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実写化に思うこと

今回は珍しく時事的な話をしてみる。

とは言いつつ、今話題の「セクシー田中さん」は原作にもドラマにも触れていないので、あくまでも過去に私が体験した「漫画の実写化」に関する苦い思い出の事である。

漫画や小説を「実写化」するという行為は、諸刃の剣だと思う。

実写化は、原作を好きな人(元々のファン)と、更に新たなファンが増える可能性がある。それは、原作を知らない人でも好きな俳優が演じているという事で試しに観てハマる可能性が高いからだ。

しかし、原作ファンというのは、原作の作風が好きでファンになっているのであって、その原作を大幅に改変されるというのは、非常に許し難い事なのだ。「原作レイプ」という言葉もある通り、大好きな原作を汚されてる気持ちになる。そういうのがやりたかったら、原作付きではなく全くのオリジナルでやってくれと言いたくなる。

そもそも、原作付きというのは最初から原作ファンが付いているという事で、未発表のオリジナル作品よりもヒットを狙うにあたって格段に有利な条件で創られている。最初から大きなハンデをもらっているようなものだ。

だからこそ、原作をより大事にして欲しいのだ。

私が高校生の頃、仲の良い友達から面白い漫画があると、借りた漫画本があった。

当時、「花とゆめ」で連載されて、白泉社から出版された川原泉さんの「笑う大天使」という漫画だ。

今はデジタルでも読めるらしい。私は当時の単行本を大事に持っているからいいけれど……。

史上最強の名門お嬢様学校、聖ミカエル学園に通う高校生、司城史緒、斉木和音、更科柚子はそれぞれ猫をかぶり、良家の子女として学園生活を送っていた。しかしある事件をきっかけに、互いの本性がばれてしまう。親近感を覚えた3人はそれ以後、仲のよい友達となる。あるとき、戯れに作った薬品が原因で、3人はメンデレーエフの力と呼ぶ超人的な怪力の持ち主になってしまう。その頃、巷では名門女子高校生連続誘拐事件が発生していた。偶然にも犯人一味の一人が学園内にいることを知った3人は、自分たちも進んで誘拐され、超人的パワーを使い事件を解決する。

笑う大天使 wiki

川原泉さんが描く漫画は、王道の少女漫画からは少しズレている独特な世界観で描かれている。少女漫画にありがちなリリカルやドロドロとした恋愛要素は非常に薄く、知的でコミカルな単語が飛び交い男性でも読みやすいくらいだ。

「笑う大天使」で、すっかり川原さんにハマった私は、全単行本を買い揃えた。「笑う大天使」の他は、女子だけのプロ野球球団の話「メイプル戦記」や非常に優秀な女性艦長であるキラ・ナルセが、人間並みの知能を持つように改造手術を受けた動物クルー達と宇宙旅行で奮闘する「ブレーメンII」などが特にオススメである(個人的に)

「笑う大天使」は1987年に連載をして、3巻で完結であったが、何とそれから19年も経った2006年にいきなり実写映画化された。キャストや概要で多少不安になりながらも、川原泉さんが大好きな私は観に行かないという選択肢を持てなかった。

結論を言うと……。

本当に本当に……(以下自粛)

上野樹里が主役で、伊勢谷友介が兄役で、その他もなかなか豪華な布陣だったが……。とにかく内容が隅から隅まで酷過ぎて話にならない。

パッと思いつく酷かったところを記してみる。

  • 聖ミカエル学園は、原作では普通のカトリック系の超お嬢様学園だが、何故かまるでハリーポッターの魔法学園のように描かれていた(冒頭の列車など) 当時、ハリーポッターが流行っていたからだろうか。

  • 主人公の史緒が何故か関西弁。

  • 原作のまったりコメディな世界観が全く再現出来てなく、ただグダグダつまらないだけ。

  • クライマックスのワイヤーアクションが無駄に長すぎる(原作では2P程度) ただ、女子高生を使ったワイヤーアクションをやりたかっただけじゃないか。

その他、挙げればキリがないが、この作品は原作レイプ以外の何物でもない。それとタチが悪いのが、原作を知らない人にもつまらないと酷評されていて、誰も得しない作品となっている(もし、映画版が好きな方がいたらすみません)

私は映画を観た後、一緒に行った友人に散々不満をぶちまけた(あまりにも悔しくて半泣き状態だった)

しかし……映画公開後、川原先生が映画化記念で「笑う大天使」の特別編を描いたのだが、聖ミカエル学園の描写を完全に映画版に合わせていた。

これは、川原先生が完全に折れたって事なのかなと思った。そもそも、約20年前の作品を実写映画化して貰えたということで、立場的に「原作の雰囲気を大事にして」とすら言えない状態で泣き寝入りしたか、そもそも、昔の作品で大改変も別に気にならなくて割り切っていたのか。大抵のファンは大改変に失望して怒っているとは思うけれど、他でもない作者である川原先生がお許しになっているのなら、1ファンごときが怒るのもおかしな話で。でも、正直悔しいし、未だに苦い思い出になっている。

それから、私は大好きな作品ほど実写化は観ない事にしているくらいトラウマになった (暗殺教室の映画も怖くて観られなかった)

実写化をしようとする場合、本当に原作をリスペクトして大事にして欲しい。もし、都合で改変するなら世界観を壊さない程度にして欲しいとは思う。

「セクシー田中さん」の件は本当に痛ましく、もう実写化絡みの事で、このような悲劇が起きて欲しくないと願うばかりである。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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