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刻一刻物語

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時間と場所と記憶と夢と。 とりとめがないけれど、 いつか思い出すための物語格納庫。
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#年末の過ごし方

よく晴れた冬の日の話

よく晴れた冬の日の話

「坊や」
 おじいさんは傍らの男の子に話しかける。
 男の子はさっきから積み木を積んでは崩している。
 よく陽のあたる縁側の廊下。南向きの、この場所が、冬のこの時期午前10時すぎには、いちばん暖かい。
「坊や」
 家の者たちは皆、朝から年末の大掃除で、畳を外に干したり窓ガラスを拭き上げたりと忙しい。
 おじいさんは子どもと縁側で日向ぼっこ中である。
「庭の向こうに藤棚があるんやが」
 子どもは積み

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