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【連載#5】なんとなく就職するのってそんなにいけないことですか?

「就活」という言葉を聞くと、必ず連想されるのは「自己分析」なのではないだろうか。自分は何がしたいのか、どんな人になりたいのか。内定を勝ち取るため、就職した後の人生をより充実させるために、就活生は日々この自己分析に励んでいる。

しかし、本音はどうだろうか。わずか数ヶ月、机の上で自分に向き合ってみてもそこまで納得する答えは出ないのではないだろうか。その答えを、自分の絶対的な「正解」だと思い込んでしまい、自分の本音が聞こえなくなってしまう怖さが就活にはあるような気がしている。

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そこで今回は、なんとなくインフラ系企業に就職し、10年以上勤務されている川田さん(仮名)にお話を聞いてみたい。「やりたいことがわからない」中での就職のリアルと「やりたいことを見つける」ための仕事の選び方の両方を教えてもらった。

◼︎川田さんプロフィール
2008年大手インフラ系企業のIT系子会社入社。
2013年まではSEとして親会社の開発プロジェクトに従事。2013年の異動を機にデータ分析に関する業務に携わるようになる。現在は外販を中心にデータ分析支援をメインに業務にしている。
駅もないような田舎出身。

中西:「僕らはなぜ働くのか」の連載もこれで5本目になります。

僕と同世代の20歳前半は「働くことや生きることの意味」を重視する人が多いと感じるのですが、就活のタイミングに差し掛かると、その答えを無理やり見つけようとする人が多いような気がして。もちろん、そうやって自分を分析する過程も大切だとは思っています。ただ、そんな急いで見つけようとしても、後から違和感を覚えたときに「自分はこんなはずじゃない」と考え方を変えにくくさせてしまうことにも繋がるのかなと。

そこで今回は、そうした「意味」が見つからなくても、うまくやっていくための働き方をお聞きできれば嬉しいです。よろしくお願いします。

川田:よろしくお願いします。私はシステムエンジニアとして、2008年に入社してからずっと同じ会社で働いています。

入社した理由は特にこれといって確固たるものはありませんでした。就職自体にそこまでやる気がありませんでしたし。強いていうなら地元で働きたいな、くらいの気持ちはあったので、それを軸に就職活動をしていたところ、たまたま受かったのが今の会社で。

もし留年しても卒業するまで内定はそのままにしてくれる、と言われここはなんとなくよさそうだなと。親会社もかなりの規模だったので、安定して働けそうだなとは思っていました。

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中西:なるほど、実際に入ってみてどうでしたか?

川田:それが思ったよりも厳しかったんですね。拘束時間がすごく長かったんです。入社当時は、システムエンジニアといえばもっと華やかなイメージでしたし、まさかこうなるとは。もう少しちゃんと調べていればこの職業には就いていなかったかもしれません。

今はそんなことありませんが、勤務時間より残業時間の方が長い超ブラックな環境で。終電もないので、タクシーを使って帰っていました。たまに早めに帰れることがあったのですが、逆に帰って何をしていいのかがわからなくなりました(笑)それでも22時30分の帰宅と、かなり遅かったのですが…。

中西:それは大変ですね…。そこで辞めたり転職したりしようとは思わなかったのですか?

川田:思わなかったですね。当時は新卒2年目でそこまで貯金もなかったですし、辞めてもうまく転職できるのかが不安でした。もはや仕事が忙しすぎて、転職しようという気持ちも湧いてこなかったです。体がふらふらでも会社には行かなきゃいけない…!という使命感に駆られていました。

次第に体調を崩して、2日ほど会社を休めることになったんです。そのときになって初めて「会社に行けない時は行かなくてもいいんだ」と思えるようになりましたね。一回落ち着いて、自分を客観視してみることの重要性を学びました。

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中西:そういった状況を聞くと「辞めたらいいじゃん!」と思いますが、実際の現場にいらっしゃる方は、なかなかうまくは行かないということですね。

川田:最近は時代の流れもあってすっかり改善されました。

衣食住には困らないお金が貰えていることはもちろん、自分の生活リズムを崩さない範囲で働けています。今では勉強セミナーへの参加や読書の時間も「業務」として数えてもいいなど、能力開発にお金もつけてくれるようになりましたし。最初は仕事の充実度も低かったですが、途中で親会社に出向し、データ分析の業務にも触れるようになったことで仕事の幅も広がりましたね。

中西:なるほど。ブラックな労働環境は決して肯定されていいものではありませんが、飛び込んだことでわかったこともあったということですね。

川田:なあなあで働くことは別に悪いことではないと思うので、他にやりたいこともなければまずは働いてみることをオススメします。環境が変わることで、ものの捉え方が変わることはたくさんあると思います。

例えば私は働き始めてから、大学院生の頃に向けていた授業を再度聴講する機会があったのですが、学生の頃よりもずっと面白いなと感じました。そこで勉強の面白さに気づいたら、大学に戻ってやり直す選択肢もありなのではないでしょうか。

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中西:確かにそうですね。とはいっても、やはり自分の中で軸が定まらないままでは仕事選びに不安を感じてしまう人も少なくないのではと思います。

川田そういうときは、やりたいことが見つかるように応援してくれる制度や文化がある会社に入るのも一つの手ではないでしょうか。

先ほど紹介した、うちの勉強時間を確保してくれる制度もそのうちの一つですよね。また、可能であれば大手に入ることを検討してもいいと思います。大手の方が、体力の少ない中小企業に比べてそういったサポートも充実しているところが多いですし。部署もたくさんある分、仕事の種類も豊富ですよね。異動できればいろんな仕事を経験できるようにもなるのではないでしょうか。

また、転職するにしても大手からの方が有利だったりするので、やりたいことが見つからなくてどうしよう…と迷っている人にはオススメしたいです。

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