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霊柩車を見たら親指を隠すのはなぜ?
先日街中を歩いているとき、走行中の霊柩車が目に入ってきた。
「あっ!」と気が付いた時には親指を手のひらに包み込むようにして隠していた。我ながら迷信深いなと思いながらも同じことをやっている人がいないか周りを見てみたが、どうやら自分だけのようだった。
霊柩車を見たらどうして親指を隠す必要があるのか?
自分が子どもの頃、このことを両親に聞いたら「親の死に目に会えなくなるからだよ」と言われた。
今思い返すと自分の子どもになかなかスゴイこと言うなと思うが、当時は意味がよくわからなかったものの、親指を隠さないといけないんだということは思ったものだ。
いつ頃からこの俗信がいわれるようになったのか。霊柩車が日本で使用され始めたのは大正時代であるから、この言い回し自体はそれ以前にはなかったことがわかる。
ただし、霊柩車とは遺体の入った棺を運ぶ車である。そう考えると、親指を隠すことは死霊やケガレから避けることを目的にして行う呪(まじな)いであるといえそうだ。
実際、災厄を防ぐ目的で親指を隠す呪いは他にもあるそうだ。例えば「夜道を歩くときは、親指を中にして握っていると狐に化かされない」「疫病を避けるには両手の親指を中にして握るとよい」などがある。
他にも江戸時代に書かれた「松屋筆記」という本でも左右の爪の間から魂魄が出入りするから畏怖のときは握り隠すという記事が残っているようだ。
これらのことから、親指の先が霊的なものが干渉できる出入口であるという考え方が昔からあることがわかる。
「親の死に目に会えない」というのはあくまで親指から連想してできたもので、元は自らに悪い影響が及ぶのを防ぐためのものだというのは興味深い。
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