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「国の教育ローン」のメリットとデメリット、返済上の留意点

国の教育ローン(教育一般貸付)は、政府系金融機関である日本政策金融公庫が扱っている教育ローンです。教育に関する家庭の経済的負担の軽減と教育の機会均等を図るという政策上の目的を担っています。

2022年度の利用件数は約9万件にも上ります。
進学先別の内訳は、大学が49.2%、専修学校が26.2%、高校が13.1%などとなっています。
また、進学先別の1件当たりの平均融資額は、大学が156万円、専修学校が147万円、短大が142万円などと小口の利用が多いです。

教育費用をまかなうには、奨学金や民間金融機関の教育ローンといったほかの手段もあります。どれを選択したらよいのか迷う方もおられるでしょう。
それらとの比較も含めた国の教育ローンのメリットとデメリット、返済上の留意点についてお話しします。


1 国の教育ローンのメリット


(1)幅広い使いみちに活用できる


国の教育ローンは、使いみちが学校に納める入学金や授業料だけに限られていません。受験にかかる費用や定期券代、賃貸物件の費用、パソコン購入費、修学旅行費用、学生の国民年金保険料など幅広く利用できます。

(2)必要なタイミングで申込みできる


奨学金は申込できる期間が決められていますが、国の教育ローンは1年を通していつでも申込みできます。
ただし、審査結果の通知までに10日前後、さらに融資の実行までに10日前後かかることがあるため、余裕をもって申込むことが大事です。
日本政策金融公庫では必要時期の2~3カ月前に申込むことを勧めています。
また、入学資金については、入学する月の翌月末までに借入しなければなりません。

(3)入学前に借入できる


奨学金は入学後に支給開始となりますが、国の教育ローンは、入学許可証や合格通知書などを確認できれば融資実行してもらえます。よって、納付期限までに入学金を支払うために融資金を充てることができます。
また、高校生が大学などの受験料を支払う場合などは、在学費用として、合格前に借入することが可能です。

(4)融資金は一括で受け取れる


奨学金は毎月一定額を支給されます。国の教育ローンは、融資金を一括で受け取れるため、アパートの敷金など、入学時の多額の出費に充てることができます。

(5)固定金利、長期返済できる


融資時点の利率が完済まで変わりません。
民間金融機関の教育ローンには変動金利のものがありますが、金利上昇局面では返済負担が重くなる場合もあり注意が必要です。
また、返済期間は最長18年間で設定できるので、無理なく返済することが可能になります。

(6)学生の学力を問われない


奨学金と違って、国の教育ローンには学生の学力要件はありません。
一定以上の学業成績は要件とされていないため、奨学金を利用できない方でも借入れできる可能性があります。

(7)子どもに返済の負担がかからない


国の教育ローンは原則として保護者が借主となって返済していきます。
卒業後に子ども自身が返還していく奨学金と違い、子どもに返済の負担をかけずにすみます。

2 国の教育ローンのデメリット


(1)借入できる金額に上限がある


原則として、学生1人あたり350万円までしか借りることができません。
民間金融機関の教育ローンは、1,000万円を超える上限を設定している商品もあります。
医療系の大学など高額の教育費用をまかなうには国の教育ローンは使い勝手がよくない場合もあります。

(2)所得の上限がある


国の教育ローンは、政策上、低所得者を対象としています。そのため、民間金融機関の教育ローンと違って、世帯所得の上限額が定められています。上限額を超える世帯は申込できません。
ただし、奨学金と比較して上限額は高いので、奨学金が対象にならない世帯でも、国の教育ローンでは対象になるケースがあります。

(3)審査があり、断られるケースもある


国の教育ローンは、収入・支出、諸支払いの状況などをもとに審査があります。奨学金と違い、申込要件を満たしていても融資を断られる場合があります。
なお、民間金融機関の教育ローンも同様に審査があります。
日本政策金融公庫と民間金融機関とで、どちらの審査が厳しいかはケースバイケースです。

(4)利子を支払わなければならない


返済が不要な給付奨学金と違って、国の教育ローンは返済が必要な借入金です。
また、返済が必要な貸与奨学金に比べて、国の教育ローンは利率が高めです。
ただし、民間金融機関の教育ローンと比較すれば、利率は低いです。

(5)利便性が高くない


国の教育ローンは一括で融資が実行されます。
民間金融機関の教育ローンには、カードローンタイプを取り入れている商品もあります。必要なときに限度額の範囲内で何度もお金を借りられるので、継続的に教育費が必要なときに便利です。

3 国の教育ローンの返済上の留意点 


(1)返済計画のポイント


 
①将来の収入の見込みを予測する
返済計画を立てるには、完済までの将来の収入がどれくらいになるのかを予測することが重要です。
退職までの年数や収入減となるタイミング、転職の可能性などを考慮する必要があります。
 
②無理のない返済期間を設定する
①を踏まえて毎月の返済額を設定し、確実に返済できる返済期間を設定しましょう。
短期間で完済したいなら毎月の返済額を多めに、長期間で返済したいなら少なめに設定することになります。
トータルで支払う利息額は期間が長いほど高額になることも理解しておきましょう。
また、失業や病気などの予期せぬ事態に備えて、返済計画に余裕をもたせることも大事です。
 
③返済スケジュールを確認する
融資実行後、金融機関から返済予定表が送られてきます。
毎月の返済額や総返済額を把握し、期日通りに返済していくようきちんと管理する必要があります。
 
なお、日本政策金融公庫のホームページで「返済シミュレーション」ができるので、返済計画を立てる際の参考になります。

(2)繰上げ返済


返済期間中に、お金に余裕ができた場合、繰上げ返済を行うことができます。国の教育ローンでは手数料はかかりませんが、振込手数料は負担が必要です。
繰上げ返済にはいくつかのメリットがあります。
 
①利息負担が軽減される
繰上げ返済により残高が減少するため、以後の利息負担が軽減されます。その結果、トータルの利息額を減らすことができます。
 
②返済期間を短縮できる
繰上げ返済により返済期間が短縮されるため、将来的な経済的負担を軽減できます。
 
③信用力が向上する場合がある
繰上げ返済により借入金が減少するので、クレジットカード作成や新規融資申込の際に信用力が向上する可能性があります。
 
④心理的安心感がある
借入金を減らすことで、心理的な安心感が得られ、将来への不安を和らげることができます。
 
⑤保証料が戻る場合もある
教育資金融資保証基金による保証を選択した場合は、借入時に全返済期間の保証料を支払っています。繰上げ返済により、この保証料が一部戻るケースがあります。
 


 
教育費用が手持ちの資金のみでは不足する場合は、まずは奨学金の利用、次に国の教育ローン、最後に民間金融機関の教育ローンの順で検討する方が多いようです。
国の教育ローンは、さまざまな手段を比較し、メリットとデメリットを理解したうえで申込むとよいでしょう。返済についてもあらかじめしっかり考えておくことが大事です。

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