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丸谷才一と、水木しげるの猫の話

妙子が出掛けて、私は日がな一日ソファにいる。
家事と言えば乾燥機で洗濯物を回しただけ。
手に取った本の表紙と目が合って、えっ!?と声が出る。

(中古で買えました。)
何のことはない、帯がずれていた。
なかなか洒落た帯なのだ。

もう一冊は
丸谷才一訳の“猫と悪魔”
小学生の頃に実家の本棚にあった。
子ども心に、禍々しい悪魔、飄々とした白猫、淡々と(○々だらけ)どこか明るい旧仮名遣いの語り口に、“別の世界”を感じた本だった。
々という字は、踊り字とも言うそうだ。
気持ちは随分停滞しているのにね。

別の世界に行きたい。
ここのところずっとそう思っている。
それは死にたいとかじゃなくて、
現実にいながらにしてふんわり軽やかに浮かび上がるような世界だ。 
お金とか、教育とか、家事とか、
逃げたいのじゃなくて。

水木しげるの猫達が、言う。

この世は通過するだけのものだから、
あまりきばる必要ないよ。

キノブックス 猫なんて! より

そうだ。
何を汲々としてゐるのだ。
と作家風に言いながら、片付けに取り掛かる。


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