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健康増進型保険の特徴と留意点

厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」によると、2019年の健康寿命は、男性が72.68年、女性が75.38年です。
平均寿命(男性81.41年、女性が87.45年)と比べて、男性は8.73年、女性は12.06年の差があります。
2010年と比べて、平均寿命は男性が1.86年、女性が1.15年増加しているのに対し、健康寿命は男性が2.26年、女性が1.76年増加しています。
健康寿命の増加分は平均寿命の増加分を上回っているのです。

つまり、人生のなかで健康でない時期が長くなっているというわけです。
だれしもできるだけ長く健康でいたいと思っています。
そのため、運動や病気予防といった健康増進活動に取り組んだり関心をもったりする人が増えてきています。
 
そうした背景から2017年に登場したのが健康増進型保険です。
従来の保険は病気などのリスクに備えるためでしたが、新たにリスクを減らすという観点を加えた保険です。
健康増進型保険とはどういうものなのかについてお話しします。


1 健康増進型保険とは


健康増進型保険は、加入後の健康状態の申告や生活習慣の改善行動により、保険料割引や還付金受け取りができる保険です。
健康増進型保険という保険商品が販売されているわけではありません。
医療保険や死亡保険などの生命保険に健康増進特約を付帯して契約するものです。
従来は、加入時の保険料が途中で変わることは原則としてありませんでした。
加入後に保険料の割引や還付があるという点で画期的な商品なのです。
なお、加入後は健康状態や健康増進活動について保険会社への通知が必要になります。

2 健康増進型保険の種類


健康増進型保険には、2つの種類があります。
 

(1)健康診断の結果から保険料が割引になるタイプ


毎年または数年ごとに健康診断の結果を保険会社に提出します。健康診断で良好な結果が出た場合など、一定の基準を満たした場合に保険料が割り引かれます。

(2)健康増進への取組みにより保険料が割引になるタイプ


契約後の日常的な運動量(ウォーキングなど)といった健康増進への取組みに応じて保険料が割り引かれます。
健康診断の結果は問われない商品もあります。

3 健康増進型保険の事例


<M社>
毎年の健康診断の結果に応じてキャッシュバックが支払われます。
健康診断結果にかかわらず一律保険料の0.1カ月分がキャッシュバックされます。
健康であればあるほどキャッシュバック金額が大きくなり、最大1.1カ月分となります。
 
<S社>
健康増進の取り組みに応じて保険料が割引されます。
保険料15%割引からスタートします。
つぎのような取り組みを会員ポータル(月額数百円の利用料がかかる)で入力することによりポイントが付与されます。
・生活習慣チェックを行う
・健康診断結果を提出する
・がん診断や予防接種を受けたことを証明する画像をアップロードする
・スマホなどで歩数や心拍数のカウント結果をアップロードする
・フィットネスクラブに予約、チェックインして運動する
累計ポイントにより、最大で30%まで保険料が割引されたり、さまざまな特典が受けられたりします。
特典には、施設利用や店舗、ホテルでの割引、商品交換チケットなどがあります。

4 健康増進型保険のメリットとデメリット


健康増進型保険のメリットとデメリットはつぎのとおりです。
 

(1)メリット

 
①保険料が割引される
健康増進型保険の最大のメリットは、保険料が割り引かれる点です。
保険会社が定める基準を満たすと、月々支払う保険料を抑えることができます。
 
②健康に対する意識が高まる
健康増進型保険は、健康意識を高めるきっかけとなります。
保険料の割引や還付などお得になることがきっかけで健康診断や運動習慣に対する意識が高まり、健康づくりに取り組む人もいます。
 
③健康プログラムへ参加できる
健康増進型保険には、健康プログラムへの参加が含まれることがあります。
たとえば、ウェルネスアプリや健康相談サービスを利用できるといったことです。

(2)デメリット

 
①健康状態に問題があると割引されない
健康増進型保険は、健康状態が一定の基準を満たさなければ割引されません。
加入当初に良好な健康状態で割引を受けていても、健康診断で異常が指摘されると割引が適用されなくなります。
 
②割引されてもほかの保険商品より保険料が高い可能性がある
健康割引を受けても、ほかの保険商品の保険料のほうが安い場合があります。
保険料を比較して検討することが必要です。

5 健康増進型保険を検討する際のポイント


(1)必要な保障を優先する


健康増進型保険は、医療保険や総合保険などに特約として付帯するものです。
保険の選択においては、万が一の際に必要な保障を受けられる保険を選ぶことが大事です。
まずは必要な保障を満たす保険商品を選んだあとに、健康増進割引の特約を付帯するかどうか検討するとよいでしょう。

(2)保険料の妥当性を検討する


割引になるといっても特約保険料が必要になる商品もあります。また、健康状態によっては保険料が高くなる場合もあります。
健康増進型保険により受けられるメリットが保険料に見合うかどうかきちんと確認する必要があります。

(3)健康増進への取り組みを継続できるか


健康診断結果を提出するだけなら負担は少ないですが、健康増進活動が条件となる用品は地道な継続が必要になります。
健康増進活動への意欲や適性が自分にあるのかをきちんと見極めることが大事になります。
 

 
健康増進型保険は保険料が安くなることだけにとらわれてはいけません。
特徴や条件をよく理解して、必要性を判断することが大事です。

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