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横断的思考を醸成する3ステップ

■DXや業務改革で横断的思考が求められる理由
 「DXや業務改革をどのように進めればよいのでしょうか?」というご相談を受けることがあります。デジタル化や業務改革を担う人材が社内にいないので、どのようにすれば良いのか困ってしまい、専門家に依頼しようと思われるようです。確かに DX を進めようとすると、ITの技術的な面ではエンジニアなどの支援が必要となる場面はあります。しかし、技術的な面にたどり着く前の段階、つまりビジネスや業務としてどこに問題があって、何をしなくてはいけないのかを検討する段階で躓いていることが多くあります。
 このような躓きが起こるのは実は当然のことです。会社において個々の担当者のやるべき仕事というのは概ね決まっています。しかし DX や業務改革というのは、日々の仕事の延長線上にはありません。ですから、そういった仕事を任されると困ってしまうのです。一方で、ITの技術的な面での専門家以外に、これらの取り組みを取りまとめる専門家が必要なのかと言うと、必ずしもそうではないのです。社内で DX や業務改革を進められない根本的な原因というのは、横断的な思考ができないということが理由であることが多いです。横断的思考とは、一つの部署とか、一つの仕事ではなくて、複数の部門とか、複数の部署にまたがって、取り組みを進めていくことです。しかし突然、複数の部署にまたがる仕事を任されても普通のご担当者は困ってしまいます。今回は横断的な思考で仕事を進めるためのステップについてお話をしていきたいと思います。

■横断的思考の3ステップ 
 横断的思考で仕事を進めるには三つのステップがあります。
①体制の整備
 まず一つ目のステップは、体制を整備するということです。一つの部署・部門に所属していて専門的な仕事をしている人が、突然複数の部門部署にまたがって仕事をするということは非常に難しいです。なぜかと言うと、それまで自分の部署の仕事しかしていなかった人が他の部署の仕事を理解するだけでも難しいというのは想像に難くありません。それだけでなく、他の部署も含めて仕事を取りまとめていかなくてはならいので、大変なのです。普通は他の部署の人から相手にされないというような状況になりがちです。端的に言うと、別の部署からあれやこれやと指示を受けたくないと、拒否されてしまうのです。ですから部門横断的な DX や業務改革を進める場合には、必ずそれに即した体制を作る必要があります。例えば社長の直下に部門横断的なプロジェクトを指揮する部署を作るというようなことが必要になります。このような部署を作って、その部署に人を割り当てる事によって、初めて部門横断的な仕事を実行する準備が整ったことになります。このように部門横断的な思考で仕事を進めるためには、まずは体制を整備するということが極めて重要です。

②情報の収集
 体制を整備した後にやるべきことというのは、情報を収集するということです。情報収集するためには、プロジェクトの目的や狙いというものを明確にする必要があります。例えば、 複数の部署にまたがっている事務業務を統合して効率化するというように、目的を明確にする必要があります。目的が明確でないと、あらゆる情報を収集することになってしまって、最終的に整理ができずに終わってしまうということになりかねません。しかし、目的が明確であれば、その目的に関係のある情報を収集しようとしますので、効率よく、品質の高い情報収集が可能となります。
 そして、情報を収集する時には、①で整備した部門横断的な部署の担当者が実行していくことが必要です。また、情報収集はインタビューなどで行ってことになります。ですからインタビュー対象となる各部署の担当者を決めるということも必要となります。このようにして、インタビューやアンケートを行って情報を集めてきます。そして集めた情報は、一覧化していくことが重要です。課題一覧を作って情報を忘れずに記載していくことで、次のステップの情報の整理が可能になります。

③情報の整理
 課題一覧に情報を記載していった後にやるべきことというのは、情報を整理するということです。 情報整理する時にも課題一覧上で行います。実際には、課題一覧上に各部署の課題を記載していく段階で、かなり頭の中が整理されていきます。その段階で、「異なる部署で同じようなシステムを導入しようとしているな」ということが見えてきます。あるいは、「申請書のフォーマットが部署ごとに違うために、事務処理が非常に煩雑になっているな」というようなことが見えてきます。そうすれば、自然と打ち手を検討できるということになります。課題を整理して行く時にはECRS(削除、統合、置き換え、簡素化)のような観点で 、検討していくと柔軟な検討が可能となります。
 このように課題一覧を整理していくことで、課題の抜け漏れや重複といったものがなくなっていきます。さらにその課題に対する打ち手も見えてくるのです。ここまでくれば、あとは優先順位をつけて実際に対策を講じていけば良いということになります。対策を講じる時に必要であれば、 ITエンジニアに依頼するなど、初めて外部の機関を活用する余地が生まれてくるのです。

 以上の3つが横断的思考で仕事を進めるためステップです。それぞれのステップにおいて、課題一覧の作成の仕方や優先順位の付け方など細かな考慮点はありますが、重要なポイントとして押さえてください。DXや業務改革でお困りの場合には、ぜひ参考にしてみてください。

(第27回 2021/9/21)


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