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9話 ため息をついても幸せは逃げない

「ため息をつくと幸せが逃げる」
そんな言葉を言われたことがある。
ため息の何が悪いのだろうか?
むしろ、良い事しか思いつかない。
私は本番前に、ため息をつく。
何度もついているから、
「そんなにこのコンサート、演奏したくないの?」とワガママなソリストがキレ気味に言ってきたことがある。
彼女から見ると、私のため息は気分が悪い物だったのだろう。
私は控室の隅で、たくさん息を吐くことによって、緊張を抑えていただけ。
「深呼吸をしなさい」と言われても、
緊張をしていたら息を吸うことが難しい。
しかし、「息を吐いて」と言われると、意外と簡単に出来てしまう。
その上、しっかり吐き出せば、息も大きく吸い込める。
フルートを吹くときも、いつも先生に、
「息を十分に吐きださないから、息を吸うことが出来ないんだよ」と言われていた。
実は、ため息をつけば、肩の力も抜ける。
全てにおいて良い事ばかりだ。
先日、3度目のガン告知をうけた。診察室から出た時、しっかりため息をついた。そして、息を大きく吸い込んだ。
手術は出来ない。
まだ生きていたい。
珍しい症例だから、もしかすると、他の人よりも長生きできるかも?
そう思いながら、ため息をもう一度ついたら、心も軽くなった。
「ため息で幸せは逃げない。
むしろ、幸せが舞い込んでくる」


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