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FPが解説する!①副業やフリーランスとインボイス制度

今回は消費税のお話です。

副業やフリーランスで外部の人と取引している人に関係してくるお話しです。

外部の人と取引するときは、原則として消費税がかかってきます。
消費税は消費税を消費者が負担する税金なのですが、消費者が直接税金を国に払うのではなく、事業者が代わりに払う仕組み(間接税)を取っています。つまり、消費者が事業者に消費税を払い、受け取った消費税を事業者がまとめて国に払うのです。

これは一般の人が取引をする場合でも同じですが、事業と言えるほど継続した取引をしていなければ事業者とは言えませんので、消費税を預かる必要はありません。たとえば、友達にゲームソフトを売ったり、フリーマーケットで必要なくなったものを販売するのは事業とは言えませんので、消費税はかかりません。

しかし、継続的に事業として行っている取引は消費税がかかってきます。
副業フリーランスの場合がこれに当たります。
しかしすべての事業者に消費税に関わらせることは大変なので、一定の事業者には消費税を国に払う義務を免除しています。
これが免税事業者です。

免税事業のメリット

免税事業者は消費税に全く関わらなくなります。
したがって、本来は取引相手から消費税を預かってはいけないのです。
しかし、実際には消費税を上乗せして請求している人も多いと思います。
その場合、通常の事業者ならば預かった消費税を国に払わなければいけないのですが、免税事業者はこれを免除されていますので、結果的には預かった消費税を自分のモノにしてしまうことが現実には行われています。
これを益税といいます。税金が自分の利益になっているのですね。

ただ、取引の相手方としては、免税事業者か否かはわかりませんから、消費税を請求されれば払うだけですね。消費者としては、全く確認のしようがありませんので払うだけですが、何か他のことで分かればそこを避けるくらいでしょうか。

消費税の仕組み

取引相手が事業者の場合は、(わかりづらくなるので先ほどの免税事業者をX、その相手の事業者をYとします)、たとえば免税事業者Xから何かを購入した場合を考えてみます。
この場合、Yは自分が消費者から預かった消費税を払う義務がありますが、自分が何かを買ったりしたときに払った消費税を、預かった消費税から差し引いて国に払うこととされています。
そうしないと、事業者が払う消費税がダブってしまうからです。

そのため、取引相手が免税事業者Xであろうが、普通の事業者であろうが、払った分の消費税を差し引くことが出来るので、あまり問題ではないことになります。

インボイス制度と免税事業者

しかし、インボイス制度が導入されるとこれが出来なくなります。
インボイス制度というのは、来年の10月から始まる新しい制度ですが、領収書に登録ナンバーが必要となり、そのナンバーがない領収書は、預かった消費税からその払った分の消費税を差し引くことが出来なくなってしまう制度なんです。

この登録ナンバーは、免税事業者であるともらえません。
すると、先ほどの例でいうと、免税事業者Xは、Yにそのナンバーのない領収書しか渡せなくなりますが、それではYは自分が預かった消費税からその分を差し引くことが出来なくなります。
そのため、Yとしては免税事業者であるXとの取引は、よほどのことがない限り、続けることができません。
XはYに限らず、どことも取引できない恐れも生じてしまいます。

Xが副業やフリーランスをしているあなただとしたら、これは大変なことですね。
ではどうしたらよいのか。

インボイス制度への対応

登録ナンバーがもらえるのは課税事業者だけですので、自分から課税事業となることを宣言することはできます。
税務署に「課税事業者選択届出書」を提出する方法です。
しかし、課税事業者になるということは、先ほどの益税のメリットがなくなります。
そして、帳簿をちゃんとつけて、預かった消費税から払った消費税を差し引いて、年度末に確定申告書を作って、支払うという大変面倒なことになります。

そこで、登録ナンバーをもらうために課税事業者にならざるを得ないとしても、簡易課税制度を利用することが考えられます。
簡易課税制度とは、売上に応じて、一定の割合で支払う消費税の金額を決めるという便利な方法です。
つまり、売上をちゃんと把握していれば、支払う消費税は計算によって決定されますから、預かった消費税から、その計算された消費税を差し引いて国に支払えばいいということになります。
この割合いは、業種によって決められていて、たとえば、小売業であれば、売上の80%が仕入れに使われたとされ、そのうちの消費税分が支払った消費税とカウントされます。
おなじように、飲食業なら60%、サービス業なら50%になります。
簡易課税制度を適用するためには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要がありますが、他にも一定の条件があります。

おわりに

  1. 今、免税事業者として消費税の恩恵を受けている人は、来年の10月以降の対応を考えておく必要があります。
    もちろん、自分の腕に自信があり、免税事業者のままでも取引先は逃げないという場合は、免税事業者のままでもいいかと思います。なにも課税事業者にならなければいけないという訳ではありませんから。
    ただ、しばらくは経過措置といって、免税事業者の取引相手も一定の割合で差し引いてもらえますので、来年10月になったら急に変わるということはないかと思います。