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タカ派姿勢崩さなかったFRB~利上げはまだ続く~【日経新聞をより深く】

1.タカ派姿勢崩さなかったFRB

14日の米株式市場でダウ工業株30種平均など主要株価指数はそろって反落した。前日発表の11月の米消費者物価指数(CPI)上昇率が2カ月連続で事前予想を下回り、市場には米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに積極的な「タカ派」姿勢を幾分和らげるという期待感もあった。この日の米連邦公開市場委員会(FOMC)はそうした楽観論を一蹴した。

前日比で200ドルほど上昇していたダウ平均が一気に下げに転じたのは午後2時のFOMCの結果公表後だった。利上げ幅を0.5%に縮小し、政策金利を4.25~4.5%にしたのは織り込み済み。反応したのは四半期に一度示す経済・政策見通し(SEP)で、2023年末の政策金利見通し(参加者予測の中央値)を5.1%と前回予想より0.5%引き上げた点だ。

直前の金利先物市場の織り込みでは、FRBが23年の最初の2回の会合で0.25%ずつ利上げした後、4.75~5%で打ち止めにするシナリオが優勢だった。SEPはさらにもう一回(0.25%)分の利上げを実施する構えをみせた。こうした予測をする金融機関もあり、完全なサプライズではなかったが、一部のハト派的な期待が剝がされた。

午後2時半にパウエル議長の記者会見が始まると、ダウ平均は一時、下げ幅を広げた。パウエル氏は利上げの継続姿勢とともに、引き締めを早々に撤回することでインフレ退治に失敗するリスクを改めて強調した。最近の米長期金利の低下(債券価格の上昇)や株式相場の持ち直しを問われ「引き締め的な政策を金融情勢全般に反映させ続けることが重要だ」と市場の緩みをけん制する場面もあった。

「パウエル氏は会見でタカ派的な姿勢を崩さなかった」。資産運用会社RBCグローバル・アセット・マネジメントの米債運用部門責任者、アンドレイ・スキバ氏はこう話す。

FRBと市場に生じた認識の差はどこにあるのか。調査会社のローゼンバーグ・リサーチは「SEPで23年と24年の個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率予想を引き上げたのが一番の驚き」と指摘する。

パウエル氏は会見で、最近のインフレの鈍化傾向を歓迎しつつ、主要因は供給網の改善に伴うモノの価格下落だと分析。賃金上昇に根ざした、住宅を除くサービス価格の高止まりを懸念し、落ち着くまでは「相当な時間がかかる」と語った。労働市場の過熱を冷ますために引き締め状態を長く続けるという考えを鮮明にした。

引き締めをさらに強める代償として、23年の実質成長率予測は0.5%と前回から0.7ポイント引き下げ、失業率は現在の3.7%から23年10~12月期に4.6%まで高まると予想した。パウエル氏は「プラス成長なので景気後退とはいえない」と主張したが、「FRBがここまで(景気後退を回避しつつ物価を下げる)デリケートな着地をできるとは信じがたい」(ジェフリーズのトーマス・サイモンズ氏)との声があがる。

22年を一足早く振り返れば、市場を動かした最大の要因はインフレとFRBの急速利上げで、本来は逆相関の株価と債券価格がともに急落した。だが政策金利の「天井」が見えてきたことで、市場の関心は景気の冷え込み度合いに向かう。安全資産の国債が買われやすくなる一方、企業収益の悪化懸念は株価の上値を抑え、資産の選別が進みそうだ。

(出典:日経新聞2022年12月15日

2.インフレ率の下落十分となるまで利上げ

Mr. Powell acknowledged the improvement in the inflation rate but warned it might decline to levels that are still uncomfortably high, citing concerns that prices for labor-intensive services might rise if wage growth doesn’t slow down.
パウエル議長は、インフレ率の改善は認めたものの、賃金の伸びが鈍化しなければ労働集約的なサービスの価格が上昇する恐れがあるとして、依然として不快なほど高い水準に陥る可能性があると警告した。

“We welcome these better inflation reports…but I think we’re realistic about the broader project,” Mr. Powell said. Despite progress on goods and housing inflation, “the big story will really be the rest of it, and there’s not much progress there. And that’s going to take time.”
パウエル議長は、「インフレ率が改善したことは歓迎するが...広範なプロジェクトについては現実的だと考えている」と述べた。財・住宅インフレの進展にもかかわらず、「大きな話題は本当に残りの部分であり、そこではあまり進展がない。そして、それには時間がかかるだろう」と述べた。

パウエル議長、およびFRBは、「金利の上げすぎよりも、十分に上げないことでインフレが再発することを恐れている」ことが、ますますはっきりしたように思います。

結果として、5%を超える利上げとなることはほぼ間違いなさそうです。

問題は、いつまで高い水準が続くか?そして、米国の景気は大丈夫か?です。

3.景気よりもインフレ退治

FRBはインフレは一時的と繰り返し発言していました。しかし、今年の3月から誤りを認め、金利を歴史的ペースで引き上げてきました。

市場は、インフレ率が発表されるたびに一喜一憂して、「利上げペースの減速」または「利上げ幅の減少」を期待する雰囲気になったり、その逆になったりと翻弄されています。

しかし、FRB及びパウエル議長の発言を振り返ってみると、一貫して、「インフレを抑えること」を「景気後退のリスク」よりも優先してきました。その姿勢は変わっておらず、マーケットの方が一喜一憂しているだけに感じます。

FRBの中にもタカ派とハト派がいるので、それぞれの発言に相違は出てきます。しかし、ここまでの動きをみると、やはり、景気後退よりもインフレ退治です。

商務省の個人消費支出指数によると、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア・インフレ率は、10月の年率5%から来年末には3.5%に下がると予測しています。これは、9月に発表された3%という予想から上昇しました。

また、賃金上昇率も下がっては来たものの、過去を振り返るとまだ高い水準です。

(出典:TRADING ECONOMICS/米国賃金上昇率

景気後退リスクよりも、インフレ退治がFRBの姿勢として見ておいた方が良さそうです。

未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】

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