上のような感覚でやっているが、かたや一方で仕事が原因で鬱になってしまったり場合によっては追い詰められて自殺してしまったりする人もいる。最近だと「仕事論」や「仕事ができるヤツとできないヤツの違い」といった、僕からすれば悪質な啓発本もちらほら見かけるようになり、そうした言葉に縛られて身動きが取れなくなっている、あるいは洗脳に近いんじゃないかというくらい盲信している知人もいる。

それに、ここミライジンラボは「障害者雇用」を事業の一つの軸としている。世間でハンディキャップと見られる特性を逆に活用したり、能力開発を通して「障害」というレッテルの下に隠れた可能性を発掘したりすることで、障害の有無に関わらず誰もが「仕事を通じて自分を好きになれる」ような社会を目指している。

だからこそ、僕はこの連載を通じて「働くとは何か」について考え、議論し、同じような問いにぶつかった同世代に少しでも力になれるようなメッセージを送ることができればと思っている。

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◼︎プロフィール
中西高大(なかにし・たかひろ)

1996年生まれ。大阪大学在学中に、従来の「多様性」を推進するあり方に疑問をもち活動を開始。2020年1月 セクシュアリティ分析サービス「anone,」をリリース。10万人のユーザーにサービスを提供している。現在は株式会社ミライジンラボにてサービス運営を行いながら、同社のPRやブランディング戦略にも携わっている。

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