ドイツ株6日 続落 利上げ継続でユーロ圏景気懸念~ドイツの行方は?~【日経新聞をより深く】
1.ドイツ株6日 続落
強い経済だったはずのドイツもロシア産の天然ガスの停止によって、翻弄されています。
このところ、株価は持ち直していましたが、やはり金利の上昇が懸念されますので、株価の行方も不安定であろうと思われます。
金利上昇の要因となっているインフレ率は11月は若干下がって10%です。下がったとはいえ、高インフレであることに変わりありません。
ドイツだけではなくEU圏もインフレ率は10%と若干下がったものの、まだまだ高いレベルです。その為、ECBは「まだ利上げが必要」となっています。
利上げの懸念が出てくると株価は下がる。そして、利上げをすると、景気は悪化する。そのサイクルにはまり込んでいるのがドイツであり、EU圏です。
2.エネルギー価格が高騰しているドイツ
ドイツはロシア産の安価で安定した天然ガスにエネルギー源を頼っていました。それが、ウクライナ戦争により、西側のロシアへの経済制裁が強まり、逆にロシアは欧州へのガス供給を停止しました。
その結果、ドイツはエネルギー危機と呼べる状況に陥り、今年の冬を越すための天然ガスの代替供給の確保に走り回ることになりました。11月23日、オラフ・シュルツ首相は「この冬のエネルギー安全保障は確保された」と議会に報告するに至り、一定の安心を得ることにはなりました。しかし、ドイツ政府は世界中の市場で必死に高いお金を払って、購買計画を進めざるを得ず、高い費用を払って、国内のガス貯蔵量を満タンにしたのでした。
また、高い費用は天然ガスの購入だけではありませんでした。液化天然ガス(LNG)の輸入基地を史上最速で建設したのです。LNGとは、体積を減らし、輸送を容易にするために冷却され、液化された天然ガスのことを言います。目的地に到着したLNGは再び気体に戻さなければなりません。その施設の建設をする費用が上乗せでかかっています。
液化天然ガスは船で運ばれてきます。その為、基地は海上にあります。この基地で最も重要なのがLNGをガスに戻す浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)機能のついた船です。この船は1日当たり20万ユーロ(約2900万円)でレンタルしなければなりません。
米国、ノルウェー、アラブ首長国連邦(UAE)などからLNGが運ばれてくる予定です。そして、この基地は来年中にあと5か所建設が計画されています。
わずか1年前まで、ロシア産ガスはドイツのガス需要の60%を占め、そのほとんどがガスパイプライン「ノルド・ストリーム」経由で輸送されていました。
当時のドイツ政府は議会や国民からの反対にも関わらず、「ノルド・ストリーム2」の開設を検討していました。このパイプライン計画は、ロシアからドイツ経由で欧州に送られるガス量を2倍にするものでした。しかし、このパイプラインも爆破を受け、一部損傷。また、現在も稼働はしていません。
ドイツ政府のエネルギー系当局によると、ドイツは現在、ロシア産ガス無しでもやっていけると主張はしています。しかし、専門家は冬季のガス不足を避けるためには、LNG基地を年明けにも稼働させるほか、国内のガス使用量を20%削減する必要があると指摘しています。
また、従来はパイプラインを通じて天然ガスを気体で輸入してた経済大国で、購買力のあるドイツがLNG(液化天然ガス)を世界中に求めたので、LNG需要が加速しました。その結果、バングラディッシュやパキスタンといった貧しい国が、弱い立場に追い込まれています。
重要の急増によって、LNG価格の高騰し、新興国を中心に多くの国がLNGを調達できない状況になっています。その為、停電が頻発する恐れがあり、天然ガスよりも環境に悪い石炭などの化石燃料への依存度が高まる可能性が大です。
ドイツのLNG需要の急増は世界にも影響を与えています。そして、何よりもドイツはLNG基地に60億ユーロ以上を投じています。当初予定予算の2倍以上です。来年はそれがさらに加速します。ドイツ経済の根幹にかかわる事態になっています。
3.ドイツのビジネスモデルの崩壊?
ドイツは工業大国です。そして、その工業に使用するエネルギーを安価で安定しているロシアから輸入していました。
そして、最大の輸出先は中国です。しかし、その中国との関係もかつてのようにはいきません。西側諸国と中国の対立は顕著になっています。また、中国の経済そのものが良くありません。
製造業はエネルギーが無ければ稼働できません。そして、そのエネルギー価格が高騰すれば、直接的に原価が上昇し、競争力を奪われます。
先月発表された政府の統計によると、ドイツの全産業雇用の23%を占めるエネルギー集約型の生産が、今年に入ってから10%減少しています。金属、ガラス、陶磁器、紙、繊維等の部門が最も大きな打撃を受けています。
特に苦しんでいるのが、100~200人規模の中堅企業です。これらの企業は生き残りをかけての戦いとなっていますが、エネルギー量を減らすことはほぼ難しい。政府の補助頼りということになります。
ドイツの製造業を支える中堅企業は安価で安定したロシア産エネルギーに頼り、競争力を維持してきました。それが奪われた今、ドイツのビジネスモデルは崩壊の危機に瀕しています。
ドイツ産業の将来は、如何に早く新しい電力供給方法を見つけることができるかにかかっているというのが、閣僚、企業経営者、経済学者の一致した意見です。ドイツは液化天然ガスの輸入ターミナルの建設、休止中の石炭火力発電所の再稼働、原子炉の延命等、ロシア産エネルギー輸入に代わるものを見つけるために果敢に取り組んでいます。
また、2030年までに電力の50%から80%を自然エネルギーでまかない、2045年までにカーボンニュートラルを実現するという計画の主要な部分として、風力発電と太陽光発電の普及を加速しています。
しかし、現実には2030年の風力と太陽光の目標を達成するには、毎年30ギガワットを建設しなければ間に合いませんが、過去数年間は毎年平均でわずか650万ワットを建設したにすぎません。期限が迫る中、毎年ギャップが膨らんでいます。
ドイツが置かれている立場は、ロシア産の安価で安定した天然ガスへの依存したツケが回ってきたということになります。それは、トランプ前大統領が、現役大統領の時に指摘したことでした。今になってその意味をかみしめなければならなくなっています。
欧州はドイツだけに限らず、各国エネルギー問題で苦しんでいます。戦争のコストは、戦費だけではなく、平和であれば不要であった費用を沢山払わなければなりません。
一日も早い平和が来ることを望むばかりです。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】
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