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子どもの教育費用はどのようにして準備すればよいか(後編)

前編(預貯金や積立投資、学資保険、児童手当)からのつづきとなります。



4 高等教育の修学支援新制度


高等教育の修学支援新制度は、意欲ある子供たちの進学を支援する制度です。大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化する目的で2020年4月に開始しました。
住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯であることが要件となります。

2024年度から対象が拡充されています。世帯年収約600万円(目安)までの世帯のうち、子供3人以上を扶養する多子世帯や私立理工農系の学部・学科に通う学生等です。

授業料・入学金の免除または減額と、返還を要しない給付型奨学金の2つの支援策があり、両者を併用することができます。
 
①授業料・入学金の免除または減額(授業料等減免)
大学、短期大学、高等専門学校(4年・5年)、専門学校の授業料や入学金を一部または完全に免除または減額します。
 
②給付型奨学金の支給
次項で述べる、返済を要しない形で給付される奨学金の対象となります。

5 奨学金


日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査」によると、奨学金を受給している学生の割合はつぎの通りとなっています。
大学(昼間部):55.0%
短期大学(昼間部):61.5%
大学院修士課程:51.0%
大学院博士課程:58.9%
2人に1人が奨学金を受給していることになります。
 
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度について説明します。
日本国内の大学、短期大学、専門学校、高等専門学校に在籍している学生を対象としています。
世帯収入が一定基準以下であること(家計基準)と、学業成績が良好であること(学力基準)を満たす必要があります。

(1)給付奨学金
返還不要の奨学金です。審査基準は貸与奨学金よりも厳しいです。
給付奨学金の対象となれば、前項で述べた授業料減免等が適用されることになります。

(2)貸与奨学金
卒業後に返還が必要な奨学金です。審査基準は給付奨学金よりも緩やかです。
無利子型と有利子型の2つのタイプがあります。
 
①第一種奨学金(無利子で借りる)
利子の付かない貸与奨学金です。
ただし、返済期間内に卒業できなかった場合、利子が発生することがあります。
 
②第二種奨学金(有利子で借りる)
利子の付く貸与奨学金です。
第一種奨学金と第二種奨学金を併用することも可能です。
金利が発生するため返済額が増えることになりますが、第一種奨学金よりも長期間で返済できる場合があります。
 
③入学時特別増額貸与奨学金(利子付)
第一種奨学金または第二種奨学金に加えて、入学した月の分の奨学金の月額に一時金として増額して貸与する有利子の奨学金です。
日本政策金融公庫の「国の教育ローン」に申込んだが利用できなかった世帯の学生を対象とする制度です。
 
④海外留学のための奨学金
海外の大学や大学院に進学するための奨学金です。
利子の付かない第一種奨学金と、利子の付く第二種奨学金があります。

6 教育ローン


教育ローンは、入学費用や在学費用などの教育費用を金融機関から借入れして返済していくローンです。
日本政策金融公庫の「国の教育ローン」と、民間金融機関の教育ローンとがあります。
 
国の教育ローン(教育一般貸付)は、保護者が子どもの教育費を支払うために利用するものです。
世帯収入が一定額以下であることが要件となります。
大学、短期大学、専門学校、高等専門学校、高等職業学校、高等養護学校、特別支援学校に在籍する学生が対象です。
入学金、授業料、学用品、生活費など、教育に必要な費用に幅広く使うことができます。
利用限度額は、子ども1人につき最大350万円です。一定の要件を満たす場合は最大450万円まで借入れ可能です。
利率は低く設定されており、元金の返済は卒業後から始めることもできます。
返済期間は最長18年と長期に設定できます。
 
一方、民間金融機関の教育ローンは、金融機関によって利率などの融資条件が異なります。利率は年2.0~5.0%程度であることが多く、国の教育ローンより高めです。
高額の借入ができたり、収入要件がなかったりといった違いもあります。
 
教育ローンは、必要なタイミングで申込みできたり、子どもに返済の負担がかからなかったりといったメリットがあります。
ただし、利率が奨学金より高めです。
返済計画を立てて、無理のない範囲で借り入れすることが大事です。

7 教育費用の準備は計画的に早期に始めるべき


子どもが合格してから、入学金が支払えないことに気づき、あわてて金融機関に教育ローンを申込む方がいます。それでは遅きに失すると言わざるを得ません。そもそも金融機関の審査が通るかどうかわからないし、通ったとしても納付期限に間に合わないこともあります。

いまや高校を卒業して大学や専門学校へ進学する子どもは多いです。
ですから、子どもが生まれた時点でライフプランを立て、教育費を計画的に準備し始めることが大事なのです。
教育費は大きな負担ですが、早めに対策することにより安心感を得られます。
教育資金は、短期間に準備しようとするのではなく、毎月少しずつでよいから長期的に積み立てていくことが有効なのです。
そして、貯蓄等で不足する分を奨学金や教育ローンで補填するという考え方をもつべきなのです。

8 高等教育の修学支援新制度、奨学金、教育ローンの入金時期を知っておく


授業料等減免と奨学金の支給にかかる実際の入金時期について、誤解している方が少なくありません。

授業料等減免は、減免額相当分を年に2回(10月末・3月下旬)振り込まれます。4~9月分が10月末日、10~3月分が3月下旬になるのです。

日本学生機構の奨学金は、原則として毎月11日に振り込まれます。ただし、4月は21日、5月は16日が振込日となります。
初回の奨学金が振込まれる時期はつぎの通りです。進学前に申込む予約採用で採用候補者になっている方は、「進学届」の提出後、4~6月のいずれかの月になります。
入学後に申込む在学採用の場合は、申込締切月の2か月後になります。早くても6月です。初回振込み時には、支給始期からの月額がまとめて振込まれます。

ですから、入学金を支払うには、一時的に立替えるかほかから借りてこなければ納付期限に間に合わなくなります。

一方、教育ローンは、合格通知を金融機関が確認できば融資してもらえるので、入学金の納付期限に間に合わせることができます。

奨学金にするか、教育ローンにするかといったことは、それぞれの入金時期も考慮する必要があります。
ですから、納付期限に間に合わなかったということがないよう、早めに計画的に準備を進めることが大事なのです。

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