ペアローンのメリットと注意点
1 ペアローンとは
ペアローンは、ひとつの不動産物件について、夫婦などがそれぞれ債務者となって住宅ローンを組む借入れ方法です。
金融機関によっては、夫婦以外でも親子、婚約者、事実婚、同性パートナーなどでも組むことができます。
不動産物件は共有名義とし、それぞれが担保提供者となり、また、互いの借入れについて連帯保証をします。
共働き夫婦など、それぞれに収入がある点を生かすので、一人で借入れするよりも多くの金額を借入れできるようになります。
審査では、それぞれの借入れについて、それぞれに返済力、つまり安定収入があることが必要になります。
一方、複数人が連帯債務者となって借入れを行う方法や、一人の債務者が借入れしてもう一人が連帯保証人となる方法もあります。
いずれも返済について共同責任をもつことになります。主に返済を担う者が返済を怠った場合、連帯債務者や連帯保証人となっている者が代わりに返済しなければなりません。
審査では、主に返済を担う者の収入が重視されます。
2 ペアローンの利用状況
三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年4月)から引用します。
住宅ローン利用者のペアローンの利用率は10.8%です。
とくに20歳代は16.5%、30歳代は18.6%とペアローンの利用率が高く、全年代と比較するとおよそ1.5倍の水準です。
また、いずれの年代においてもペアローンの方が単独ローンよりも当初借入れ金額が高額化しています。全年代平均で1.2倍となっています。
不動産価格が上昇しており、夫婦やパートナーなどが協力して理想の住宅を手に入れようとするケースが増えているのでしょう。
3 ペアローンのメリット
(1)単独ローンよりも高額な借入れができる
それぞれの収入を合算することで、単独でのローンよりも多くの借入れが可能になります。
たとえば、夫婦の収入が同額なら、一人で借入れするよりも2倍の借入れができる可能性があります。
(2)審査が通る確率が高まる
それぞれの信用情報や収入を加味できることで、審査通過の可能性が高まります。
とくに、一方の債務者が自営業者やフリーランスである場合などは、単独では厳しいケースでも承認される可能性があります。
(3)住宅ローン控除をそれぞれが受けられる
住宅ローン控除の要件を満たせば、それぞれが住宅ローン控除の適用を受けられます。
たとえば、2024年に新築した省エネ基準適合住宅の場合、控除対象の住宅ローンの年末時点での残高の上限額は3,000万円となります。
一人で4,000万円借入れした場合は、3,000万円が限度となります。
一方、二人で2,000万円ずつ借入れした場合は、それぞれ2,000万円ずつ、合計4,000万円が控除対象となるのです。
(4)それぞれが団体信用生命保険に加入できる
要件を満たせば、それぞれが団体信用生命保険に加入できるので、一方に万が一のことがあっても安心できます。
(5)借入れ金額や金利タイプ、返済期間などをそれぞれが選べる
それぞれの年収や将来の働き方などに合わせて借入れ金額や借入れ条件を個別に設定することができます。
また、片方が固定金利、もう片方が変動金利と、異なる金利タイプを選んで、将来の金利変動リスクを軽減させることもできます。
4 ペアローンの注意点
(1)将来の収入見通しを検討する必要がある
出産、子育て、介護、転職などにより片方の収入が減少したりなくなったりしたときに返済できるか考慮する必要があります。
また、失業や病気などの予期せぬ事態に備えて、十分な予備費を確保することも重要です。
(2)収入減少が住宅ローン控除や借替えに影響することがある
たとえば、片方が正社員からパートタイマーに切り替えたり、無職になったりすると影響があります。
住宅ローン控除が受けられなくなったり、住宅ローンの借替えのための審査が通らなくなったりすることもあるのです。
(3)借入れ金額が大きくなりがち
ペアローンでは2人でより高額の借入れができるので、返済能力を超える高額物件を購入してしまうリスクがあります。適切な価格の物件を選択しましょう。
(4)契約時のコストが増える
ペアローンでは2本の住宅ローンを組むため、事務手数料、登記手数料といった契約時のコストが2倍になります。
(5)管理が複雑になる
ローンが2本になるため、管理が複雑になります。それぞれの返済計画や財務状況の共有も必要になるでしょう。
(6)離婚したときの財産分与が複雑になる
離婚時には住宅を売却するか、どちらかが住み続けるかの選択を迫られます。
住宅を売却してローン完済後の残金を分割する方法もありますが、共有名義となっているので売却には双方の合意が必要になります。
片方が住み続ける場合は、名義変更が必要になります。もう片方のローンを完済させるか、その分を上積みして借替えるか選ぶことになります。
しかし、完済させるだけの預貯金がない場合や、借替えの審査が通るための収入がない場合などは難しくなります。
さらに、離婚しても完済するまでは連帯保証人として相手のローンの返済に責任をもたなければなりません。
借入れ時には、以上のようなことも十分考慮する必要があるのです。
(7)片方が死亡しても自分の債務は残る
ペアローンでは、夫婦それぞれが債務者となります。
片方が亡くなった場合、亡くなった方の住宅ローンは団体生命保険で完済しても、残された自分の返済義務はそのまま残ります。
5 返済計画を立てる際のポイント
(1)今後の収入と支出の把握
今後の月々の収入と必要な支出(住宅ローン返済、生活費、光熱費など)を把握します。将来のライフイベントや収入変動を十分に考慮しましょう。
(2)ローンの返済額の設定
無理なく返済できる月々の金額を決めます。返済額は、収入と支出のバランスを考慮して適切に設定しましょう。
ボーナス払いの併用により月々の返済額を抑えることができます。ただし、今後の働き方の変動も考慮しておく必要があります。
(3)借入れ先の選定
金利以外の条件も考慮して借入れ先を選びましょう。複数の金融機関を比較し、返済条件などをチェックします。
金利プランは、自分に合ったプランを選びましょう。固定金利と変動金利の違いを理解し、将来の金利変動を考慮して選択します。
(4)返済スケジュールの作成
返済スケジュールを作成し、毎月の返済日を設定します。自動引き落としを利用することで、返済漏れを防げます。
(5)予備費の確保
想定外の事態に備えて予備費を確保することも大事です。貯蓄などにより手元資金を増やしていくことも計画に組み込むとよいでしょう。
最終的な返済計画は、互いのニーズや状況、将来の変動の見通しに合わせて調整し、無理なく返済できるように作成しましょう。
6 まとめ
ペアローンを利用する際は、借入れ金額を大きくできるメリットだけに目を向けてはいけません。つぎのような点も必要条件となるでしょう。
・ローン完済まで互いに十分な安定収入が見込めること
・将来に向けてライフプランが大きく変わらないこと
・予備費を十分に確保できること
さらに互いの信頼関係や財政状況の変動も慎重に考慮する必要があります。
そして、慎重に返済計画を立て、リスクを最小限に抑えることが大切なのです。
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