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「反撃能力」日米共同で 2プラス2、宇宙で対日防衛義務中国「最大の戦略的挑戦」~米軍は日本の領土は守らない~【日経新聞をより深く】

1.「反撃能力」日米共同で 2プラス2、宇宙で対日防衛義務

日米両政府は11日(日本時間12日午前)、ワシントンで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。相手のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」に関し日米が共同で対処すると確認した。宇宙空間を米国の対日防衛義務の対象とする方針でも一致した。

日本から林芳正外相と浜田靖一防衛相、米はブリンケン国務長官とオースティン国防長官が出席した。外務・防衛の2プラス2の開催はオンラインで協議した2022年1月以来となった。

オースティン氏は共同記者会見で反撃能力の保有を「強く支持する」と明言した。「日米同盟はインド太平洋戦略の礎で、自由で開かれた地域秩序を維持するために不可欠だ」と訴えた。

林氏は日米の防衛協力の指針(ガイドライン)改定について「直ちに見直しが必要とは考えていない」と語った。

共同文書を公表した。軍事活動を含む中国の動向を「最大の戦略的挑戦」と位置付けた。

日本側は「自国の防衛を主体的に実施し、地域の平和と安定の維持に積極的に関与する上での役割を拡大する決意」を示した。米側は「日本を含むインド太平洋での戦力態勢を最適化する決意」を提起した。

反撃能力について「日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間の協力を深化させる」と記した。「緊急事態に関する共同計画作業や実践的な訓練と演習の着実な進展を歓迎する」とも書き込んだ。

反撃能力を行使する際は自衛隊と米軍が敵の軍事目標の位置情報を共有する。米が持つ衛星情報の提供などの協力を想定する。日米でミサイル探知から反撃まで連携する共同対処計画の策定を始める。

宇宙で日米安全保障条約5条を適用し、日本の人工衛星が攻撃されれば日米が武力を用いて対抗すると申し合わせた。共同文書で「宇宙への攻撃は同盟の安全に対する明確な挑戦だ」と言明した。

安保条約5条は日本の施政下で武力攻撃があったとき、米国が対日防衛義務にあたると規定する。宇宙には国境がないが、日本が持つ人工衛星は施政下と定義する。発動要件は個別具体的に判断する。

19年に5条の適用を確認したサイバー空間に続く措置となる。

サイバー分野では日本は安保3文書でサイバー攻撃の兆候段階でも相手を監視、侵入などで対処する「能動的サイバー防御」の導入を決めた。米は2プラス2で歓迎し、日米のサイバー防衛の協調をうたった。

台湾に近い南西諸島の防衛力強化の方策を擦り合わせた。基地に加えて港湾・空港といった公共インフラ施設の共同使用を増やす。

自衛隊や米軍の艦船、航空機などの発着拠点としての活用を見込む。共同文書に「平時における共同の取り組みの決定的な重要性」と記した。日本側は自衛隊が沖縄県嘉手納基地に隣接する米の弾薬庫地区を共同利用する。

米国は沖縄県に駐留する米海兵隊を改編し、25年までに離島有事に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)」を創設する。ミサイル部隊を拡充して中国の海洋進出に備える。

日本は陸海空の3自衛隊の部隊運用を一元的に担う「常設統合司令部」を創設する。米軍との調整の窓口になる。2プラス2では司令部を柱にして日米の相互運用性と即応性を高めることで合意した。

(出典:日経新聞2023年1月12日
(出典:日経新聞2023年1月12日

ここ最近で、急激に米国発で日本は「反撃能力を高める必要がある」という意見が出ています。

2.NIKKEI ASIAにも元米国国防次官補のインタビュー

元米国国防次官補ウォレス・グレッグソンは、NIKKEI ASIAのインタビューで次のように答えています。

日本には、差し迫った攻撃から自らを守る憲法上の権利がありますから、これらの反撃兵器は全く適切なものだと思います。このような能力をすべてアメリカに委託することは、日本政府にとって健全なこととは思えません。日本も戦わなければならないのです。

台湾有事において日本ができる最大の貢献は、日本の領土を磐石なものにすることであり、それ以外のことは米国が行うことです。

(出典:NIKKEI ASIA2022年12月19日

※全文訳は上記バナーをクリックしてご一読ください。

元米国国防次官補ウォレス・グレッグソン氏は現在、笹川平和財団のフォローを務めておられます。つまり、米国との繋がりの深い日本の機関に居る方の発言です。

米軍は日本の領土を直接守ることはしないという示唆ではないでしょうか。日本の領土は日本が守れ、米軍は日本領土以外で必要なことを行うということです。

3.米軍は二正面作戦は取れない。

戦後、米国が世界の秩序作りを主導し、ソ連との冷戦に勝利したのは、二正面作戦を可能にする圧倒的な軍事力があったからでした。

二正面作戦とは、二つの大きな戦争を戦っても、米国は他国を圧倒する力があるという意味です。

しかし、2012年1月、当時のオバマ大統領は国防方針であるこの二正面作戦の断念を宣言しました。その後、「世界の警察官」役をやめると表明しました。

現在の米軍は二正面作戦を遂行する力はありません。もし、このままウクライナが抵抗を続ければ、ロシアは冬に大軍での侵攻を実行するでしょう。そして、今ではウクライナ軍ではなく、NATO軍となりつつある西側との正面衝突。NATOが本格的に参戦すれば、ロシアは公言している通り、戦術核を使う。そうなれば、米軍も一層対ロシアにしか戦力を割くことはできません。

その時、中国が台湾侵攻をしようとも、尖閣諸島を占領しようとも、もしくは他の日本の領土を占拠しようとも、米国は二正面では戦えませんから、台湾も日本も独自で防衛するしかありません。

NATOとロシアの全面衝突が起きた時、その時は日本も中国の脅威に無防備にさらされます。

米国は、ウクライナでの戦争を継続させながら、日本の領土を守る力はもはやないということです。この認識に立たなければ、日本の防衛予算の問題も、安全保障の問題も、議論の前提が国民に伝わっていないと思うのです。

国内の話だけに終始していても、世界の国々はそれぞれ自国の論理で動いています。私たちも、世界の国々の事情をしっかりと把握した上での議論をしていかなければ、米国が守るから日本は戦う必要はないという認識は成り立たたない時代に入りました。

現実的な前提条件をしっかりと認識する必要があります。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞をより深く】


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