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夫のバジル🌿

公開記事
猛烈社員だった夫が転職し、
ここ何年かで、夫か料理に目覚め、ついでに洗濯、ゴミ出しをするようになりました。
さらに、猫の額ほどの庭で植物を育て始めるように‥。

読者の皆さまは、「猛烈社員」という言葉をご存知の世代でしょうか。蛇足ながら説明すると、戦後日本の高度経済成長を支えた朝から晩まで猛烈に働く会社員のことを指します。その後、バブル経済の頃には栄養ドリンクのCMで「24時間、戦えますか?」と、土日祝日なく朝から晩まで働く文字通り24時間仕事をする、そういう社員を指した言葉で、「企業戦士」という言葉もあります。

夫はまさにそんな人で、下の子が3歳の時に私が現職についてからも働い方を変えることなく、私はワンオペでフルタイムで仕事をしながら育児・家事をしてきました。
家の中は散らかり放題、初めての子育てに翻弄される妻を責めることなく、労いの言葉をかけてくれるけれど、それでも積極的に「手伝う」こともなく、大変な子育て時代はひと段落した頃。

夫は、何の前触れもなく、仕事を辞めました。しかも次の仕事まで決めて。
家のローンはすでに完済、上の子は独立、下の子の学費へ払い終えたタイミングでしたし、私も仕事を続けていたので、「あら、そう?」なんて感じでした。

それから、前職でのスキルをいかした仕事に週3日ほど通い、できる時には食材の買い物をして、本を見ながら料理もするようになりました。
夫は新しい職場で、今までとは違う人々と出会う中、いろいろなことを考えたのでしょう、翌年には仕事をやめ、社会福祉士の国家資格を取るべく専門学校に通い始めました。
夫が60歳の時です。

それでも、これまでの猛烈社員・企業戦士時代に比べたら圧倒的に時間の融通が効くようになり、受験勉強の合間にも料理・洗濯の他に、シソやミント、バジルなどのタネを撒いて育てるようになりました。
夫の料理の腕はどんどん上がっていき、手の込んだ料理も食卓に並ぶように。

でも、植物を育てるのは中々上手く行かないようです。環境さえ整えば勝手に育つ(であろう)ハーブ類でも手を焼き、枯れたり虫に喰われたりたりして上手くは行かない中で、バジルだけは、写真のように、繁茂し使い道に困るくらい。

今朝、生き残ったバジルたちに水をやりながら、そういえば夫が深夜まで働いていた頃、突発性難聴や胃潰瘍など、今思えばストレスから来るような病気もしていたなぁ、とか、子供達の学校行事には全く参加できていなかったなぁと、あれこれ思い浮んできて。
私も、仕事とワンオペ育児で夫を思いやる余裕もなかった…。
夫婦2人の時代から、子育て時代を経てやがてまた夫婦だけになり、いずれは1人に。
「家族」というグループも変容していく、その当たり前のことを考え、夫のバジルの水やりをしてました。

格好悪いですが、後悔はたくさんあります。
でも、人生に「たら」「れば」はないから、これまで学んできたこと、考えてきたことを生かしていくしかないよな、と思います。


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