見出し画像

お蔵入り小説 供養

エッセイばかり書いていると、小説がたまに書きたくなってくる。

そもそも、エッセイは私の自虐が軸になっている。多分それがウケているのが分かっているし、実際書くのも楽しいのだが、やはり自分でゼロの状態から世界観とキャラを設定する楽しさは、エッセイとは別方向に楽しい。

15年ほど前に沢山小説を書いていたが、当時のデータが全て消えてしまった上に、載せていた小説サイトも閉鎖されてしまい、もう手元には何も残っていない。また一から本編を書き起すのは無理。

でも、気に入っていた話もあったので、設定やあらすじだけでも残そうかと思った。

今回はそんな倉庫みたいな記事ですみません。「そんなん下書きで勝手にやれや」という意見もあるのは承知の上で公開してみるテスト。今回だけで終わります (多分)

15年前に書いた「愛しのマリ」という作品を載せる。私の作品は、基本まったりしていてハッピーエンドが原則なのだが、一度だけ真逆の救いようがない鬱バットエンドを書いてみた。非常に希少な作風なので、今でも覚えている。

あらすじを書いたつもりだが、あらすじにしては長過ぎるので、こういうのは何て言うのかは分からないが、ストーリーの流れを結末までしっかり載せている (ここまで詳細に書くなら本編を書けって話だが、確か5万文字くらいあったので……)

我ながら無茶な設定だと思う展開も多々あるけれど、興味がある方だけどうぞ。

注 : 15年前の作品なので、LINEがなくて、携帯のEメールとパソコンメールが主流の世界観です。


「愛しのマリ」

主人公A(名前忘れた)は親友Bの恋人であるマリに一目惚れをしてしまった。マリは誰もが振り返るくらいの絶世の美女であり、Aはそんな彼女が自分よりも容姿も才能も劣るBと付き合っているのが許せなかった。

Aは何がなんでもマリを奪おうと、マリと2人きりになる事を画作して、Bの誕生日プレゼントを一緒に買う事を餌にマリと2人で出掛ける事に成功する。

2人でプレゼントを買った後に、Aはホテルのレストランに食事に誘う。マリは断って帰ろうとしたが、もう既に予約してしまった事を聞いて、渋々Aと食事をする。Aは隙を見て睡眠薬をマリのドリンクの中に入れる。Aは薬剤師で睡眠薬は全て計算した上で調合した物だった。

マリはAの計算通り、食事の後に眠気が襲い、ロビーのソファで休憩するつもりがそのまま眠ってしまう。

Aは予め取ってあったホテルの部屋に眠ったマリを運び、ベッドに寝かせて襲いかかろうとしたところ、マリが計算よりも早く起きてしまう。マリは普段から睡眠薬を常用していたので、普通の人よりも効いている時間が短いのだとAに告げる。

マリは荷物を持って、部屋から逃げようとしたが、逆上したAはマリに飛びかかり、力ずくで押さえつけようとした。すかさずマリはカバンから護身用の小型スタンガンを出して、Aの首に突き付けた。Aは痺れて思わず仰け反る。その姿を軽蔑した眼差しで見下ろしながら、「この事は警察には通報しない。そんな事をしたら、貴方を大切な友達と思っているBが悲しむから」と言い、更には「私はそれくらいBを愛している。だから、何があっても、貴方なんかを好きにならない」と言い放ち、マリは部屋を出た。

計画が失敗した上に、Bへの強い想いを思い知らされて、自分のプライドを傷付けられたA。追い詰められたAは、親友Bを自分が調合した毒薬で殺そうと企んだ。マリとの事を何も知らないBは油断して、その企ては見事に成功した。それだけでは飽き足らず、Aは知り合いの闇医者に頼み、Bの死体を元に、自分の姿を完全にBに成り代わる手術を受ける。

殺したBはAが死んだものとして葬式が行われた。そして、Aは名実共にBとして生きる事になった。

その頃、マリは仕事の関係でパリに長期滞在していた。Aはこの機会があったから、マリが日本にいない間にBを殺したのだ。

AはBの部屋に入り、パソコンを開いてマリにメールを送る。マリにしばらくメールの返事が来なくて寂しかったと拗ねられて、仕事が忙しかったと誤魔化す。相変わらずマリのBに対する熱烈な愛に嫉妬したが、今は自分がBなのだと言い聞かせた。

それから1週間して、とうとうマリがパリから帰国する事になった。ようやくマリを自分のものに出来るとBに成り代わったAは歓喜して、マリを空港まで迎えに行った。

完全にBの身体に成り代わったAは、マリに会ってもバレないだろうと踏んでいた。その為に大金を払って声帯までBに近付けて、声もそっくりになったのだから。

マリが空港に着いて、メールで決めた待ち合わせ場所に来た。Aは嬉しくて思わず手を握ったが、マリは強ばった顔でAの耳の当たりを凝視していた。「メールでは怖くてずっと言えなかったけど、ただ壊れているんだと言い聞かせてた。ペアピアスはやっぱり外していたのね」とAに尋ねた。Aはペアピアスの事は知っていたが、マリの言葉の意味は分からなかった。

死体を運んだ時にBのしていたペアピアスは気が付いていたが、Aは2人で買った物を身に付けるのは嫌だったので手術をする時に処分した。再会した時に改めて新しいペアピアスを買う予定だった。それにしても、何故パリにいたマリがペアピアスを外した事を知っているのだろうと。

不思議に思ったがAは「何処かで無くしちゃったみたいだ。ペアだったのにごめん。また買おう、今度はもっと高いのを……」となるべく優しく誤魔化した。しかし、マリの顔色が変わった。「貴方は誰なの?」Aは内心飛び上がるほど驚いた。姿も声も完璧にBになっているはず。それなのに、マリはペアピアスを無くしたというだけで、自分に疑いの目を向けた。何がなんだか分からなくて黙っていると、マリはその場から走り去ってしまう。

Aはマリを見失い、何度もマリの携帯にメールを送るが返って来ない。マリのマンションにも行ったが帰っていない。仕方なくBの住んでいたマンションに戻った。

それから3日経ってもマリに連絡が取れず、Aは絶望した。マリのマンションに行っても鍵が掛かっていた。2人は合鍵を作っていなかったようで、入りたくても入れない。そして、夜にBのパソコンにマリからメールの着信があった。

そこには、短く「もう一度、貴方に会いたかった。でも、私もすぐにそっちにいくからね。私も貴方を誰よりも愛してる  マリ」と書かれていた。Aはそれがマリの遺書である事を察した。

Aはマリのマンションに行き、管理人に事情を話してマリの部屋の鍵を開けてもらった。中に入るとマリがテーブルに突っ伏していた。Aが駆け寄ると、既にマリは亡くなっており、テーブルには毒薬が置かれていた。

管理人は慌てて警察に電話する為に、1回部屋を出た。Aは開いたままのマリのノートパソコンを覗き見た。そして、Bと生前やり取りしていたメールを開けてみた。AはBとマリの愛の会話を見るのが嫌で既にBのパソコンからメールを全て消してしまっていた。

そこにはペアピアスの事が書かれていた。パリに長期滞在する事になって寂しがっていたマリの為に、機械いじりが得意なBは、生体反応が遠くからでも確認出来るピアスを作っていた。2人はそれでお互いの生存確認をしていた。

更には、昨日付でBからのメールがマリのパソコンに届いていた。そこには、「このメールはピアスの生体反応が無くなって1ヶ月経ったら自動送信される。このピアスはお前だと思って肌身離さずに大事に付けているから、このメールが届いたという事は、俺は何らかの理由で死んだって事だ。いつも気が利いた事も言えずにごめんな。マリ、こんな不器用な俺と今まで付き合ってくれてありがとう、愛してる」と書かれていた。

Aは全てを悟った。空港でマリは『メールでは怖くてずっと言えなかったけど、ただ壊れているんだと言い聞かせてた』と言っていた。それは生体反応が切れたが、それは愛するBが死んだのではなく、ピアスが壊れただけと言い聞かせていたんだと。Bが作った事も知らずに自分は軽々しく、『何処かで無くした』だの『もっと高いのを買おう』だの。2人にとってペアピアスは重い愛の証だったのだ。

絶望したAはマリの部屋を出て、マンションの屋上へ続く階段を駆け上がった。屋上の柵を越えた。「マリ、君がいなくなった世界に興味はない。君のいる天国には行けないから、俺は地獄に行く」Aはそのまま地獄に向かって飛び降りた。


この作品は誰にも救いがない究極のバッドエンドだったが、何故か読者の方には好評だった。

15年前とはいえ、今読むと、かなり無茶苦茶だなー。

こんな作品はもう書けないと思うので、ここで供養とさせてもらおう。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?