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【日経新聞をより深く】英スナク新内閣、堅実路線 ハント財務相ら重要閣僚続投~政権への市場の判断~

1.英スナク新内閣、堅実路線

25日に就任した英国のスナク首相は、同日午後から組閣に着手した。トラス前政権で減税策の撤回と財政再建を担ったハント財務相は留任した。ウクライナ支援を手掛けるクレバリー外相やウォレス国防相など、そのほかの重要閣僚も軒並み続投する。政権運営の安定を優先した手堅い布陣となった。

スナク首相は25日の就任演説で「言葉ではなく行動で国を一つにする」と強調。「経済の安定と信頼をこの政府の議題の中心に据える」と訴えた。市場の混乱を生み出したトラス前首相の減税策については「経済成長を求めた」点で間違っていないとした一方、その修正にすぐにとりかかると語った。

その喫緊の課題を担う財務相には継続性を重視してハント氏を留任させた。ハント氏はトラス政権下で年450億ポンド(約7兆6000億円)規模の減税策のうち7割の撤回を手掛けた。月末に予定するさらなる財政収支の改善策をとりしきる。

(出典:日経新聞2022年10月26日

併せてフィナンシャルタイムズの記事も読むことをお勧めします。

市場の反応はどうでしょうか。トラス元首相の経済政策によって混乱し、一番注目されたのは、国債市場でした。

(出典:TRADING ECONOMICS/英国国債30年物利回り)
(出典:TRADING ECONOMICS/英国国債10年物利回り)

2.各国政権への市場の判断

中国では新指導部が船出しましたが、香港ハンセン指数が大幅に下落しました。

(出典:TRADING ECONOMICS/香港ハンセン指数

23日に発足した新指導部への評価は24日の株式市場です。ハンセン指数は急落し、前週末比6%安となりました。ハンセン指数は2009年4月以来13年半ぶりの安値を更新し、1日の下落率としては08年11月以来の大きさでした。

アリババは11%安、テンセントも11%安。ハイテク関連銘柄で構成するハンセンテック指数も1割近く下げ、最安値を更新しました。

人民元も下落しており、15年ぶりの安値を付けています。この背景には米中の金利差があります。中国経済の悪化に対して、さらに金融緩和をするのではないかという観測があるためです。

(出典:TRADING ECONOMICS/ドル-元の為替推移

イタリアでも新政権が誕生しました。イタリアで最も懸念されるのは、金利です。金利が上昇すると、イタリア国債の価格が下落し、財政危機となります。

(出典:TRADING ECONOMICS/イタリア10年物国債金利

心配していた金利は、落ち着いています。これは、現段階ではおおむね、新政権の政策を受け入れているということではないでしょうか。

現在、イタリアの新政権はECBの国債購入を止めるわけにはいかないので、ECB、EUとの調和を保とうとしています。しかし、今後、ECBやEUとの亀裂が走れば、財政危機が再燃してくるでしょう。今は、落ち着いているが、今後は要注意と言えるでしょう。

中国の新指導部に市場は警戒しています。イタリアの新政権、英国の新政権には少し安堵という状況です。

しかし、イタリア、英国共に財政とインフレの問題を抱えており、新政権の今後の政策に注目です。

3.米国中間選挙

新しい体制はどうなるか。世界で最も注目されるのは、米国中間選挙です。今回の中間選挙は米国の歴史で最も分岐点になる選挙ではないでしょうか。

下院はおそらく、共和党が過半数をとると思われます。問題は上院です。上院は接戦となっているようです。ただ、最後の最後に来て、インフレ対策へのバイデン政権への不満が出ているようです。上院も共和党がとる可能性も出ています。

もしも、上下院共に共和党が過半数を占めることになると、バイデン政権は法案が通らなくなります。

EU圏、英国、米国共に苦しんでいるのはインフレです。このインフレの根幹にある一つがウクライナ戦争です。

米国の中間選挙で共和党が上下院で勝利した場合、インフレの元凶であるウクライナ戦争への見方が変わるかもしれません。バイデン政権は、ひたすらウクライナ支援を訴え、戦争が長引く方向です。結果、インフレは収まりません。そのため、共和党、特にトランプ元大統領支持の候補が勝利していった場合には、ウクライナ戦争への支援が見直されるかもしれません。

一方、中間選挙で民主党が勝利した場合には、ウクライナ戦争は長引き、インフレの要因も長く続く可能性が高くなります。

米国中間選挙の結果は11月8日です。この結果を受け、市場はどう判断するのでしょうか。予測合戦も激しくなり、選挙前も市場に影響を与えていくことでしょう。

様々な見解が出てくると思いますが、何よりも市場に最も素直な反応が現れます。投資の為だけではなく、世の中の流れに対する反応として、市場を見ていくことも大切な時です。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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