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米消費者の1年先インフレ予想5.2% 1年3カ月ぶり低水準~ハトVSタカで揺れるFRB~【日経新聞をより深く】
1.米消費者の1年先インフレ予想5.2%
ニューヨーク連銀が12日発表した11月の消費者調査によると、1年先の予想物価上昇率(中央値)は5.2%と前月から0.7ポイント下がった。2021年8月以来、1年3カ月ぶりの低水準を記録した。住宅価格が今後さらに下落を続けるとの見方が強まった。
住宅価格の予想上昇率は1.0%と前月から1ポイント低下し、20年5月以来の低水準となった。年初からはすでに5ポイント低下している。インフレ抑制に向けた米連邦準備理事会(FRB)の急ピッチの利上げで販売が急減したことを反映した。
ガソリン価格の1年先の予想は前月から0.5ポイント下がった。ガソリン価格は6月に過去最高の1ガロン(約3.8リットル)あたり5ドル強を記録してからは下落に転じ、予想物価上昇率の下げ要因となっていたが、10月に再び大きく上昇した。食品は前月から0.8ポイント、家賃は0.1ポイントそれぞれ小幅に低下した。
消費者の中期的な物価観を示す3年先の予想物価上昇率は3.0%と、前月から0.1ポイント低下した。前年同月からは1ポイント下がったものの、FRBが目標としている2%の水準は上回っている。
家計所得の増加予想は4.5%と前月から0.2ポイント上昇し、データが遡れる13年以来、過去最高となった。家計支出の増加予想は6.9%と前月から0.1ポイント下がった。
インフレはピークアウトしたと市場関係者はみているようです。実際には結果を見なければわかりませんが、ピークは越えた感があります。
ただ、次はインフレ率は急激に下がってくるのか、それとも下がるペースは遅いのか。それは、FRBの利上げペースに関係してくることになります。
2.ハト派VSタカ派
これまで、FRB内部でも一致して大幅利上げでした。しかし、ここに来て意見が分かれています。
インフレは頑固で簡単には下がらない。金利の引き上げが十分ではなかった時にインフレが長引き、金融政策の失敗となる。そのため、金利はまだ引き上げるべきであり、最終金利は5%レベルとなる。
これが主にタカ派の意見です。
インフレはピークアウトした。今度は、金利を引き上げた結果を検証する時期に入っている。もし、金利を引き上げ過ぎれが深刻な景気悪化を招く。金利引き上げをスローペースとし、さらには最終金利は4%前半程度で留め、金利引き上げの効果を見て次の展開を考えるべきだ。
これが主にハト派の意見です。
パウエル議長はどちらか。パウエル議長の過去の発言を検証すると、「金利引き上げが十分ではないことの方が怖い」というものです。
ということは、金利は引上げペースを落としたとしても、最終金利は5%を超えることが十分考えられます。
3.ポールボルカーの時代
「インフレファイター」として知られるポール・ボルカー氏は、1979年8月6日にFRBの議長に就任しました。当時の米国は、第2次オイルショックの影響で、深刻なインフレに直面していました。こうした中、ボルカー氏は1979年10月6日、金融政策の操作目標を、「フェデラルファンド(FF)金利」から「非借入準備」に変更する、新金融調節方式の導入を決定しました。
非借入準備とは、金融機関がFRBに積み立てている準備預金総額のうち、FRBからの借入分を差し引いたものです。新金融調節方式の狙いは、非借入準備を操作目標として、オペ(公開市場操作)による引き締めを行い、通貨供給量の伸びを抑制し、インフレを抑え込むことです。一方、FF金利については、金利の決定水準を資金の需要供給に委ね、大幅な変動を容認したため、新金融調節方式の導入後、急騰しました。
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ボルカー氏がFRB議長に就任した1979年8月、CPI(消費者物価指数)の伸び率は前年同月比で11.8%、失業率は6.0%、実効FF金利(平均値)は10.94%でした。その後、実効FF金利は1981年1月に19.08%まで上昇し、米国経済は、1980年1月から7月までと、1981年7月から1982年11月までの2回、景気後退を経験しました。また、この間、失業率は悪化が続き、1982年11月には10.8%に達しました。
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CPIについては、1980年3月に前年同月比で14.8%上昇しましたが、その後は伸びが鈍化し、1981年5月には伸び率が2桁を割り込みました。物価が落ち着き始めたため、FRBは1982年秋以降、金融政策の操作目標を「借入準備」(金融機関のFRBからの借入金)に変更し、通貨供給量に加え、金利水準と実体経済も勘案し、政策運営を行うこととしました。これには、新金融調節方式の導入後に拡大したFF金利の変動を抑える意図があります。
ボルカー氏は1978年8月11日にFRB議長を退任しましたが、同年8月のCPIの伸び率は前年同月比で4.3%、失業率は6.0%、実効FF金利(平均値)は6.73%でした。ボルカー氏は景気を犠牲にした面はあったものの、インフレ抑制には有効だったとの評価も多方面からあります。市場の動きを見ると、ダウ工業株30種平均は、物価の落ち着きが明確になってきた1982年の夏以降、上昇傾向が鮮明になっていきます。
パウエル議長、そしてFRBは今後、どのように動くのか。CPIの発表、FOMCを控え、世界がその動向を注目しています。
12月のFOMCはおそらく0.5%の利上げと思われますが、最終的には5%、そしてそれが、しばらく維持される。それが私の予想です。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】
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