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2024年も引き続き重要なドルー円について

【巨大な市場の通貨売買】

2020年代の金融・経済で最も重要なのは、ドル‐円の通貨レートです。通貨の国際移動の金額(=通貨の売買の金額)が、貿易決済よりも遥かに大きく、円‐ドルでは1日に150兆円はあるからです。これは1日に150兆円は円が海外に行ったり来たりしているということです。

ドル買いの超過は円安ですが、円の海外流出を意味します。円買いの超過は円高ですが、円が海外から戻ってきたことを示します。これが金融・経済を最も大きく動かしています。米ドルの売買は、1日で6兆6410億ドル兆ドル(約957兆円)もあります。6.6兆ドルが日々売買されています。(Wikipedia)

通貨市場では変動リスクを避ける「通貨スワップ」のデリバティブが大きくなっています。

通貨スワップ(通貨交換)では、契約後の「通貨レートの変動による損=カウンターパーティーの利益」になります。

ドルの全体ではドルが1日1%(1.4円)動いても、957兆円×1%≒10兆円の利益、または損です。ドルー円のスワップでは、1%(1.4円)動いたとき、1日で1.5兆円の損か、または利益です。

通貨の売買市場は世界化したマネーの動きと金融取引を示しています。通貨の変動が株価と金利も含んで、米国経済と日本経済を決める要素で最も大きいものです。

円国債の売買は1日で約40兆円です。ドル‐円の通貨の売買が150兆円/円であり、国債の3.8倍。通貨の円の売買は、債券で最も大きな国債の約4倍も大きいのです。東証の株の売買は4兆円/日です。通貨の売買は、株の売買の40倍以上も大きいのです。

【2021年-2023年のドル‐円の為替】

コロナ後の2021年から2023年はドル高、円安でした。ドルは円に対して3年で46%上がり、ピークでは円はドルに対して46%下がりました。(2023年12月28日執筆時点141円)

(出典:TRADING ECONOMICS/ドル‐円為替

このドル‐円の為替を決める要因で最も大きなのは日米金利差でしょう。

青の線が日米金利差、灰色の線がドル・円の為替レートです。全体的に日米金利差の拡大は円安、金利差の縮小は円高をもたらしています。

①米国の国債・債券の金利が高くなって円金利が低いと、「ドル買い/円売り」が増えて円安になります。
②逆に、米国の金利が下がり、円金利が上がって、日米金利差が縮小に向かうと、「ドル売り/円買い」が増えて、円高になります。

これは、マネーの国際的な流れとして、貿易額の100倍の売買がある外為市場では自然なことです。

2020年以降を見てみましょう。2020年の日米金利差は0.5%付近と小さいものでした。この時のドル‐円為替レートは1ドル105円でした。

2020年3月から米国FRBはインフレ対応の利上げをしましたが、日銀は金利を上げませんでした。このため、日米金利差は2021年には1.5%に、2022年には1.5%から3%に、2023年も3%が続きました。

この結果、2021年の1ドル105円は、22年には120円から150円、23年の現在は141円です(12月28日)。150円から142円台に下がったのは、米国のインフレの低下(3%台)からの米国の長期金利の下落傾向からです。

米国のFF金利(短期金利)は5.25%から5.5%目標と変わってはいませんが、10年債の金利(長期金利)は2023年10月から4.0%や3.8%へと約1ポイント下げています。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国10年債金利)

【2024年の金融の予想】

問題は2024年の日米金利差がどうなるかです。

まず、米国からですが、2024年は大統領選挙の年です。普通であれば現職の再選のために財政の拡大と、金利低下の傾向があります。株価を上げて、国民に好況感を与えるためです。

ところが今回は、米国メディアでもバイデンの負け、トランプの勝利が予想されています。バイデンは上下両院のねじれ議会の為、財政拡大(ウクライナ支援、イスラエル支援を含む)の道を閉ざされています。

唯一残っているのは、期待インフレ率が低下したとして、FRBが利下げをすることです。2023年12月14日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、パウエル議長は、23年12月の利上げ停止と共に、24年の利下げを示唆しました。

金融市場は2024年は3回利下げ(0.25%×3回=0.75%)を「織り込んで」、12月の米国株を買い越して15%も上げています。世界の金融市場では米国株は史上最高値、米国経済は好調とされています。日経平均も3万3500円に上げています。

日本政府と証券会社は2024年からのNISA(金融運用益120万円までは非課税:最長5年)は、世帯からの米国株買いを煽っています。(政府は米国経済を支えるという意思でしょう)果たして、岸田首相は政府がやっていることの意味を理解しているのかは怪しいです。

いずれにしても、2024年の米国金利の低下傾向を織り込んだ株価上昇です。

2024年の米国の金利は0.75%の低下傾向で、日本の金利は春闘の賃上げの後は短期金利の0.25%の利上げの可能性が高いのではないでしょうか。

このことから、日米金利差は2024年には1ポイント縮小して、現在の3%から2%になる可能性が高いでしょう。この時の問題はドル‐円の為替レートです。

日米金利差が縮小してドル高‐円安になることはありません。その為、可能性としては1ドル130円へ、もしかすると120円に向かう円高となるのではと予想します。

円高とはキャッシュフローでは「ドル売り/円買い」の超過です。2020年以降の3年間、大きくドルを買い越してきた円が逆に「ドル売り越し/円買い」の超過です。2020年以降の3年間、大きくドルを買い越してきた円が逆に「ドルの売り越し/円の買い越し」になることです。

世界の金融市場が「ドル売り/円買い」になるとどうなるでしょうか?

①日本株は円高になると、下げる傾向があります。
②ドル買いで支えられている米国株は日本株より大きく下がるでしょう。

2020年以降の米国株は金利が上がった米ドルを日本を筆頭にして世界が買ってきたから上がったのです。2020年のS&P500(米国の代表的500社の加重平均株価)は3000ドルでした。現在は4792ドル(2023年12月28日)です。3年で160%です。このうち30%の部分は米国以外からの米国株買いの上昇と思われます。

「ドル売り」になるということは、米国債と米国株が売られるということです。

2024年3月頃から、FRBの短期金利の利下げにも関わらず、長期金利は上げ、S&P500の株価は30%下落に向かって進む可能性があります。

2024年3月、6月とトランプ氏の当選の可能性が順次高まると、共和党保守派の伝統的は政策である「緊縮財政への予想」から米国株を上げる要素は少なくなるでしょう。

米国の対外債務(30兆ドル:4200兆円)の、2021-23年の金利上昇からの利払い(推計1.2兆ドル:168兆円/年)が困難になってきた米国はトランプ氏がドル切り下げを行う可能性があります。これは第二のプラザ合意となりますが、トランプ氏が大統領となれば、可能性はかなり高いでしょう。これは2024年の金融面での材料からくる金利やドル安の話とは別のテーマですが、大きな要素です。

以上のことから、コロナパンデミック以降の世界の超金融緩和からの株高は、2024年には終わりを迎える可能性が高いとみる必要があるのではないでしょうか。

2024年は世界で重要な選挙がある年です。米国、ロシアでは大統領選挙、インドも総選挙、台湾は総統選、EUは議会選挙、インドネシアは大統領選、メキシコも大統領選です。

世界が大きく動いていくかもしれません。金融面では円高、そして米国株は下落していくものと予想します。新NISAは米国株一色の様相ですが、果たして大丈夫でしょうか。

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