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眺望

上ばかり見てたら
しだいに首がつかれてきて
それでも上を見続けたら
しだいに羽が生えてきた
どうやら上に登れるみたい

あら、なんだか人が小さいわ。
あら、建物も点でしかない。
あら、なんて地球も世界も小さいの。

そして
そのときになつかしむのきっと。

嗚呼、小さな世界には
鼓膜をふるわせ心をふるわす音楽があったなぁと

舌を通り心を熱くするごはんがあったなぁと

まどろみの昼下がりに部屋に差し込む太陽の光は体と心を包み込んだなぁと

活字に胸が躍り、酒で体が踊った日もあったね

少し近いところでわかりあい
正反対に刺激する大切な存在たちを思い出した
と同時に
剥き出しの心に爪で引っ掻きあって
心の奥深くの暗い闇を走った日のことも

でもそんな時は大抵誰かがチョコレィトをくれたりなんかしちゃったりして、鼻から目から、熱い液体が流れて止まらなかったね

もう今は、甘酸っぱくどろどろとしたモノに胸がぎゅっとなることはない。
もう今は、ぎらぎらと燃えたぎるような熱を帯びることもない。
もう今は、誰かのために犠牲になることもない。
もう今は、失望することもなければ、始まりに不安と湧き立つ高なりを感じることもない。
もう今は....

そんな時にふとあの子に会いたくなって、
でも会うことは叶わないことに気づいて

わぁああん 羽なんかとっちまってくれよぉおお

って叫ぶのね。

でも、その声も声にはならないんだ。自分の耳も心も震わせることはできないんだ、きっとね。

上にいけて、よかったね。

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