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【連載】なぜ僕らは働くのか#3

新型コロナウイルスの出現は、僕たちの生活を大きく変えてしまった。僕のまわりでも、飲食店やイベントスペースが店を畳み出したり、フリーランスの方の生活が立ち行かなくなったり、ということが起こり始めている。そうした光景を見るたびに「いかに自分の身が守られている立場に置かれているか」ということを実感した。

確かに自営業やフリーランスは、好きなことを仕事にできるという点では「自由」を手に入れることはできるかもしれない。しかし、こういった危機的な状況が起こった場合に自分でなんとかしなければ生きていけないという、大きな責任をとる立場にも身をおくことになる。サラリーマンや公務員は、ある程度会社や国が身の安全を保障してくれるが…。

そんな「自由に働く」ライフスタイルのひとつである「パラレルワーカー」という立場から、ミライジンに関わっている岡崎拓也。今回は、なぜ慣れ親しんだ会社員からパラレルワーカーという道をあえて選んだのか、そしてその道で生きていくうえでのリアルを聞いてみたい。

◼︎プロフィール
岡崎拓也(おかざき・たくや)

元テレビ局ディレクター。教育・福祉分野の番組の制作に携わる。 代表の小林と出会ったきっかけにもなった、10代の若者を支援するNPOをはじめ、複数の事業会社や映像関係の事業までを幅広くこなすパラレルワーカー。ミライジンでは国家プロジェクトのディレクターを担当している。 障害のある人に限らず、人の能力・可能性が発揮されるには企業や社会がどうあるべきかという問いを事業を通して模索している。 最近はデータ分析関連の本を読み込み日々勉強中。他のメンバーと同じく、ゲーム好きな一面もある。最近のお気に入りはファイナルファンタジー。

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手段ではなく、目的にこだわった

中西:ザッキーさん(岡崎のあだ名)本日はよろしくお願いします。こうやって2人で真面目な話をするのは初めてかもしれないですね。

今回は、ザッキーさんのパラレルワーカーとしての「リアル」を聞きたいなと思っています。新型コロナの影響で、フリーランスや兼業されている個人の方が立ち行かなくなっているのを目の当たりにして。自由な働き方が手に入る一方で、こうしたリスクもあるのだなと痛感しました。

そこで最初の質問なんですが、5年も勤められていた会社を辞めるのは怖くなかったんですか?こういう非常事態もあるし、やっぱり生きていくうえでの収入が得られるのかを考えると、僕だったら不安だなって。

岡崎:不安はあまりなかったかも。最初はパラレルワーカーではなくて、今も勤めている教育系NPO一本で転職しようと考えてから。他に関わっているキャリア教育の会社や、このミライジンは、後からイベントやボランティアで偶然出会って意気投合したから、結果的に複数関わることになったという感じ。それに、最悪、前職の貯金があったからそれで1年間は何とか生きていけるだろうと思ってた。

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中西:いきなりバーン、とやめて独立という形ではなく、徐々に関わりたいと思える拠点を増やしていったんですね。僕のまわりでも根拠のない自信から、いきなり会社をやめて独立して、結局苦しくなって夢を諦めてしまう…なんて人もいましたが、ザッキーさんのようなキャリアの見つけ方が理にかなっているような気がしました。

パラレルワーカーになろう、と決めたのはやはり「自由がほしい」「好きなことをしたい」といった理由があったからなんですか?

岡崎:うーん。実は、そういった理由でいまのキャリアに飛び込んだわけではなくて。

人生の目的や目標が、自分と一致している人と働ければいいから、フリーランスやサラリーマンといった、何か特定の手段にこだわってやっているわけではないかな。

中西:「人生の目的や目標が、自分と一致している人と働きたい」ですか。もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?

岡崎:目的や目標はいくつかあって。例えば、その目標のうちの一つは「自己内省ができる機会をもっと世の中に増やしたい」ということ。

4年くらい前、人生についてすごく悩んだときに、夜の街をふらふらしてたんだけど…。偶然、そこで出会った見ず知らずの人に思いきってこれまでの自分の人生で経験してきたこと、いま悩んでいることを打ち明けてみたらすごく楽になれた。相手も自己開示してくれて、いろんな話を聞かせてくれたんだけど、そんなの今まで経験したことがなかったからすごく楽しくって。

こうやって自分のことを誰かに話して、自己内省を促すような機会が不足していることが、いろんな社会の問題の根幹にあるんじゃないかと考えた。そうしたら、同じ問題意識をもって活動されていた方と出会って「一緒に働きたい」と感じて入ったのが、今関わっている教育系のNPO。

他にも、10代をはじめとする若い子たちが「こんなふうに生きたい!」と夢を持てるようになるには、いい大人と出会うことが必要だと思ったからキャリア教育の会社にも関わってる。

ミライジンと仕事しているのも、そういった目標があるうちの一つだね。

中西:なるほど。メインで3つも会社や団体に関わられているんですね。まさにパラレルワーカー。

サラリーマン時代、生きる目的なんてなかった

岡崎:とはいえ僕も前職でサラリーマンをしていた頃は人生の目的はなくて。テレビ局のディレクターとして働いていたんだけど、その志望動機も「有名かつ安定した収入を得られるものがいい」だけだった。

中西:今とは真逆ですね。何がきっかけで人生の目的を考えられるようになったんですか?

岡崎:26歳のときに大きな失恋をしたのがきっかけ(笑)さっき人生についてすごく悩んだ時期があったというのはまさにそれ。

この人いいなと思って三回くらいご飯にいった人に、告白する前から「付き合うなら無理だよ」とLINEで言われてしまった。

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東大卒、有名な企業で働いていた経歴でまさかそんな振られ方するわけないと思ってたから、もうこれは人間性が問題で振られたんじゃないかって考えるようになったんだよね。

思い返せば、自分のことは一切伝えず、上辺だけの話ばかりしていて。相手の話もそんなに聞いてなかった。でも好きな人に話せる「自分の内面」が自分でわかっていなかった。そこで真剣に考えるようになったかな。

中西:恋愛から学べることって多いですよね(笑)
僕もいまの事業を始める前に、自分の人生について深く考えたことがありました。とあるNGOの代表の方のスピーチで「いま、みんなはどんな人生の『山』に登ってるの?」という話を聞いて。

それまで自分の人生がどんな山で、どんな頂上の景色を見られれば幸せかなんて考えたことがなかったのですが、その言葉がきっかけで、まずは自分の身近にあったセクシュアリティをテーマにした取り組みがしたいなと思えるようになりました。

まずは自分に問いかけてみること

中西:ザッキーさんが普段どんな思いで仕事をされているのか、少しずつわかってきたような気がします。ちなみに今は一週間のうち、どんなペースで仕事をされているんですか?


岡崎:メインで所属している3つの会社の仕事を、一日の中で均等にやるようにしてるかな。あとは並行して個人で受けている映像の仕事もやってる。


中西:僕だったら頭がパンクしてしまいそうですが…。3つの会社に所属しながら個人でも仕事を受けるやり方は、一般的な働き方だと思いつかないような気もします。やはりそれができるのは、何か特別なスキルがあるからなんですか?


岡崎:いや、スキルは全然ない。想いだけでやってる。自分の目的と会社や事業がマッチしていたら、仕事の内容にこだわりはないのも大きいかも。何でもジェネラルにこなせるぶん、ポジションが空いてたらそこに入ってうまくやろうという感じで。まあ打算的にいうと、はじめの契約分を低く見積もることで仕事を獲得しやすくする力はあるのかもしれない。


中西:なるほど…。フリーランスや独立というと、自分の身一つでやっていける何か特殊なスキルがないとダメだと思っていましたが、逆に空いてるポジションをジェネラルにこなしていくというやり方もあるんですね。

最後の質問になってしまうのですが、ザッキーさんがこれまでの経験を踏まえたうえで、働き方を考えるうえで大切なことってなんですか?

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岡崎:これまで言ってきたことにも重なるけど、やっぱりいまの仕事が「自分の人生と社会にとって意味があるか」をよく考えてみることかな。新型コロナの影響もあって、大きな会社でも立ち行かなくなることがわかった時代。

きっと「この会社は意味のあることをしている」と感じられれば、何か緊急事態が起こってもその会社は簡単には潰れないはず。

潰れない会社は、理念や目的はぶらさずに、手段を柔軟に変えられるところが多いから。例えば観光業・宿泊業が打撃を受けているけど、それでもうまくやってるところはオンラインで旅行中の擬似体験ができる取り組みをしながら体制を立て直そうとしている。

もしいまの仕事が自分の人生にとって意味がなくて、それがストレスだと感じるならまずはいろんな人にそのことを話したり、ボランティアなんかで少しずつ新しい経験を積んだりすることが大切かな。

そうすれば「人生にとって意味のあることは何か」という答えがわかるきっかけも、自然と生まれてくるようになるはず。

とはいえ、この考え方は人に強要はしたくない。自分が切羽詰まって考えたことしか意味がないと思ってるし、あくまで道筋を示してあげて見守ることが誰かのサポートにおいて重要だと思ってるから。

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