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雇用コスト指数

 雇用コスト指数(ECI: Employment Cost Index)は、企業が実際に負担する雇用コストを示した指数で、賃金・給与と福利厚生費など賃金以外で雇用にかかわる費用を含んでいます。アメリカの労働省労働統計局(BLS)が四半期ベースで集計し、計測期間の翌月末前後に発表します。
 雇用コスト指数の上昇は消費者物価指数や個人所得の増加につながる可能性が高く、国の経済におけるインフレの尺度になります。連邦準備制度理事会(FRB)は賃金動向を判断する手がかりとして、この指数を重視しています。
 2023年第4四半期の雇用コスト指数は前期比0.9%上昇し、伸びは前四半期の1.1%上昇から鈍化し、2021年第2四半期以来の小幅な伸びとなりました。市場予想の1.0%上昇も下回りました。予想より高い数値は米ドルにとって買い材料であるとされますが、予想より低い数値は米ドルにとって売り材料であると解釈されます。
 2024年第1四半期の雇用コスト指数は前期比1.2%上昇し、伸びは前四半期の0.9%上昇から再加速し、1年ぶりの高水準となりました。市場予想は1.0%上昇でした。賃金・給与は前期比1.1%の上昇でした。雇用コスト指数は低下傾向にありますが、コロナ禍前に比べると依然、高止まりです。
 日本の雇用コスト指数は、労働政策研究・研修機構が算出しています。賃金指数は、賃金水準を指数化したもので、労働力の価格として賃金水準、国民経済全体としての労働者1人あたり平均賃金水準、コストとしての人件費総額などの変化を示すことができます。
 厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」によると、2023年12月の実質賃金は前年比1.9%減少し、21か月連続のマイナスとなりました。2023年通年でも前年比2.5%減と2年連続で減少し、マイナス幅が拡大しています。2024年1月の実質賃金は前年同月比0.6%減ったとされており、マイナスは22か月連続です。
 米国の賃金は「平均時給」で経済指標として使用されています。日本は実質賃金で示しています。本来なら、日本も「平均時給」で示すべきかと思いますが、なぜか、この点で相違がみられます。賃金上昇がメディアで喧伝されていますが、大企業が中心の春闘ベースであったり、連合の発表数字であったりします。9割を占める中小零細企業に勤務する正社員やパート労働者、アルバイトの実態をみれば、最低賃金による時給を指標としてもいいくらいです。
 6月に定額給付や賃上げが反映されるので、これが潮目となるとされていますが、疑問です。歯止めのかからない円安、原油高はよりインフレに拍車がかかると思われます。果たして実質賃金が持続的にプラスに転じるのか、これが確認されない限り、日本は景気回復したとはいえないです。ましてや、企業の稼ぐ力が欧米企業と比べて大きく見劣る現状では、収益力を改善する抜本策が早急に求められています。

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