バカみたいな欲情
彼のことは10代から知っていた。
大きな仕事を一緒に乗り越えた後輩であり、また、プライベートで遊びに行く友達のなかの1人でもあった。
1人が嫌いな寂しがり屋。かまってさんでいつでも何時でも連絡してくるそいつは、私の中ですっかり弟のような存在だった。
少し前から彼は「語りたい」という理由から2人で飲みに行こうと打診してくることが多くなった。
私もすきぴとうまくいっておらず、彼もまたキープされていた初恋の女の子から正式にふられたばかりだった。
なんとなく変な気がしてだらだらと断ってきたけれど、今回の彼の目は少し違った。
「俺ん家にこない?」
彼はそう言った。
「語ろうや」
私はなんとなく気づいていた。
彼の家にあがってしまえば一夜を共にすることになるだろう。9歳も下の男と、セックスできるものか。
その日私はすきぴとご飯の約束をしていた。
しかし連絡はなかなか来ず、モヤモヤしたまま当日を迎えていた。
行くのか行かないのかも分からない。そんな状態で彼は「すきぴさんからこのまま連絡が来なかったら飲みに行こう」と言ってきたのである。
すきぴは彼とも知り合いで、嘘をついてもバレてしまう。堪忍して「わかった」と答えると彼は満足気に笑っていた。
しかしなんだかんだでギリギリにすきぴから連絡が入り、その日の彼との約束は流れる、、はずだった。
ご飯を終え、健全にすきぴと解散した私は、朝までの持て余した時間をどのように過ごそうかと悩んでいた。
同僚たちから連絡が入ったのはそんな時だった。
「ストレス発散にボーリングでもいかない?」
私たちは会社の仲のいいグループでよく遊びに行っていた。すきぴも彼もその一員だった。
合流するとすぐに細身で長身の彼の姿が目に入った。
「お疲れ様ー」と声をかけると彼は「遅いよー」と嬉しそうに笑った。
2時頃解散になり、二次会ということで、私と彼、同僚の女性と3人でカラオケへ。そちらも4時30分に解散することになった。
じゃあね、と2人に手を振り車に乗り込んだらすぐにバイクの彼から電話がかかってきた。
「どうする?くる?」
逃げられないか、と思った。
嫌なわけじゃない、でも9歳も年下でこの間失恋したばかりの童貞卒業したての男の子だ。私みたいな女が相手じゃ不憫すぎる。
そう思いながら
「そうだね、じゃあ2時間くらい行こうかな」
と言った。
家に着くとすぐ部屋を暖かくしてくれた彼は、コタツに入る私のすぐ横に座った。
最初はたわいもない話をしていた。
好きだった女の子の話、写メ、LINEなんかも見せられて笑い合いながら話していた。
このまま健全解散かな、と心の中の私がホッと胸をなでおろしたとき
『無防備すぎない?』
ハッとして彼を見るとすぐ隣にいた彼と目があった
『俺が手を出さないとでも思ってるの?』
初めて見る目だった。
咄嗟に
「私が相手はやめときな?」
と言葉がでた。
『なんで?』
「まだまだあんたは子供なんだから」
『もう大人だよ』
少し不機嫌になった顔が近づいてくる。
「はいはい、わかったわかった」
手で彼を押しながら距離を取る。
『そんなに余裕なのも今だけかもよ?』
その一言で私の何かがぷつっときれた。
「ほう、、。やれるもんならやってみな?」
9ヵ月ぶりだった。
彼は私を押し倒して無理矢理キスをする。
「まって」
『待たない』
舌が耳を這う。
思わず吐息が漏れる。
手が力強く胸を揉む。
「ま、待ってっ、、」
『待たない』
手が服の中へと入ってくる
ダメだ、止められなくなる。
止めなくちゃ。と理性を保とうとする私が必死で抵抗する。
「だめ」
『ほんとに?』
彼の手が内腿を這う
「あぁっ」
思わず身体が反ると彼は満足気に笑い
『感じてんじゃん』
とまた私にキスをした
『えっろ、、』
馬鹿だなと思う
9歳も年下のくせに
9歳も年上の私なんかに興奮して
馬鹿だなと思う
9歳も年上のくせに
9歳も年下の彼なんかに欲情して
9ヶ月ぶりのセックスは思った以上に気持ちのいいものだった。
理性なんてとっくにどこかへ行ってしまった。
「ねえ、キスして」
『仕方ないなあ』
彼はそっとキスをしてゆっくり私の中に入ってきた
吐息と共に漏れた「可愛い、、」が私をまた濡らした
決して「好きだよ」なんて言わなかった。
お互い他に思う人がいる。
きっとこれが最初で最後だろう。
だけど彼は私の名前を呼びながらイッた。
帰り際、玄関を出る前に私は言った
「ねえ、キスして」
彼はそっと唇にキスした
大丈夫、大丈夫。
私もあなたもひとりじゃない。
明日からはまたただの後輩だ。