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22年の金需要、11年ぶり高水準 インフレで個人買い加速~ゴールドとお金の関係~【日経新聞をより深く】

1.22年の金需要、11年ぶり高水準 インフレで個人買い加速

世界で金(ゴールド)の需要が高まっている。国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2022年の金の総需要は4740.7トンと前年比18%増加。11年ぶりの高水準となった。世界的なインフレやウクライナ危機などを受け、個人が「安全資産」とされる金に注目し、地金や金貨を買う動きが目立った。

中央銀行による金の購入も前年の2.5倍に膨らんだ。中国やトルコでの購入が目立った。金はソブリンリスク(政府債務の信認危機)が少ない「無国籍通貨」としての側面もあるため、インフレ対応やロシアによるウクライナ侵攻を契機に外貨準備資産として保有する意味合いが強まった。

中銀は金を市場に放出せず保有し続ける傾向にあるため、中銀の純購入は市場の需給を引き締め、相場の押し上げ圧力となる。マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表は、金準備100トンの積み増しは国際価格に1トロイオンス40ドル程度の上昇圧力となると試算する。

宝飾品の需要は前年比3%減った。新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込む「ゼロコロナ」政策を進めた中国で、外出機会が減った個人が宝飾品の購入を控えた影響が大きい。一方、原油価格が高水準で推移しオイルマネーで潤った中東では、アラブ首長国連邦(UAE)が前年比38%増、サウジアラビアが14%増と伸びた。

現物の金が裏付けとなる上場投資信託(ETF)からは110.4トンの金が流出した。流出は2年連続だった。

WGCでは今後の金需要について、22年に好調だった地金や金貨から、23年はETFへとシフトしうるとみる。インフレが沈静化すれば個人の地金や金貨の購入はやや落ち込むとみられる一方、金利の低下が金利のつかない金の投資妙味を高め、機関投資家らによるETF買いを勢いづかせる可能性があるためだ。

金相場の国際指標となるニューヨーク先物価格は2月上旬、一時1トロイオンス1975ドル台と22年4月以来の高値をつけた。ただその後は米国で利上げ局面が長期化するとの警戒が広がったことが売りを誘い、足元は同1850ドル前後で推移する。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「米国では(目先は利上げの長期化の警戒が広がっても)24年には利下げが行われる確度が上がっている。金相場の下値は限定的で堅調な動きとなりそう」とみている。

(出典:日経新聞2023年2月19日
(出典:日経新聞2023年2月19日

金(ゴールド)に注目が集まっています。中国をはじめ、世界の中央銀行も保有量を増やしています。

この背景の一つには、パンデミック以降、世界中が行った大金融緩和によって、通貨の価値が下落しているという側面があるでしょう。そこで、今回は現代で使われている通貨である紙幣の歴史を見ておきます。

2.お金とは?

世界最初の紙幣だといわれているのは、11世紀ごろ中国で発行された「交子(こうし)」だといわれています。

(出典:Wikipedia

宋の時代には多量の銅銭が鋳造され、流通していました。しかし、それでも経済の発展に追い付かず、不足していました。その不足を補うために四川地方では鉄銭を鋳造しました。鉄は銅より安いので、鉄銭10枚が銅銭1枚に相当しました。四川では薄絹1匹を買うのに、130斤の重さの鉄銭が必要でした。重い鉄銭を多数持ち歩かなければならない不便さを解消しようとして、成都の16軒の富裕な商人たちが組合を作って交子という紙幣を発行しました。

一時はかなり流通したようですが、しかし最終的には濫発が続き、廃止されています。

他にも、古代のエジプトでは穀物を蔵へ預ける際に発行されたパピルス製の預かり証が紙幣のような役割を持ったことがありましたが、あまり定着せず、ローマ時代には断絶しました。

一方、ヨーロッパでは、ルネサンス期に入り、商業が活発になってきました。多くのお金や物品が行きかうことになりました。当時のヨーロッパのお金の主役は金貨でした。本物のゴールドが金貨として流通していたのです。

しかし、問題は安全性でした。モノを買うために大量の金貨を持ち歩くのは、かなり物騒です。また、家に大量の金貨を置いておくのも不安です。現代人も、自宅に何千万円も置いている人は少ないと思います。

そこで、当時の商人たちは、ゴールドスミスと呼ばれた金細工職人に金貨を預けることを思いつきました。スミスとは、本来「職人」という意味の言葉です。金細工職人は王侯貴族などのために金を加工して装飾品や王冠を作る仕事をしていた人たちですが、彼らは職業上かなり大きくて頑丈な金庫を持っていたのです。商人たちは手数料を払い、ゴールドスミスに預かり証を発行してもらうことで、金貨を預かてもらうことにしました。

そうすると、今度はその預かり証が通貨として使用されるようになってきました。何かの支払いがあるたびにゴールドスミスのところに行って金庫を開けてもらって金貨を取り出すのは大変です。そこで、預かり証をそのまま渡して支払いとみなすことが増えていったのです。これが現代の紙幣の原型といわれています。この預かり証を金匠手形(ゴールドスミスノート)と呼びました。

(ゴールドスミスノート)

預かり証がそのまま通貨として使用することが一般化すると、ゴールドスミスの金庫には金貨入りっぱなしの状態となります。実際に預けた金貨を取りに来る人は滅多にいないからです。そうすると、ゴールドスミスの中には悪知恵の働く人がいて、勝手に貸し付けるようになりました。どうせ誰も取りに来ないわけですから、貸し付けてもわからないので、それで利息を取ろうと思ったわけです。

貸し付ける際は金貨を貸し付けるわけではなく、実際に渡すのはゴールドスミスノート(金匠手形)です。これであれば、紙を印刷し、サインすればよいわけですから、無限に作ることができます。つまり、金庫の中には100万円しかなくても、1000万円でも、1億円でも好きな金額のお金を貸し付けることができたのです。

ほとんど詐欺のような手法ですが、こうして無限にゴールドスミスノートが発行されたおかげで、お金が十分に流通するようになったのです。金貨だけを通貨だとしていた時代は、ヨーロッパ中の人々に十分に供給することはできませんでした。しかし、ゴールドスミスノート、つまり紙のお金が大量に出回ったことで、誰でもお金を手にすることができるようになり、ますますヨーロッパの経済は、発展していきました。

やがて、こういうゴールドスミスの動きは、各国政府の統制下に入ることになります。これが、現在まで続く中央銀行制度の始まりです。どこの国も硬貨は政府が発行するのに対し、紙幣に関しては中央銀行が印刷して発行しているのは、こういう歴史的背景があったからです。

3.現代のお金

ゴールドスミスの発行していた預かり証、つまりゴールドスミスノート(金匠手形)から現在の紙幣が始まったわけですが、それはゴールドスミスが本物の金貨を大量に持っていたから信用されたわけです。

「この紙を持っていけば、本物の金(ゴールド)と換えてもらえる」と信じていたからこそ、ただの印刷された紙が通貨になったわけです。

このように、本物の金(ゴールド)によって貨幣の値打ちが保証されている通貨制度を金本位制度といいます。そのため、20世紀の初頭まではヨーロッパ各国政府も、十分とは言えないまでも、金(ゴールド)を保有していました。しかし、二度の世界大戦でどこの国も資金確保のためゴールドを放出してしまい、戦後は金本位制を維持するだけの金(ゴールド)を保有できなくなりました。

第二次世界大戦後、米国が世界最大の金保有国になっていました。そして、米ドルを基軸通貨とする、ブレトンウッズ体制がスタートしました。米ドルを持っていれば、理論上は金(ゴールド)と交換してもらえるということです。こうして、世界は金本位制を保ち続けました。

ところが、米国でも米ドルの発行量が増え、金の保有量が減少してきました。そして、1971年米国は突然、ドルと金(ゴールド)の交換(正しくは兌換)を停止すると発表しました。

当時のニクソン大統領が実施した措置で、ニクソンショックと呼ばれます。ここから、各国通貨の価値を裏付けるものがなくなり、世界のお金はその時々の需要と供給のバランスで決まる、変動相場制に移行することになりました。

それ以来、世界の中央銀行は金(ゴールド)の保有量を考えることなく、事実上無限のお金を刷れるようになりました。いや、実際には印刷すらなく、デジタル上の数字の桁を増やすことができるようになりました。

これにより、大量のマネーが市場に流れ込むことになり、今や実体経済の数十倍もの金融市場が形成されるに至ったのです。

そして、特にコロナパンデミック以降は世界中が金融緩和で市場にお金を供給しました。それは、お金を価値を下げる行為でもあります。通貨の価値が下がることで、相対的に金の価値が上がっているといえます。

そして、今、通貨への信頼が揺らいでいるのかもしれません。そこで、「無国籍通貨」の金の価値が見直されています。

これは、基軸通貨であるドルへの信認の低下ではないでしょうか。世界がドル離れをするとき、その資産の行先の主な行先の一つが金(ゴールド)となっています。

世界の中央銀行も、個人も金(ゴールド)の保有量を増やしています。個人的には、まだ金(ゴールド)の価値は上がるのではないかと思っています。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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