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【日経新聞をより深く】米中間選挙、上院7州接戦 「高インフレ」民主党に逆風~共和党が上下両院奪取か~

1.米中間選挙、上院7州接戦 「高インフレ」民主党に逆風

11月8日投開票の米中間選挙が1週間後に迫った。連邦議会下院選は野党・共和党が多数派を奪還する勢いを保つ。上院選は拮抗しており、南部ジョージア州や東部ペンシルベニア州など7州で競る。米国が直面する高インフレへの対処が最大の争点になった選挙戦は最終盤まで混戦が続く。

与党・民主党は支持率が低迷するバイデン大統領に代わり、「選挙の顔」としてオバマ元大統領を相次ぎ激戦州に投入する。10月28日夜、上院選の民主候補の応援に訪れたジョージア州カレッジパークの集会で「(共和候補の)ハーシェル・ウオーカーはとてつもないフットボール選手だったが、それだけで上院議員になる資格はない」と断じた。

ウオーカー氏はアメリカンフットボールの元スター選手で高い知名度を誇る。ただ自ら人工妊娠中絶の禁止を訴えながら、女性に中絶費用を渡した過去を選挙期間中に報じられた。オバマ氏は演説で「真実を語らない癖がある」と決めつけた。

米政治サイト、リアル・クリア・ポリティクス(RCP)の31日時点の分析によると、ウオーカー氏の支持率が民主現職のラファエル・ウォーノック氏を1.4ポイント上回る。10月上旬に5ポイント以上リードされていたウオーカー氏が逆転した。

ジョージアの上院選には総票数の数%を獲得しそうな第3の候補も出馬している。どの候補も総得票の50%以上を得られず、州法に基づく決選投票になる可能性もささやかれる。その場合は12月6日まで決着がずれ込む。

現在の上院(定数100)の構成は与野党が50対50で、中間選挙で民主が1議席でも減らせば多数派は共和に移る。上院は政府高官や裁判所判事の人事を認める権限を持つだけに、多数派を失えば思い通りに人事をできなくなるリスクが増す。

(出典:日経新聞2022年11月2日
(出典:日本経済新聞2022年11月2日

米中間選挙の行方は、ここにきて、共和党が下院だけでなく、上院でも優勢になっているようです。民主党は元大統領のオバマ氏まで引っ張りだして、必死の戦いです。リアル・クリア・ポリティクスによると、上院選の情勢は非改選も含めて、民主党が45議席、共和党が48議席で優勢です。

接戦となっている7州をどちらがとるかで決まるという情勢となってきました。

2.共和党有利の理由

共和党がここに来て、盛り返しているのは、バイデン政権の経済政策に対してNOを突き付けているためです。その内容はウォールストリートジャーナルに報道されているので、ぜひ、読んでみてください。

生活者としての米国人にとって、現在の強烈なインフレは、現政権に対する不満となって表れています。また、治安の悪化も民主党離れの要因となっているようです。

今回の選挙で、トランプ前大統領の影響が良くも悪くも強いことは間違いないでしょう。2024年大統領選挙へ出馬に意欲を示しているといわれるトランプ前大統領は、共和党勝利を背景に出馬宣言をするかもしれません。その意味で、バイデン政権への信認投票という従来の選挙の性質だけでなく、トランプ前大統領への評価という側面がある異例の選挙であるといえます。

ただ、トランプ前大統領の存在が共和党にとって、良い面だけとは限りません。トランプ政権時代に指名した判事を含め保守派が多数を占める米連邦最高裁が6月に人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を覆したことは、民主党支持層を覚醒させる要因になりました。

また、8月に「インフレ抑制法」とも呼ばれる「歳出・歳入法」が成立したこともバイデン政権に追い風をもたらしました。さらに、夏場には一時、インフレ懸念が後退したこともあり、民主党の支持率が盛り返しました。

しかし、ここに来て、インフレ懸念の高まりを受けて、民主党が失速しているのが現状です。

3.共和党勝利ならどう変わる

共和党が勝利した場合、アメリカファーストとなる可能性が大です。もちろん、大統領は民主党なので、すべてがそうなるということは難しいですが、今までとは違ってきます。

最も大きな影響が出るのではと予想されるのがウクライナ戦争に関することです。米国はアメリカファーストの政策からウクライナへの関与を減らす可能性があります。

英国エコノミスト誌の調査によると、ウクライナのゼレンスキー大統領に好感を持っていない人が米国内に2割おり、共和党のトランプ支持者に絞るとその割合は3割に上がると指摘しています。また、ウクライナからの難民を受け入れるべきではないと答えた人がアメリカ国内全体で24%だった一方、トランプ支持者では40%に上昇しました。

共和党勝利、つまりトランプ氏の影響力が大きくなるとなった場合、ウクライナへの軍事、経済、人道支援はこれまでの政策とは変化する可能性があります。これは、NATOの今後にも影響を与えることになります。

エネルギー政策についても変化の可能性があります。バイデン政権は環境重視、再生エネルギー重視の姿勢をとってきましたが、シェールオイルの復活も考えられます。バイデン政権はシェールオイルには厳しい姿勢をとっており、シェールオイルは下火になっていました。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻からの原油価格の問題、そして、OPECプラスの減産など、現在は下落傾向にある原油価格ではありますが、原油の戦略的備蓄を放出するなどして価格高騰を抑えているバイデン政権への批判からシェールオイルが勢いを増す可能性があります。

また、ドル高の修正もあり得ます。一方的なドル高による製造業のマイナス面をドル安に導くことでカバーしていきたい意向です。共和党支持者には、製造業に従事する白人は数多くいます。

アメリカファーストの政策が復活することにより、バイデン政権が行ってきた2年間が逆転していく方向に向かいます。

そして、共和党勝利であれば、トランプ前大統領の影響力は大きくなり、2024年大統領選挙への盛り上がっていくことでしょう。

また、あくまで可能性ですが、上下両院を共和党が勝利した場合、バイデン大統領の弾劾ということもあり得ないことではありません。

いずれにしても、米国だけではなく、世界に影響をもたらす選挙です。決戦は11月8日、まもなくです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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