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【日経新聞をより深く】クレディ・スイス、最大で6000億円増資 投資銀部門を分社化~欧州投資銀行の厳しさ~

1.クレディ・スイス、最大で6000億円増資

経営不振に陥ったスイスの金融大手クレディ・スイス・グループは27日、最大40億スイスフラン(約6000億円)の増資や証券化事業の売却などを柱とする再建策を発表した。投資銀行部門を縮小し、強みの富裕層向けビジネスを中心に収益安定化を図る。今後は相次ぐ不祥事で表面化したリスク管理やガバナンス上の問題点の解消が課題になる。

増資ではサウジ・ナショナル・バンクが最大15億スイスフランを引き受け、9.9%を保有する株主となる見通し。中核的自己資本比率は9月末の12.6%から増資後に14%まで上昇する可能性がある。

現時点でもスイス当局の要求水準(約10%)を上回るが、再編費用などを想定してさらなる資本増強を決めた。ディクシット・ジョシ最高財務責任者(CFO)は記者向けの電話会見で「資本に関するいかなる疑念も解消し、今後の事業再編の基盤になる」と述べた。

27日、クレディ・スイス株は急落し、一時前日比16%安となった。1株利益希薄化への懸念が先行したとみられる。

事業構成の抜本的な見直しも発表した。優良顧客を持つ富裕層向けビジネスや資産運用業務などに注力する。57%程度だった売上高全体に占める比率を関連するトレーディングなど一部市場部門も含めて86%に高める。

一方で利益が振れやすく必要となる資本も大きい投資銀行部門は縮小する。証券化事業の一部を米アポロ・グローバル・マネジメントが率いる投資家集団に売却。企業の株式・社債発行関連やM&A(合併・買収)の助言などは23~24年に「CSファーストボストン」として分社化する。本社を米ニューヨークに置き、クレディ・スイスとの長期提携及び第三者の資本参加を想定する。

全体の従業員は3年で2割弱減らす。

2022年7~9月期連結決算の最終損益は40億3400万スイスフランの赤字となった。赤字は4四半期連続。市場環境の悪化で投資銀の苦戦が続いている。米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引に関わる巨額の損失を計上し、英金融会社グリーンシル・キャピタルと関連するファンドも閉鎖した。

(出典:日経新聞2022年10月28日

窮地に陥っているクレディ・スイスが再建案を出してきました。今後、株価はどう動くでしょうか。

そもそも、名門のプライベートバンクはなぜ、窮地に陥ったのでしょうか。

2.クレディ・スイス破綻の噂の理由

クレディ・スイスの業績は良くありません。2022年の第3四半期の「Earnings Release」(https://00m.in/DEihE)を確認すると、22年4~6月期の税引き前損失が11億7300万スイスフラン(約1734億円)で、四半期ベースで3期連続の赤字です。

クレディ・スイスの業績悪化の要因は大きく4つあると思われます。

一つは、市場環境です。今年に入ってからの金利上昇や株価の下落など世界的に不安定な市場環境が続いています。そのため、顧客企業が資金調達やM&Aなどに慎重になっています。

二つ目に日本の野村ホールディングス(HD)なども損失を計上した米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメント関連で21年に50億スイスフラン(約74億円)と多額の損失を被ったことです。

三つ目は21年3月に共に1兆円規模のファンドを運用していた英国の金融会社グリーンシル・キャピタルが破綻し、ここでも損失を計上しています。

四つ目に経営者の相次ぐ辞任です。20年2月に同じスイスのライバル企業であるUBSに移籍した元幹部を秘密裏に内定していたスキャンダルが発覚。ティージャン・ティアム元CEOが引責辞任。その後任のトーマス・ゴットシュタイン氏も今年7月に退任し、経営コンサルティングファーム、マッキンゼー出身のリストラの専門家であるウルリッヒ・ケルナー氏が就任しています。

21年4月に英ロイズ・バンキング・グループCEOとして金融危機後の再建を果たした手腕を買われてアントニオ・オルタオソリ氏が会長に就任しました。しかし、22年1月にスピード辞任。新型コロナウイルスの感染予防のための隔離のルールを守っていなかったことや、社用プライベートジェット機の私的利用などが批判されたためですが、実際には幹部との対立もあったと言われています。

この様に経営陣の相次ぐ後退も、厳しい市場環境に対応しきれなかった要因といえるでしょう。

この4つの要因で悪化していた業績ですが、破綻の噂のきっかけになったのは、フィナンシャルタイムズの「9月30日、同社経営陣が財務健全性に対する懸念を解消するため、株主らと接触している」という報道でした。

また、ウルリッヒ・ケルナーCEOが10月27日の経営変革発表を前に行員に配った「今が正念場である」というメモが明るみに出て、破綻の懸念が強まりました。

今回の経営再建案を発表したクレディ・スイスの今後は、世界の金融にも影響を与えます。

3.クレディ・スイスの今後

米ゴールドマン・サックスも市場環境の変化に合わせて、組織再編を試みています。

世界的なインフレが、金利上昇を促しており、ECBも2会合連続の大幅利上げ(0.75%)を実施しました。

金利の上昇に対して、企業の資金調達需要は落ち込み、投資銀行部門の収益が悪化することは当面続きそうです。

中でもヨーロッパの金融機関においては、変動の激しい市場環境に翻弄されそうです。クレディ・スイスが今回のリストラ案で規模は縮小し、さらに、人材の流失が激しくなると思われます。

ただ、クレディ・スイスが破綻するということは、無いと思われます。なぜなら、最後は国が救うということになるからです。

投資銀行はこれから厳しい環境での経営を余儀なくされそうです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】


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