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不定期開催のはじまりは

私には周りから「不定期開催」と呼ばれている事がある。事故救助案件である。

はじまりは真夜中の単独横転事故に遭遇したことから。先に通りかかった方から救急要請だけがかろうじてなされ、誰も触れず只冷たいアスファルトに転がっている男の子。散らばった品々から名前判明。𓏸𓏸君頑張ろうね、もう救急車くるから頑張ろうね。暗くて良く見えないが全身、耳からも出血。少しづつ反応が鈍くなっていく。まわりに声かけ指示して気道確保の為に身体を保定してもらい、脈を確認しつつひたすら彼の名を呼んだ。暫くのち到着した後救急隊へ引き継ぎ、第1発見者でも通報者でも無い私はその場を離れた。

気にはなりつつも、それで終わったつもりだった。

2日後。県外の大学に行ってる筈の弟が帰宅。親友の葬儀だ、と。…え?あれ…?あの子…!
葬儀出棺の時間を確認し、私の事は伏せておくようにと口止めし、時間に霊柩車が通る道の脇からそっと手を合わせた。

これはこれで終わったつもりだった。

数日後。銀行から出てきた私に見知らぬご夫人が近寄ってきて「違ったらごめんなさいね?あなたこの間の事故と、葬儀の時近くにいらしたわよね?」どうやら𓏸𓏸君のお宅の近くの方だった様だ。(彼の自宅まで程近い場所での事故だった)事故の際、ずっと女性が𓏸𓏸君についていたと聞いたご両親が探してらっしゃるの。お話がしたいと。手を合わせに来てたでしょう?だからあなただと思って声をかけたの。

帰宅して(弟は既に学校の為戻って行った)母に正確な家の場所を尋ね、仏花を買い𓏸𓏸君のお宅へ。折しも初七日法要が終わり、まだお坊様もおられたタイミング。呼ばれたのかな?彼に。

ご両親に事故の連絡が行き、病院へ駆けつけた時には既に息は無かった、全身打撲、骨折で即死でもおかしくなかったそうです…と。あんな暗くて冷たい場所で…と思っていたら、ずっと手を握って声をかけて下さった方がいたと聞いて、あの子の最後にそれがあって良かった、お礼だけでも伝えたくて初七日が終わったら本格的に探すつもりでした。とお話されたのでした。

以降、何かと事故現場に巡り合わせ、救助も最早何度、と数えられない位になりました。多分すっかり忘れてしまったものもあります。子の方がお母さん、あそこで誰か助けたよね、って良く覚えていたり。認知症の迷子さんを保護したりも何度あったかな…

第1発見者、通報者でない限り、基本的に名乗りをしない事にしています。もし、あなたの前で何かあった時に助ける側にまわって貰えたら誰かが助かりますから、お互い様ですよ、でスーッと帰るのが常です。

自身の性格上、傍観するバイスタンダーになれなくて、結果「また…不定期開催かい」な事になっちゃうだけなんですけどね。

あ、ひとつだけ気をつけていること。
不定期開催遭遇時は自分の行動圏内なら第1発見者、通報者も厭いませんが場所によっては他の方にお願いします。後日管轄警察署に調書確認で「お願い」召喚される事があるからです。当事者同士の記憶が曖昧な時等に発生します…(これも数回経験あり、足代出ます。領収書書きますがポリスメンのお気持ち規定分なので遠くだと時間もガソリン代も足りません)

てな訳で私まだまだ今後も不定期開催がある事でしょう…防災対策兼ねて、救急セットとゴム手袋等は必ず車に積んであります。

なるべく不定期開催はないほうが平和だけれど、誰かの助けになるならまあ、それはそれで。

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