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【日経新聞をより深く】ゴールドマン、3部門に組織再編 脱・投資銀依存へ~金融危機はあるか~

1.ゴールドマン、3部門に組織再編 脱・投資銀依存へ

米金融大手ゴールドマン・サックスは18日、大規模な組織再編を実施すると発表した。主力の投資銀行と市場運用の業務を1つの部門に統合するなど柱となる事業を3部門に集約し、富裕層向けなど比較的収益の安定したビジネスを強化する。厳しい収益環境の継続を見据え、長年の課題だった景気・市況に左右されやすい事業モデルからの脱却をめざす。

これまでは①投資銀行②市場運用③資産運用④消費者・富裕層向け――という4つの業務を柱にしてきた。このうち投資銀と市場運用を統合して「グローバルバンキング&マーケッツ」部門、資産運用と消費者・富裕層向けを統合して「アセット&ウェルスマネジメント」部門とする。資金管理や決済サービスを提供するトランザクションバンキングなど法人や機関投資家向けにデジタル金融サービスを提供する「プラットフォーム・ソリューションズ」部門と合わせ、計3部門に再編する。

(出典:日経新聞2022年10月19日

ゴールドマン・サックスは、収益力強化のために、組織再編を推し進めます。これは、この先に来る嵐に対する準備でしょうか。

コロナによる大金融緩和、財政出動で株価は上がり、ゴールドマン・サックスの収益も順調でしたが、FRBが金融引き締めに転じ、株価は下落。ゴールドマン・サックスも市場から上げていた利益は急減しました。

そこで、安定的な収益を得られるよう組織再編に踏み切ったわけですが、CEOのデービット・ソロモンは「米国が景気後退に陥る可能性は十分にある」と語っています。

2.シャドーバンクについて考える

リーマンショックのあと、中央銀行の総本山の、ドル基軸通貨のSWIFT回線を持つBIS(国際決済銀行:ベルギー)は、世界の銀行に対して、自己資本とレバレッジの規制をしました。リーマンショックを二度と起こさないための規制です。

結果、規制の少ないファンドが増え、世界の金融資産の約半分を銀行外のシステムが抱えることになりました。

(出典:日経新聞2022年7月21日

今回、英国で危機となった年金基金も銀行ではなく、ファンドです。シャドーバンクの主なメンバーはヘッジファンド、インデックスファンド、世界の年金基金、機関投資家、中国では理財商品です。

シャドーバンクがデリバティブ(金融派生商品)の大口の売手であり、買い手です。広義のシャドーバンクでとらえた場合その規模は140兆ドルには達しているでしょう。日本のGPIF(年基金運用機構:運用資産額194兆円)もシャドーバンクです。融資のない郵貯、かんぽ生命、生損保も財投債を買うシャドーバンクに近い存在です。

リスク資産のデリバティブを、米国からAAAだと騙されて買うことがある農林中金(農協預金の運用:総資産60兆円)もシャドーバンクでしょう。

農林中金は世界の市場ではCLOのクジラと呼ばれています。CLOとはリスク資産です。Collateralized Loan Obligationの略で、ローン担保証券のことです。これは資産担保保証券の一種で、金融機関が事業会社向けに貸出をしている、貸付債権を証券化した物です。ローンの元利金を担保にして、債券が発行されます。このCLOの主要プレーヤーが農林中金です。ちなみに、リーマンショックで最も損失を出したのは農林中金です。

リーマンショックの後13年、コロナ危機も経験したことで、ゼロ金利、金融緩和、レバレッジで増えてきた負債は、世界の基準金利が4%上がれば、利払いができない水準になって不良債権化していきます。負債の大きな世界金融危機が、迫っています。

国債は安全資産とされています。しかし、英国年金基金のように、レポ金融でレバレッジを掛けた買い方をすれば、高利となり、金利が上がった時は急落するハイリスクな資産となります。

株、社債、国債を含んで、シャドーバンクでレバレッジのかかったハイリスク運用になっているものが、世界で140兆ドル(2京円)、米国で70兆ドル(9800兆円;米国GDPの3.5倍)はあるでしょう。

英国の長期金利は2%台から4.5%に上がりました。そして、米国の短期金利は0.25%から3.25%に上がっています。10年債の金利は、1.5%から4.0%に上がって、米国債の下落も20%になっています。

一般には、株価が注目されますが、本当は国債の下落危機(英米で-20%)が危機の本命です。

株はもともと、価格変動が年間20%以上のリスク資産です。機関投資家では、株は下落のときのヘッジをかけた買いになっています。値上がりの時は利益が小さくなり、値下がりの時は損失が小さくなります。

ヘッジは基本的には、投資(ロング)の反対の売り(ショート)だからです。シャドーバンクがつかうデリバティブについてみておきましょう。

3.これからの金融危機は、レバレッジ率が高いシャドーバンクから

デリバティブは、プレミアムを払って、かける側にとっては損害保険と同じヘッジです。

しかし、引き受ける側(カウンター・パーティーの金融機関)にとっては、「平常時は利益があります」が、「金利が上がる異常時には、破産にまで至る損害が大きなリスク」です。

国債という安全資産をシャドーバンクが買う時は、英国年金基金のように、「レバレッジをかけ、上昇と下落が何倍にも拡大するモデル」で運用していることが多いからです。

ゼロ金利で、金融(=借入)が緩和されている時期には、約5倍のレバレッジは普通でしょう。

負債の金利が上がった時、低金利の長期化を組み込んだシャドーバンクの必然の危機は、その運用マネーを出している大手投資銀行と、年金や保険会社が多い機関投資家の危機になります。

リーマンショックの時と違い、今回は140兆ドル(2京円)の巨大運用をしているシャドーバンクの危機から、銀行危機に波及すると考えるのが自然です。

現在、3.25%の米国の政策金利は、年末には0.75%(11月)、+0.5%(12月)の利上げで、4.5%に上がる確率が高い。米国に引きつられる英国の長期金利は5.5%にはなるのではないでしょうか。

来年の6月までには米国の政策金利(短期金利)は、あと1.25%~1.5%上がって、5.75%~6.0%でしょうか。英国は8.0%の可能性があります。

この金利なら、世界の金融崩壊は必須でしょう。

「2023年世界金融危機」を避けるには、FRBが11月以降から23年6月までの利上げを停止し、逆の利下げと量的緩和に再転換する必要があります。しかし、その可能性は極めて低いでしょう。

なぜなら、米国のコアCPIは上昇しており、FRBはインフレ低下に向けた金融政策を止められないと見るからです。

英国の年金基金の危機は、これから起きる可能性が高い金融危機の前兆と言えるでしょう。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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