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米国株投資に日本人の資金が大量に流れているが・・・

半導体のNVIDIAの時価総額が3.0兆ドル(465兆円)に達しました。

(出典:TRADING ECONOMICS/NVIDIA株価推移)

マイクロソフトの時価総額が3.2兆ドル(495兆円)、メタが2.2兆ドル(340兆円)、アマゾン1.9兆ドル(295兆円)、Google1.0兆ドル(155兆円)となっており、米国のAI、SNS、クラウドのデータセンター関連5社の時価総額は11.3兆ドル(1,750兆円)の規模となっています。

日本の時価総額は2024年5月末で994兆円(日本取引所グループ)です。米国の5社で、日本の上昇全社の1.75倍と空前のスケールが現在です。

株式の割安や割高という水準は、一般的に現在の企業価値(資産や業績、配当など)に対して、どれくらいまで買われているかで語られます。

その際、割安や割高の判断基準として用いられることが多いのが、PER(株価収益率)です。

PERは、今の株価が1株当たり利益(EPS:Earings Per Share/1株当たり純利益)の何倍まで買われているかを表した指標です。ESPとは、企業の純利益を発行済み株式数で割った数値で、その企業の稼ぐ力が1株当たりでどれくらいあるかを示しています。

つまり、その企業の1株当たりの利益に対し、株価が10倍まで買われている企業より20倍まで買われている企業の方が「株価は割高」という事です。そのため、PERは低い方が業績に対して割安で、高い方が割高と評価されます。

現在の米国市場の平均PERは23.2倍です。NVIDIAはPER70.75倍です。マイクロソフトは43.8倍。

この数字からすると、NVIDIAをはじめとした5社の株価は高すぎるのかどうか・・・。私は過剰評価と考えますが、それは、日本を筆頭にした世界のドル買いの急増が要因と見ます。

日本政府は、累計1800万円までの投資利益を非課税とする新NISAを作ってゼロ金利の世帯預金1,000兆円を株式投資に振り向ける誘導を行っています。通常は、株価利益の20%は分離課税です。又は、所得額の累進で税率が上がる総合課税です。(最低5%~最高45%の7段階)

投資対象として人気沸騰しているのが、世界の株価指数への投資信託であるオールカントリー株です。(通称:オルカン/世界の株価指数の加重平均)全世界といっても、米国株が約60%を占めています。世界株はTOPIXのような加重平均の指数ETFです。ポートフォリオの対象が、世界の株価です。

(出典:みんかぶ)

最近1年間のリターンは40%と高い。直近3か月では10.91%のリターンです。「世界株指数の上昇+ドル高・円安」が利益になっています。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の5月末時点の残高は、3兆4,300億円と月間で2,704億円を積み増しました。

(出典:日経新聞2024年6月6日)

このオルカン株への資金流入は「円売り・ドル買い」になるので、ドル高・円安の要素です。その他S&P500への投資信託など米国株の投資信託への資金流入は1兆円規模となっています。

年率では12兆円ですから大きな要素になっています。24年5月初旬に1ドル160円に達したドル高・円安に財務省が介入したドル売りの金額は9兆円でした。

円国債で運用してきた公務員年金基金(100兆円)も積極運用の方針を政府が固めています。その話は5月22日に岸田首相が米金融大手モルガン・スタンレーが都内で開いた投資家向けのイベントで「GPIFや共済組合など約300兆円を運用する公的アセットオーナー9主体は運用力強化に向けた取り組み方針を速やかに公表する」と語っています。つまり、米国株、米国債券で積極運用するということです。

そして、注意をしなければならないのは、日本人が日本の証券会社で円建てでオルカン株を買っても、ETFの投資信託の中身はドル建てであるということです。

2021年からのようにドル高・円安の時はドル高分が加わって上げってきました。しかし、これが円高になると下がります。そして、実際には「ドル・円の為替の期間変動率」は株価指数の上昇率より高いことが多いのです。

例えば、現在の1ドル155円が、トランプ大統領誕生で、ドル安政策が推進され120円の円高に向かうと、23%は為替の変動で円高の分だけ下がります。オルカン株は「円安の傾向」を前提にした投資といえます。

4月23日にトランプ前米大統領は、円安について「大惨事だ」と自身が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿しています。

トランプ前米大統領は23日、ドルが対円で34年ぶりの高値をつけたことを巡り、米国にとって「大惨事だ」とし「バイデン政権は放置している」と批判した。
トランプ氏は交流サイト(SNS)で「(ドル高は)愚かな人々には聞こえがいいが、わが国の製造業者などにとっては大惨事。競争力を失い多くのビジネスを失う」とした。
「私は大統領時代、特に日本と中国に対して、そんなことはできない、と主張するのに多くの時間を費やしてきた」とも指摘した。

(出典:ロイター)

一見、順調に見えるオルカンですが、米国頼み、円安頼みの運用ですので、危うさを孕んでいます。日本人の、それも個人の資産が大量に流れているだけに、米株価が大きく下落し、そこに円高が加われば、大きな損失を出すのは日本の個人投資家になりそうです。

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