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企業研究(167) 不祥事企業の研究/3228 三栄建築設計~超優良割安銘柄が継続疑義に転落

企業研究記事の番外編で、不祥事企業の株価を追う記事の第4弾。個人的に旬な三栄建築設計です。


3228 三栄建築設計

株探基本情報(23/8/16)

メルディアDCを傘下に組み入れて子会社10社で「メルディア グループ」を形成。主力事業である戸建分譲を軸に、収益不動産販売や建築請負など幅広い事業展開でグループ全体の持続的成長を目指す。

個人向け木造住宅販売で競合するオープンハウスやケイアイスター不動産と「一般社団法人日本木造分譲住宅協会」を2021年に設立。

<1> 不祥事

創業者であり元社長である小池信三氏が、子会社が2021年に発注した建物解体工事を通じて反社会勢力に利益供与していたことが明るみになり、小池信三氏は当社社長職や上記協会の代表理事を辞任。
以下、不祥事が明るみになった経緯とその後の対応。

22年11月
小池信三氏が「一身上の都合」を理由に社長職・代表理事職を辞任
※不祥事の事実は公表されず、専務の小池学氏が後任となる
23年5月
報道により本不祥事が明るみになるが「関知せず」と表明
23年6月
東京都公安委員会から暴力団排除条例に基づく勧告があり、社長・副社長が辞任して経営体制を一新
第三者委員会など各種委員会を設置
23年7月
上記不祥事を受けて決算発表を延期
23年8月
第三者委員会の報告書受領を受けて、報告書の開示と決算発表を実施
決算短信において、取引金融機関1行(どこかは不明)より「期限の利益の喪失通知」を受けたことなどから、「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況が存在」することを表明

期限の利益の喪失通知 メモ

  • 債務者が期限までに分割払いする権利を喪失したことを通知するもの。

  • 一般的には滞納者に対して一括返済を求める場合が多い。

  • 今回は融資契約にかかる反社会的勢力排除条項に抵触するため通知されたものと想定される。

通知による不渡り発生リスク

  • 取引がある金融機関から通知を取り下げてもらえないと借入金を一括返済しなくてはいけないため、返済資金を用意できない場合に不渡を起こすリスクがあります。

  • 現在、長期借入金が約390億円あります。取引金融機関は20行以上あるようで、通知された金融機関からの借入金規模は不明ですが、1社の通知を「はいそうですか」と看過して支払ってしまっては、他の取引金融機関からも連鎖的に通知されてしまうリスクがあると思います。こうなると不渡りがほぼ確すると思います。

  • なお、1社が不渡りになると、クロス・デフォルトという仕組みが発動されて、他の金融機関も期日を前倒しして債務の返済を要求できる模様。今回の決算短信を見ると、現経営陣は資金不足よりもクロス・デフォルトを心配している模様。

<2> 株価推移

週足チャート by 株探

チャート上の最高値は21年4月の2,149円で、21年後半~22年年初で株価水準を下げています。その後は1,600円近辺をウロウロして、社長辞任後くらいからもう一段水準を下げた感じ。
8月期決算なので、決算発表は10月・1月・4月・7月。株価上げ下げのタイミングと照らしても決算発表はあまり関係なさそう。23年6月の急落はもちろん不祥事発覚によるもの。そこから持ち直して500円以上上げているんですが、何でなんでしょうね…。

<3> 所感&考察

直近で株価を上げている一番の要因は、協会設立で付き合いが深い3288オープンハウスが救済買収するのではと憶測情報が出ているため。
オープンハウスは増収増益基調で直近の決算でも業績好調でしたが、業績拡大がピークを過ぎて踊り場に差し掛かってきたため、決算通過後には株価が急落しています。業績関連だけではなく救済買収によるのれんの重荷も意識されてしまっていると想定されます。個人的には、都内の駅前でオープンハウスの社員(と思われる方々)がパネルもって行き交う人に声掛けしているのを見ると、そんなブラック臭が漂う企業の株を買う気にはならないですけどね…。

現在の株価動向分析(市場の思惑)

  • 第三者委員会の報告書が開示されて、報告書や各種IRからは不祥事に真摯に向き合っているように見えなくもないので、不祥事を起因とした売りは一段落したか。

  • オープンハウスの救済買収(市場価格での株買い上げ)を期待して買いが入っているのかも。その他は「(なぞの)材料出尽くし感」くらいしか買いが入る理由が考えられない。

現実的なストーリー(株価下落リスクの数々)

  • ビッグモーター問題を見ても不祥事に対する社会の目は厳しさを増しているため、金融機関の当社に対する融資姿勢は今後相当厳しくなる。<資金調達困難になるのはほぼ確

  • 3Q累計実績の計画進捗が極めて悪い。4Qで四半期単位の過去最高と同等の実績を叩き出しても最終益達成率は74%程度。<今期業績下方修正or着地リスク 極大

  • 借入金前提のビジネスモデルであり、不渡りリスクがある企業に家を建ててもらいたい人などいないはずなので、今後は業績が相当落ち込むものと想定される。<業績長期低迷リスク 大

  • 長期借入金の借り換えができないと手元現金が必要になるので、配当継続さえ危ぶまれる。<減配・無配転落リスク 大

  • 創業者と反社の付き合いは上場前から始まっていたらしく、上場時の規定に抵触している可能性がある。<上場廃止リスク 中

  • オープンハウスが本当に買収するとしても安く買い叩きたいはず。基本は創業者の小池信三氏が保有する約49%の株式を相対契約で市場価格より安く買い、特定株主や流通株式から買い足して50%以上にして連結化、グループで事業再構築(メルディアの解体)などが想定される。三栄建築設計株の現ホルダーが得するようなことは一切起こらずに買収が進むはず。

考察してみると、なぜ株価が上がっているのか不思議でしかない。高値掴みしてもそんな株価では買い上げてもらえませんよ、多分。

過去記事銘柄フォロー

9625 セレスポ<第1弾>

3/27株価 939円
4/21株価 912円(▲27円)
5/26株価 848円(▲64円) 
8/16株価 890円(+42円)
いつの間にか株価が反転しています。4-6月期業績は赤字に転落していますが、株価は7/20に959円をつけて一時的に不祥事前を上回りました。

1801 大成建設<第1弾>

3/27株価 4,010円
4/21株価 4,260円(+250円)
5/26株価 4,645円(+385円)
8/16株価 4,857円(+212円)
相変わらず株価は堅調。さすがスーパーゼネコン。

7379 サーキュレーション<第2弾>

4/21株価 793円
5/26株価 759円(▲34円)
8/16株価 910円(+151円)
6/13発表の第3四半期決算が良かったので上昇に転じて、現在は平行線。

8887 リベレステ<第3弾>

5/26株価 684円
8/16株価 726円(+42円)
株価を上げてますね…。7/6に高値794円をつけて、7/10に不祥事の事件で起訴されてから水準を下げて揉んでいる感じ。

所感

今回研究銘柄含む5銘柄ともに不祥事発覚後に底値をつけて、そこから株価を回復させています。
市況が良かったことも要因としてあるので一概には言えませんが、株式投資的には急落後にチャンスがあるようにも見えます。ただ、「触らぬ神に祟りなし」ですのでおススメは一切しません。

追記 まさかのTOB

本記事のアップが16:00過ぎ、公開買い付けリリースが18:15。思惑を読み間違いました💦 買付価格は2,025円。

三栄建築設計の1株あたり純資産

① 純資産合計(23年5月末) 約611.9億円
② 発行済株式数 約2,121.7万株
①÷②= 2,884円

オープンハウスのデューデリジェンス(資産評価や簿外債務等のリスク調査)では、1株2,025円で買い付けても黒字(=負ののれん)になるから公開買い付けを選択したのかもしれません。額面だけみたら1,820億円くらいの負ののれんになるので、これを20年以内で償却できるなら安い買い物だし、三栄建築設計は設計力に定評があって市場でも飛び切りの割安銘柄ですので、時間をかけて企業力が損なわれてから買っても仕方がないですからね。
「大規模M&A=のれんの発生」というイメージで凝り固まっておりました。のれんまで計算して分析できていたら乗れた波だったかもと反省しております。

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