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ペルフェツィオーネという(笑いの)神に愛された馬



神馬との出会い

約2年前になるだろうか。
一口馬主として歩み出したものの初出資馬のバクマツがまるで走らず、期待馬ヘリックスは頓挫。YGGで出資した馬達もデビューはもう少し先。現在では幾分改善傾向にあるものの、当時ワラウカドのサービス面は良いとはいえずストレスの溜まる日々を過ごしていた。

一口馬主あるあるだと思うがうまくいかないストレスを出資、いわゆるポチる事で解消😇
当時の私もストレス発散のために「第三のクラブ」「隠れた素質馬」を探して沢山のクラブを巡っていた。

東サラ、ターファイト、ウイン、ユニオン、DMMなどなど…ライオンにグリーン、大樹も見たかな。
募集中の馬だったり既に活躍している馬の募集時の動画であったり、毎日沢山の動画を見て自分なりに勉強する日々。

そんな中で殆どノーマークだったローレルも見てみるか…(とはいえローレルゲレイロしか知らんけど…)と覗いてみたところ
そこにヤツは居た。

クレオールの21。ここに辿り着くまでに毎日沢山の歩様動画を見てきたが、自分的にはこの馬が一番だと思った。それもぶっちぎりで。

とにかく歩きが機敏でしなやか。馬格も月齢を考えると悪くない。トモの容量もありそうで、ケチをつけられるところがない、とその時は思った。




今なら血統表を見ただけで弾いていたかも?

普通の鹿毛、流星などもない地味な見た目ではあったし、当時はいまいち父ルーラーシップにもそこまで良いイメージはなかった。
何よりコヤツの母父は「社台の白い悪魔」というガンダムみたいなカッコいい汚名を与えられてしまったチチカステナンゴ。

母系はちょくちょくオープン級のステイヤーが出ている、フランクアーギュメント系。
この牝系で一番有名な馬と言えば、ラフィアン総帥岡田繁幸が3億2000万という超大金をはたいてセリ落としたカームだろう。

岡田総帥が「サイレンススズカの再来」とまで吹いたものの骨折の憂き目に遭ったのもあり、芝ではまるで走らず…所謂「セレクト高額馬の大失敗例」としてよく名前の挙がる馬である。

この二年で血統についても勉強してきたが、改めて血統表を眺めてみると「よくこの馬に出資したな…」という感想しか出てこない。

元気の塊!頓挫知らずの強靭な肉体

この馬は募集中の頃は体調の良さがセールスポイントだった。何しろ昼夜放牧でも体調不良になることもなく、一頭だけいつも毛ヅヤがピカピカ。地味な見た目であるが遠くからでも本馬は見分けがつくとの評価だった。

結果としてこの頑健さは現在でも本馬一番の売りであり、更新内容を2年分改めてチェックしたが小さな頓挫すらなかった。延々と、順調にトレーニングを積み続け、レースで走り続けてきた。
それどころか希薄な前進気勢を補うためとはいえ、外厩では異例とも言えるトレセンでの追い切り級の調教を数ヶ月に渡り施されたが元気にこなし切った。同世代でここまで調教を施された馬はなかなかいないと思う。

これだけ強靭な馬体は、当然一口馬主的にはありがたい。無事是名馬ともよく言うが正にこのタイプである。


発現していく気性難(?)…


話を戻すとクレオールの21は秋にはパッショーネという育成牧場へ移動。順調にトレーニングを積んでいく。パッショーネ同期にはあのキタサンブラックの弟、シュガークンもいたらしい。
一緒に併せ馬なんかもしたのだろうか?迷惑を掛けなかったか幾分心配ではある。

育成初期の段階から体力の高さを褒められたクレオール21。管理予定の杉山佳明師は「キセキのようなタイプ」とべた褒め。この頃の私はこの世代のエースは間違いなくこの馬になるだろう、いやなって欲しいと願っていた。

年末、ローレルからのスペシャルレポートがあった。パッショーネで頑張るクレオール21。
調教をつけてくれているのは若い可愛らしい女の子だった。クレオール21はこの女の子が大好きで、他の馬がピリッとするようなタイミングでも甘えっぱなしのようだ。これが予兆の一つになるとは、この時は誰も想像出来なかったに違いない。

歳が明け2歳になると、胸囲は180センチ、馬体重も480キロ近くまで成長。胴長でいかにもステイヤーっぽいが、体高は低い。母父チチカステナンゴがかなりの短足馬だったようで、その影響もあるだろう。たまに私はXで「ダックスフンド体型」と悪口を書いている。言うほどダックスフンドでも無いとは思うが…
調教は順調にこなし、体力や運動能力の非凡さを見せつけ、杉山佳明師も「今の所欠点らしい欠点が無い」と断言する。その言葉を体現するかのようにクレオール21には「ペルフェツィオーネ」
意味:「完璧」という馬名が与えられた。
今になって思うととんでもない話である。


完璧という馬名を与えられたペルフェツィオーネは笑いを熟知しているかのように、翌月から怪しい部分を見せ始める。

(4月)
>「馬房の隅っこで寝るのが好きで、ときどき寝違える(起き上がれない)事があります。何度か起き上がるのを手助けしているうちに、自分だけで起き上がれる位置でも、起き上がれないふりをしてきます。そんなとき、『どうしてくれるんだ』と言いたげな表情をして助けを求めてくるように、よくわからない被害妄想みたいなものを持っているようですが、無視していれば自分で起き上がるので問題ありません。面白い奴です。

>「これまでのハッキング調教では、ほかの馬と比べると汗をあまりかいていなかったので、もっと身体をしっかりと使わせるような乗り方をし、特に腹筋を使った走りをさせるようにしました。そうすると、ちゃんと汗をかくようになり、その身体の使い方のままで坂路を登ると、手応えに変化が出てきました。鞍上が気を許すとすぐに腹筋を使わない楽な走りに戻るので、馬自身がさぼりながら走ってしまっていたようです。力が付いて坂路での手応えが変わるのを待っていたけど、結局はさぼられていただけだったようです。すいません…」


少しずつ本性を見せ始めたペルフェツィオーネ。しかしまだこの頃は面白い馬やなぁ!とワイワイはしゃいでいたように思う。(それは今もか)

競馬界の奇行種へ…


(6月)

>「追い切り調教を開始したので、追い日以外のハッキング調教の距離を縮めて、体調の調整に充てています。強い調教をやればやれるほど動けるようになってきたし、走りへの集中力も増してきました。でも、調教時以外は相変わらず女性スタッフにデレデレしていますが…」

>「自らで全身をしっかりと使って走ってくれるようになったので、最近はどのスタッフが乗ってもしっかりと汗をかくほど動いてくれるようになりました。なんか最近は調教で妙に真面目になっていて、それは良い事だけど、さぼり癖があって自堕落だった頃が懐かしく、ちょっと寂しい気持ちにもなります」

>「真面目になってからは、ハッキング調教でもハミをしっかりととって、ちゃんと汗をかいて走れるようになりました。真面目になっても元気は一杯で、坂路でのスピード調教でも走りや息遣いに余裕があって、良い状態に仕上がりつつあります。ただ、女性スタッフが馬装をすると、うっとりとして馬っけを出すようになっています。騎乗すれば治まるので走りに影響はありませんが、その元気はいらないです」

ここらへんで調教では真面目になってきたと一安心していた。女の子が好きって「らしい」キャラだなぁと軽く思っていた。しかし後で判明するがペルフェツィオーネ、牝馬には一切反応しないらしい。とにかく人間の女の子にだけ馬っ気を出すようだ。前世は人間のおじさん説が爆誕した瞬間である。


>「もうひと段階ペースを上げた調教に進めていますが、走りがスムーズでとても良い感じです。ただ、追い切り予定日の朝に馬房内で左前肢を落鉄し、追い切り日を変更した事が2度も続きました。周りの雰囲気や追い切りの前日は軽めの調教だけにしている事で追い切りをすると気がついて、蹄鉄を脱げば走らなくて済むと思ってわざとやっている気がしてなりません。馬房内でどうやって自らで蹄鉄を外しているのか判っていないので何も対処できていませんが、綺麗に落鉄してどこにも怪我を負わないので問題ないでしょう。何度も装蹄師に来てもらわないといけないので迷惑していますが…」

出資者界隈では伝説の蹄鉄外し事件も6月の事だった。あとで判明した事であるが、壁に蹄を引っ掛けて器用に外したらしい。
なんとも狡猾な馬である。

>「蹄鉄を脱いでもすぐに装蹄されて追い切りが行なわれる事に気が付いたのか、もう自分で外さなくなりました。最近はさらに真面目になっていて、追い切りではスピードの出し入れがオートマチックに自由自在で、気持ちが悪いほど操作性が高まっています。よく考えると、向かいの馬房にいたローレルロイズが函館に移動してから真面目ぶりが増しているので、ふざけた事をしているとどこかに連れていかれると危機感を持ったのかもしれません。

ドナドナされる恐怖からか真面目になったペルフェツィオーネ。しかしすぐに彼も函館に輸送され、早期デビューを目指すことになる。

>杉山(佳)師「試験での騎乗を任せた川又騎手によると『ゲートに入る前から出た後まで完璧な内容だったし、体力もこの時期の2歳馬としては十分すぎるくらい備わっている』との事でした。ここまで何の不安もなく、ゲート試験は一発合格。私の中では『もう信用できるのでは』との思いと、『まだ猫を被っているだけでは』←🤣🤣🤣
との思いが交錯しています」

>入厩からここまで、信じられないほど順調にきました。レース当日も優等生でいてくれればよいのですが…。でも、調教から付きっきりの川又騎手が鞍上にいる事で真面目にこなしてくれると思っています。身のこなしの柔らかさや、ちょっと変わった気性面を含めて、ワクワクさせてくれる馬なので、前評判の高い馬たちを相手にどれだけの走りを見せてくれるのか楽しみにしています

杉山先生、良い勘してますねぇ!

ペルフェツィオーネは7/9函館芝1800mでデビューしたが、あのレガレイラ、後の重賞馬セットアップ、白毛馬カルパなど濃いメンツと激突。
前進気勢に乏しく、また内ラチにぶつかりそうになるなど若さを見せ7着に敗れた。

まるで力を出していないため元気いっぱい。すぐに追い切りを再開するなど順調に調教され、元気にこなしていくペルフェツィオーネ。しかし9/4の札幌芝1500mでも7着敗退。ここで鞍上川又賢治から反応のズブさからダートの方が良いかもしれないと言及されるが、いざ挑んだダートはしなやかさや軽やかさが持ち味のペルフェツィオーネにとって、まるで適性がなく12着惨敗。
川又騎手「芝の方が良いですね」
……川又ァ!!

とにかく真面目に走らない。パドックでは他馬と比べても馬っぷりの良さを感じるし実際ポテンシャルは高いはずなのだが、走ってくれない。
気性の問題で走らないというのはある意味一番キツい。この頃から前世はニートエロおじさん説が出てくるようになった。


長くなったので2つに分けようと思います…(続く)

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