1.FRB、大幅利上げ継続へ 雇用統計を受け見方強まる
今回の雇用等計で、失業率の低下は労働市場の強さを示しており、FRBは金利の大幅な引き上げを継続することになりそうです。
ただ、今回の雇用統計で注目すべきは、労働参加率の低下でしょう。ウォールストリートジャーナルに次のような言葉がありました。
労働市場への参加が鈍ると、賃金の上昇が止まらず、FRBのインフレとの闘いに大きな影響をもたらします。ウォールストリートジャーナルでは、何人かの労働者が転職の際、職に就くのを遅らせても賃金交渉をしている様子を報道しています。米国での大きな問題はコロナ以降、労働力参加が低いことです。これが、労働市場の逼迫の一因になっています。
2.ローレンス・サマーズの懸念
ローレンス・サマーズ元米財務長官の発言は、注目に値します。なぜなら、FRBは今でこそ、インフレを抑制するために大幅利上げを繰り返しておりますが、当初は、インフレは一過性であるとして、金融政策の変更をしようとしていませんでした。それを批判していたのがローレンス・サマーズ氏でした。サマーズ氏は早くから、米国のインフレは深刻であり、長期的であると見抜いていました。
日経新聞には「サマーズ元財務長官は失業率が6%台に達する景気後退がなければ、インフレは沈静化しないと主張している」と報道されています。
そのサマーズ氏のフィナンシャルタイムズでの対談を見ておきましょう。
(筆者注:LS=ローレンス・サマーズ)
3.今後の米国経済と世界経済
サーマーズ元財務長官は、早くからインフレへの懸念を表明していました。そして、今回失業率は6%を超えるほどにならなければインフレは収まらないだろうと予測し、さらにFRBは現在公表している金利予測(ドットプロット)よりも金利は高くせざるを得なくなると予測しています。
もし、これが実際に実現したとすると、米国さえもスタグフレーションの可能性です。
米国は失業率が上昇し、深刻な景気後退。しかし、金利は上昇し、高止まり。米ドルの金利が高ければ、ドル高が促進されます。しかし、新興国や途上国などの通貨は暴落します。財政破綻する国も出てくるでしょう。
英国、EU圏はウクライナ問題が収まらなければ、エネルギー価格の高騰が収まらず、やはり不景気の中の物価高となってくるでしょう。
英国では減税政策を一部修正はしたものの、政策実行に向けて動けば、再び金融危機の懸念が高まるでしょう。
中国も不動産セクターのバブル崩壊が現実化してきており、厳しい状況です。そして、サーマズ氏が指摘しているように、人口減少問題に直面する中国は、これまで世界が思い込んでいた米国とGDPが逆転するということも怪しい状況になってくるのではないでしょうか。
確かに、1980年代、日本が世界で一番の経済になるということも言われましたが、全くそれは幻想でした。
同様に中国の成長は人口の成長とともにピークを迎え、ここからは大幅な成長はないかもしれません。
日本は日米の金利差からまだしばらくは円安基調が続くでしょうが、世界景気が大幅減速、後退となれば、原油価格が下落してくれば、貿易収支が改善されます。そうすれば、円安から円高基調に変わってくる可能性も十分にあります。
そのため、日本は欧米ほどのインフレには見舞われないかもしれません。世界景気の減速の中で、日本も例外にはならないと思いますが、欧米、中国に比べると、打撃は少ないかもしれません。
世界経済が景気後退する中で、日本はどこに強みを見出していくかが大きな課題となるでしょう。
しかし、それは金融経済で、バブルを作るようなものではなく、実業に根差したものでなければならないと思います。
英米は自国の経常赤字をどうしても埋め合わせなければならず、金融システムでお金が流れ込む仕組みを作るしかありません。
今回の世界的な景気後退は、世界の経済を根本的に変え始めるきっかけになるのではないでしょうか。それは、実需に根差した、経済ではないでしょうか。経常収支が赤字でも良いという時代は終わりを迎えると感じます。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】