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Amoreへ

別れを告げたあと甘いこと辛かったこと恨みつらみ恋しさ、様々なことを思い出すけれど、タトゥーもそのうちのひとつだ。

中途半端に日に焼けた腕に料理人への覚悟を掘ったデザインはとてもダニーロらしくて大好きだった。限りなく濃い深い青。ふざけて「いつ私の名前を入れるの」と聞いた。「お前はいつ入れるんだ」と笑った。もうあのタトゥーを見ることもないのね。

あなたはどこでも愛されるから、誰にも邪魔されずに天下取ってね。雑誌に載ったら教えてよ。まだ連絡取ってたら。

若くて健康な女の子(日本人が好きなら、あなたの街で探してみな、…私が口出すことじゃないね)と出会って、最高の笑顔で笑っててよ。そしていいパパになるんだよ。約束だよ。君が赤ちゃんを抱っこして満面の笑みで写真におさまっているのが目に浮かぶの。

ネガティブで心配性な私にいつも「失敗も経験だ」「絶対によくなる」「無理と思ったら無理だ」と言い続けてくれた。あなたが私をここまで連れてきたよ。情けない私を見捨てる代わりに呆れて笑って一緒にいてくれたね。

ダニーロの首筋から短く刈り上げた短髪と、眠る横顔が本当に本当に可愛くてカメラロールに同じアングルの写真が何枚も入ってるの(笑)

私が高熱を出して寝込んでいた日、短い休憩時間でミカンとヨーグルトとチーズとパンを買ってきてくれた。

アモ!って呼ばれるとドキッとするくらいに振り回されたけど、頼りにされてるのが嬉しかったな。お姉ちゃんは頑張っちゃったよ。楽しかったね。窓から鳥が入って来ると脅かしたり、私が本気で怒るくらいにいつまでもちょっかい出してきたね。涙が出て眠れない夜は「うるさい。考えるな。目をつぶれ」と、自分も固く目を閉じて寝ようと頑張ってて、だから私も言うこと聞いたらすぐに眠れたよ。考えてもしかたないもんね。

「次はいつ会えるのかな」が気づけばもう2年経ってしまった。ダニーロがイタリアに帰ってしまった2019年の春、その夏に1週間ぐらいまた東京に来た。それから半年後に私が1週間イタリアに会いに行った。その後、私は仕事を辞めてスイスに行ったんだ。最後に一緒に過ごした3ヶ月はただただ、一緒にいるのに本当に孤独で。二人で越えなきゃいけない壁を二人で乗り越えられなかったね。

アモ、さよなら。最後のキス、どんな感じだっけ。もう忘れちゃったよ。失恋ってどんな恋でも辛いから、もうこの人生で失恋をしなくて済むと思えたのもあなたに会えた幸せのひとつだったのよ。アモは絶対にどんなことがあっても私のそばから離れないって私は知ってたからね。

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