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10月から拡充される児童手当

子育てにかかる費用は、子どもの年齢や進路によって大きく変わりますが、総じて多額になります。
さまざまな試算がありますが、大学卒業まで3,000~4,000万円程度とするものが多いようです。
子育てをしている家庭を経済的に支援する制度のひとつに児童手当があります。
少子化対策の目玉として注目されています。
 
2024年9月現在の児童手当の概要はつぎの表のとおりとなります。

(出所)こども家庭庁「児童手当制度の概要」より抜粋

 
児童手当は2024年10月から大幅に拡充されます。その内容も含め児童手当の内容や注意点についてお話しします。


1 児童手当の歴史


わが国の児童手当は1972年に創設されました。
 
(1)背景と経緯
児童手当が創設された背景には、少子化対策と経済的支援があります。
戦後の高度経済成長期において、出生率の低下が進んで少子化対策が急務となり、子育て家庭への経済的支援が必要とされました。
そこで、子育てにかかる費用の負担を軽減し、家庭の生活の安定を図るために、児童手当が導入されました。
 
創設当初は第3子以降が対象でしたが、1986年に第2子、1992年には第1子まで対象が拡大されました。
対象年齢は2010年から中学校卒業までに拡大されました。
また、支給額も創設当初は月額3,000円でしたが、段階的に引き上げられてきています。
 
(2)目的
 
①家庭の生活安定
児童手当は、子育て家庭の経済的負担を軽減し、家庭の生活の安定に寄与することを目的としています。
 
②児童の健全な成長
次代の社会を担う児童の健やかな成長を支援するために、経済的な支援を行います。
 
③子育て支援の充実
子育て家庭が安心して子育てできる環境を整えることを目指しています。

2 2024年10月からの児童手当の拡充内容


2024年10月から大幅に拡充される児童手当のポイントは4つあります。

(1)所得制限を撤廃


これまでは所得制限がありましたが、今後は所得にかかわらず全額支給されます。

(2)支給期間を高校生年代まで延長


これまでは中学生以下が支給対象でしたが、今後は高校生年代(18歳の誕生日以後の最初の3月31日まで)も支給対象となります。

(3)第3子以降の支給額を3万円に増額

第3子以降の支給額が月額3万円に増額されます。
子が3人以上の世帯が減少していることから、多子世帯にさらに手厚い支援を実施します。

(4)支払回数を偶数月の年6回に増加


4カ月分ずつ年3回から、2カ月分ずつ偶数月年6回の支給に変更されるため、活用の計画が立てやすくなります。
 
拡充後の児童手当の概要はつぎの表のとおりとなります。

(出所)こども家庭庁「児童手当制度の概要」より抜粋

3 児童手当の申請方法

 
(1)申請場所
お住まいの市区町村の役所で申請を行います。公務員の場合は勤務先で申請します。
 
(2)必要書類
たとえば、仙台市の場合はつぎのとおりです。
・認定請求書
・請求者名義の金融機関口座の写し(配偶者、児童名義の口座は不可)
・本人確認書類
(そのほか、該当者のみ必要な書類として、請求者の健康保険証の写し、各種申立書など)
 
お住まいの市区町村によって異なりますので、詳しくは担当窓口へ問い合わせるかウェブページなどで確認しましょう。
 
(3)申請期限
【出生の場合】出生の日の翌日から15日以内
【転入の場合】転出予定日の翌日から15日以内
 
なお、15日以内には土日祝日も含まれます。
ただし、15日目が土日祝日の場合は、翌開庁日までを15日以内とします。
 
(4)申請手続き
必要書類を揃えて、役所の窓口に提出します。
申請が受理されると、原則として申請した月の翌月分から手当が支給されます。

4 児童手当を受給する際の注意点

(1)住民票ができないと児童手当を認定できない


出生届が受理されて住民票ができないと児童手当が認定されません。
里帰り先で出生届を提出する場合、お住いの市区町村で子の住民票ができるまでに2週間ほどかかります。15日を過ぎそうな場合はお住いの市区町村の窓口に問い合わるとよいでしょう。

(2)申請した月は受給できない


原則として、児童手当は申請した翌月分から支給されます。
ただし、出生日や転出予定日の翌日から15日以内の申請であれば出生日・転出予定日の属する月の翌月分からの支給になります。
たとえば、5月20日出生の場合、6月4日までに申請をすれば6月分の手当から支給されます。

(3)遡って受給できない


児童手当は申請した翌月から支給対象となります。
申請が遅れた場合は、その分を遡って受給できません。

(4)公務員は勤務先へ申請する


手当を受け取る人が公務員の場合には、お住まいの市区町村ではなく、勤務先から受給するので、手続きは勤務先で行います。
退職等により公務員でなくなった場合は、退職等の日の翌日から15日以内にお住まいの市区町村へ改めて申請する必要があります。

(5)海外に住んでいる子は受給できない


子が海外に住んでいる場合、原則として児童手当は給付されません。
ただし、留学など特定の条件を満たす場合は例外があります。

(6)単身赴任で子と別居する場合は転入先へ申請する


単身赴任等で受給している人がほかの市区町村へ転出した場合、転入先の市区町村で改めて申請手続きを行う必要があります。

(7)現況届の提出が必要な場合がある


つぎに該当する人は、現況届の提出が必要になります。
対象者には6月上旬に市区町村から通知されます。
 
・住民基本台帳上で住所を把握できない、法人である未成年後見人
・離婚協議中で配偶者と別居されている人
・配偶者からの暴力等により、住民票の住所地と異なる市区町村で受給している人
・支給要件児童の戸籍がない人
・施設等受給者
・その他、市区町村から提出の案内があった人

(8)お住まいの市区町村に届出が必要になる場合がある


つぎに該当するときは、お住まいの市区町村に届出が必要です。
 
①児童を養育しなくなったことなどにより、支給対象となる児童がいなくなったとき
②受給者や配偶者、児童の住所が変わったとき(他の市区町村や海外への転出を含む)
③受給者や配偶者、児童の氏名が変わったとき
④一緒に児童を養育する配偶者を有するに至ったとき、または児童を養育していた配偶者がいなくなったとき
⑤受給者の加入する年金が変わったとき(受給者が公務員になったときを含む)
⑥国内で児童を養育している者として、海外に住んでいる父母から「父母指定者」の指定を受けるとき

(9)保育料や学校給食費などが児童手当から差し引かれる場合がある


各市区町村の判断により、手当から保育料を差し引くことが可能です。
また、手当を受給している人からの申出により、学校給食費などを差し引いて児童手当を支給することができます。

5 2024年10月の拡充後に新たに申請が必要な人


つぎの人については、児童手当を受給するために、お住まいの市区町村への申請が新たに必要になります。
2025年3月31日までに申請すれば2024年10月分から児童手当が支給される申請猶予期限が設けられています。
 
①高校生年代の児童を養育している人(現在中学生以下の子を養育しており、児童手当を受給している人を除く)
 
②中学生以下の児童を養育しているが、所得上限限度額を超過し、児童手当も特例給付も受給していない人
 
③児童の兄姉等(注2)について監護に相当する世話等をし、その生計費を負担している人(「監護相当・生計費の負担についての確認書」等の提出が必要)
 
(注2)18歳に達する日以後の最初の3月31日を経過した後の22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあって親等に経済的負担のある子
 
④施設等受給資格者で、その委託等されている児童のうちに、高校生年代の児童がいる人
 
⑤新たに施設入所等児童となる者がいる人
 

 
児童手当は出生により自動的に受給できるわけではありません。さまざまな注意点をよく理解して、必要な手続きは早めに行うことが重要です。
また、子どもにかかる費用は、高校から大学にかけてピークとなります。受給した児童手当をただちに生活費等に充てるのではなく、貯蓄などにより将来の教育費用などに備えるとよいでしょう。


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