お蔵入り小説 供養(3)
小説を1から書きたいが、なかなか形にする事が出来ない。
今ではこんな有様だが、15年~20年くらい前はたくさんの小説を投稿サイトに上げていた。
そして、ただのウッカリと怠慢でその時の小説データは全て消滅 (投稿サイトも閉鎖)
ここでは思い出したら、備忘録のようにあらすじを載せてしまおうという誰得でもなく自分の為の記事である (ここまでテンプレ)
今回も大昔に書いたファンタジー物で、かなりざっくりいきたいが書いている内に長くなるかも。町の名前とかは全て忘れているので前回のタイムトラベル物よりざっくりするとは思う。
因みにタイトルは長くて思い出せないので省略(デジャブ)
暗雲が立ち込めて陽の光が届かない世界。
この世界では1000年前から魔王と勇者が転生を繰り返して戦っている。魔王が世界に蘇るとそれに呼応するように必ず勇者が生まれる。勇者の身体には生まれながら勇者の紋章が刻まれており、世界のどこで生まれ落ちるかは全く分からない。勇者の紋章を持って生まれた赤子は、即座に識者に匿われて辺境の村で隠されるように育てられる。
魔王を完全に殲滅して根絶やしにする方法が解明されないので、世界の識者達はせめて魔王をその都度必ず倒せるように、勇者の身体に呪いともいえる術をかけて強化するしかなかった。識者達の執念に帯びたその術は代を重ねる程に強まっていった。勇者の紋章を持つ者だけがその苛烈な術に耐えられる。
人並み外れた腕力と魔力、そして物理攻撃を受けても痛みを感じずに決して死ぬ事はない不死の身体が術の効果だった。長年に渡る魔王の支配、何度も蘇る事に怯えた識者達の執念の術は勇者を化け物並みの強さを持ちつつ、魔王を倒さないと決して死ねない呪いの掛かった歪んだ身体へと変えた。
先代の魔王が倒れて10年後、再び勇者の紋章を持つ者が生まれた。それは同時に新たな魔王が蘇った証でもあった。
識者達が勇者が生まれた村に訪れると、生まれた赤子は女の子だった。歴代の勇者は全て男だったので、識者達は前例のない事態に慌てた。前例がない事で世界の民を不安にさせてはいけないと、勇者は男の子として育てられた。生みの親は彼女をエルシオーネと名付けたが、勇者エルシオンを名乗った。
何故か当代は先代よりも魔物達が大人しくて、旅人が下っ端の魔物に襲われる事はたまにあったが、町に入り無理やり荒らしたりする事はなかった。識者達はこれも魔王が油断させる為の嵐の前の静けさだと判断した。勇者エルシオンは識者達の強化の術に耐えて、18歳の誕生日に満を持して、通例通り男勇者として魔王討伐の旅に出る事になった。
勇者には魔王討伐を終えたら結婚するという識者から決められた許嫁がいる。それは世界で最も勢力が強い大国の王女で、魔王討伐の旅の前夜にエルシオーネに会いに来た。政略結婚のようなものだが、会ってみて「勇者エルシオン」がすっかり気にいった王女の様子に、エルシオーネは自分が女である事を隠すのが心苦しくなった。後でバレるならと鎧を脱いで王女に本当の事を打ち明ける。王女はショックを受けたが「性別を隠して生きていかなければならない勇者様が可哀相」とエルシオーネに同情した。
それを聞いたエルシオーネは、それまで勇者としての使命を本能的に分かっており、自分が男として生きるのは当然だと悟っていたが、ほんの僅かだが動揺していた。しかし、勇者として魔王討伐の旅をやめる理由には到底ならず予定通り王女に見送られて出発した。
世界各所で勇者は歓迎された。町の小さなトラブルを片付けては称賛されて、また次の町へと進んでいく。
そんな中、宿屋で眠った時にエルシオーネは不思議な夢を見る。夢の中でエルシオーネは魔王と対峙した。勇者エルシオンとして魔王に立ち向かったが、何故か魔王は抵抗しない。拍子抜けしたエルシオーネは魔王に問いただすと「私はお前と戦う気はない。勇者エルシオン、いやエルシオーネ」と言われてエルシオーネは激しく動揺した。しかし、夢から醒めた後にその夢の記憶はなくなっていた。
勇者エルシオンの旅は順調に続く。しかし、ある町では魔族と人間の間の子供が魔族の血を継いでいるというだけで町から追い出されて入れなくなったり、また違う町では人間が倒すと宝石に変わる無抵抗な魔物を無慈悲に乱獲したり、エルシオーネは守るべき人間の行いに疑問を持つようになる。
しかし、魔王及びその配下である魔族を倒して世界を救う宿命を背負っている勇者に撤退は決して許されない。エルシオーネは疑念を抱きながらも、世界を救う為、魔王城へと歩みを進めていく。
その中で、魔王城に近づくにつれて、魔王が現れる夢の頻度が上がっていった。夢の中でエルシオーネと魔王は徐々に惹かれ合い、絆で結ばれて愛を語り合うようになった。しかし、エルシオーネが起きた時にはその記憶がない。
魔王城目前となった時、エルシオーネは魔王を倒すのに必要な勇者の剣を取りに寄った街で、世界の識者の1人である術師に呼び止められた。術師は勇者の纏うオーラに異変を感じた。エルシオーネもたまに宿屋で寝ている時にうなされているのを主人から指摘されているのを思い出して、術師に妖術で精神世界を覗き見てもらう事にした。術師がエルシオーネの心を覗き見るとそこには魔王との記憶があり、これはただの夢ではなく魔王が直接エルシオーネの心に入り込んでいるのを察知した。術師は衝撃を受けたが、それを勇者である彼女に伝える事で戦意を喪失させるのはまずいと思い、彼女が夢を忘れている事を良い事に、魔王と重ねていた心の逢瀬の事は黙っている事にした。
エルシオーネはとうとう1人で魔王城に乗り込む。不思議を魔王城の中は静かだった。何も妨害が入らずに魔王の待つ玉座へと進む。そこに堂々と立ちはだかる魔王の姿を見た瞬間、エルシオーネは何かの記憶を思い出しかけたがそれが何だかは分からなかった。動揺するエルシオーネに対して、魔王は「どうした、勇者エルシオン。私を倒しに来たのだろう?」と挑発をした。
エルシオーネは我に返り、魔王と一騎打ちをしたが魔王は隙だらけで明らかに手加減をしているのが分かった。剣を合わせて魔王にダメージを与える度にエルシオーネは見た夢が幻ではなく実際に愛を語った彼だと徐々に悟っていった。とうとうエルシオーネの剣は魔王を貫きあとはトドメを刺すのみになった。エルシオーネは剣を振り上げたが止まった。魔王は「どうした、私の負けだ。さっさとトドメを刺すが良い」と挑発した。しかし、エルシオーネはトドメを刺せなかった。「魔王……貴方なんでしょう?」とエルシオーネは剣を置き弱っている魔王に近づいた。
魔王は「記憶を封じたつもりだったが、私自身が弱ったから封印が解けてしまったんだな」と苦笑いを浮かべた。魔王はエルシオーネの様子を遠くから妖術を使って見ていた事、最初は敵情視察のはずが彼女に惹かれてしまって、精神世界に入り込む術を習得して夢を通じて立場を弁えず1人の男としてこっそりエルシオーネに会いに行ってしまった事、そして戦意が喪失した事を語った。
先代の魔王は勇者への復讐心で蘇っているので、自分がエルシオーネに討たれれれば1000年に渡る暗雲の時代が終わって、世界に永遠の平和が訪れると魔王は告げた。エルシオーネは弱っていく魔王を見て思案した後、置いていた剣を再び取り魔王にトドメを刺した。「見事だ、それでこそ我が宿敵、勇者エルシオン……せめて、余生は幸せに暮らせよ」と魔王が満足げに呟くと、エルシオーネは静かに首を振り、今度は剣を自分の胸に突き刺した。「私は魔王を倒さないと死ねない身体。生まれた時から決められた人生、せめて終わりくらいは自由に愛した人と共に」と言い残し、魔王に口づけをして2人は同時に果てた。
その途端、暗雲が立ち込めていた空に光が差した。1000年に渡る勇者と魔王の輪廻は終わりを告げた。勇者エルシオンがもたらした勝利に沸いて平和が戻った事に世界中の民が歓喜したが、その後、勇者の姿を見るものは誰一人なかった……。
(了)
大分忘れているし、端折りまくっている。そもそも、大事な配役である許嫁の王女や魔王の名前を忘れている(かなりそれっぽいカッコいい名前を付けたのだが)
バッドエンドなラストだが、自分ではそれなりに気に入って書いていたのを思い出した。かなり無茶苦茶な設定も散見するが、ファンタジーなのでフワッとサラッと流して頂ければ(予防線)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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