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「色ボケしてるときのお前は愚かで可愛いよ」と、長くわたしを見てきた男は笑う。我ながらそう思う。 *** 「髪を切ったよ」「早く見たいな、会うのが楽しみ」 そんな言葉が恋人の口から溢れることに新鮮な驚きを覚える秋、恋人は、週末ときどきわたしの部屋を訪れるようになった。恋人宅のほうがキッチンが広いのだけれど、調理器具や使い勝手では慣れた自宅が勝る。 ベリーをたっぷり入れたパウンドケーキを焼いておいたから、お気に入りの紅茶を淹れてティータイムにする。わたしはダージリンよりは